AR対戦アプリ開発のGraffity(グラフィティ)は1月20日、プレシリーズAラウンドで総額約1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。引受先はディープコア、East Venturesと複数の個人投資家で、J-Kiss方式での調達となる。
高校体育で採用されたスマホARゲーム「HoloBreak」
Graffityは、2017年8月の創業。2017年11月に3000万円の資金調達を発表している同社は、これまでに空間に落書きできるAR SNSアプリ「Graffity」、AR対戦ゲーム「ペチャバト」といった、スマートフォンで遊べるtoC向けのARアプリを提供してきた。
現在同社は、ARシューティングバトル「HoloBreak(ホロブレイク)」を手がけている。HoloBreakは仮説実証フェーズにあり、一部教育機関やアミューズメント施設に提供しながら、検証・開発を進めている最中だ。
HoloBreakは、スマホで画面の向こう(画面の先の見知らぬ誰か、という比喩的な意味ではなく、リアルに画面の目の前)にいる相手と撃ち合う対戦ゲームだ。どういうゲームか、というのは動画を見てもらえると、よりわかりやすいかもしれない。
同社から以前リリースされたペチャバトも、対戦相手のスマホを的として、雪合戦のように「弾」をタップして投げ合い、当たると得点できるゲームだった。ペチャバトが4人対戦でHPを削り合う、勝ち残りバトルロワイヤル形式だったのに対して、HoloBreakはチーム戦で得点を重ねていくゲームになった。
また、HoloBreakではアメリカンフットボールのように攻守の役割があり、使う武器が選択できるなど、戦略を立てて挑むことになるため、思考力・判断力とチームワークが要求され、よりスポーツ性の高いゲームに仕上がっている。
その先端技術とスポーツ性が評価され、HoloBreakは、2019年11月には筑波大学附属高校の体育選択科目に採択された。同校の体育選択科目では生徒が授業内容を提案する方針になっており、ペチャバトのユーザーだった生徒の発案で、HoloBreakが取り上げられることになったそうだ。
Graffity代表取締役の森本俊亨氏は「バットやボールといった道具不要で、スマホさえあれば体を動かして遊べるARゲームを作っていく」と話している。ARスポーツでよく名前が挙がる対戦ゲームの「HADO」の場合は、フィールドが設置された施設で遊ぶことが前提となっている。スマホだけでも遊べるHoloBreakは「その点が、ちょっと違っている」と森本氏は説明する。
「Graffityが目指すのは、ARを軸に人と人とのつながりを変えていくこと。ARプロダクトのゲーム性を生かして、新しいコミュニケーションを作りたい」という森本氏。競合として見ているのは、同じスマートフォンで遊べて、画面と可処分時間を取り合う可能性があるソーシャルゲームだ。
「スマホARはARバトルという形で最も広まるだろう」
HoloBreakはこれまでに、教育機関2カ所、エンタメ施設2カ所に提供されている。森本氏によれば「いずれも満足度は高い」ということだ。高評価を踏まえ、今回の資金調達により、HoloBreakをスマホアプリとして広く公開できるように開発を進めていくという。2020年秋には日本のアプリストアでリリース予定で、その後、海外にも展開を図る。
森本氏は「スマホARは、ARバトルという形で最も広まるだろう」と話す。「『AR×バトル』は世界でもまだ確立されていない市場。多くのARアプリは『ARならではの体験』ではなく、使われ続けるものではないが、ARバトルは『ARならではの体験』をうまく生かし、日常に浸透するプロダクトになる可能性が高いため、ARアプリの本命になると考えている」として、「そのARバトルの領域で、No.1を取りたい」と語る。
そのためにも、まずはHoloBreakのようなARシューティングバトルゲームを国内外にリリースし、教育機関やテーマパークなどにも導入していきたいという森本氏。またHADOのようにeスポーツ化も考えているとのことで、いずれは大会を開けるようにしたいとのことだ。「HoloBreakで実績を作れたら、キャラクターなどのIP保有者と組んで、別タイトル展開も狙っていきたい」とも話している。
「ARを軸に人と人とのつながりを作りたい、というのがミッションに『ARで、リアルを遊べ。』を掲げる我々の目指すところ。これからも、人と人とのコミュニケーションを大切にしていく」(森本氏)
マネタイズについては、基本的にアプリ内課金を中心としていくというGraffity。BtoCで創業しながらも、技術を核にBtoB事業へピボットしていくスタートアップも多い中、森本氏は「当面、BtoCでがんばっていく」と話していた。