InstaVRがグリーVなどから総額約2億円を調達——ブラウザで動くVRアプリ作成ツール

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ウェブブラウザで動くVRアプリ作成ツールを提供するスタートアップのInstaVRは8月24日、グリーベンチャーズをリードインベスターとして、同社およびColopl VR Fundを割当先とした総額約2億円の第三者割当増資を実施したと明らかにした。

InstaVRは2015年11月に設立。ウェブブラウザ上で手軽にVRコンテンツを作成・配信・分析可能なツール「InstaVR」を展開している。作成したVRコンテンツは、ウェブに埋め込んだり、iOS、Android、Gear VRなど幅広い端末で動作するネイティブアプリとして出力することができる。

使い方は、リコーの「THETA」シリーズなどをはじめとする全天球カメラで撮影した360度動画を、ブラウザ上のInsitaVRにドラッグアンドドロップ等で読み込ませる。すると360度動画内にリンクや動画を埋め込むなどインタラクティブな要素を加えることができる。またVRゴーグル向けに視差のあるステレオVRにも対応する。「チュートリアルは1分、作成は5分で済む」(代表取締役社長の芳賀氏)という手軽さや、編集やアプリの出力までもがブラウザ上で完結する敷居の低さを売りにする。

さらに、利用者の注意点をヒートマップで分析し、VR体験を改善する機能も搭載。「VRって儲かるの?」という視点がマーケティング側にあるといい、そのニーズにも対応したという。

InstaVRは、米国を代表する博物館のスミソニアン博物館や、世界最大級の建設グループ AECOMをはじめ、2016年8月24日までに世界100か国以上、約1800社に導入実績がある。具体的な事例は不動産の内見や観光案内、自動車の試乗など。今回の総額約2億円の調達でも、海外での導入実績が評価されたとInstaVRの代表取締役社長 芳賀洋行氏は語る。

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読み込んだ360°動画に「リンク」や「動画」、オブジェクトなどを埋め込んだVRコンテンツを手軽に作成できる

ヒートマップ表示2_ユーザーの注視点を分析

VR空間上のユーザーの注意点をヒートマップで表示した様子

個人で開発したVRアプリは150万ダウンロードに

芳賀氏は「実はVRは古いんですよ。コンピュータの歴史と同じくらい」と振り返る。同氏がVRに関わったのは19〜20歳の頃。当時は大学でコンピューターサイエンスを専攻しており、1999年にVRで3Dホラーハウスを作成するプロジェクトに参加していた。

InstaVR 代表取締役社長の芳賀洋行氏

InstaVR 代表取締役社長の芳賀洋行氏

その後、2003年にAutoDeskに入社。そこでは3Dグラフィックスソフトウェア Mayaの開発や、マーケティングソリューションのアジア担当などに携わった。2011年にはグリーに入社し、ソーシャルネイティブアプリのソフトウェアエンジニアを経て、プロダクトマネージャー、最終的にはCTO室でCTOの補佐を担当した。なおグリー在籍中には経済学修士(MBA)も取得している。

2013年末にグリーを退職しフリーに転向。個人で開発したVR動画プレーヤー「AAA VR」は約150万ダウンロードを達成した。2014年頃から「VRアプリを作りたいんだけど、作り方がわからないから作って欲しい」という依頼が増えてきたこともあり、簡単にVRコンテンツを作成できるソリューションのニーズを感じ、InstaVRの開発に取りかかった。

2015年夏にgumi代表取締役の国光宏尚氏、ジャーナリストの新清士氏らが立ち上げたTokyo VR StartupsのVR特化インキュベーションプログラムに申し込み、通過。そこで500万円を調達し、会社を登記したのが同年12月。その直後にInstaVRのベータ版サービスの提供を開始。海外を中心に顧客を伸ばし、今回の資金調達に至った。

月額課金でマネタイズ

マネタイズに関しては、月額課金制を採用。有償版は月300ドル、年間契約では月200ドルとなる。また、機能が若干制限されるものの無償版も提供している。

InstaVRの従業員数は世界中で約10人ほど。グローバルで展開しており、内訳は日本に3〜4人、インドに2〜3人、北米に5人。などまたブラジルやヨーロッパにもカスタマーサポートを設置している。ただ芳賀氏は「日本と違い、海外では人材の流動性が大きい」とも語り、従業員数はあまり意識していないという。

InstaVRでは、今回調達した2億円を元手に、市場展開や製品開発を加速させていく方針。現在の導入企業は1800社だが、これを年内に1万社にまで増やしていきたいとも語った。

「起業家と伴走できる関係でありたい」グリーベンチャーズが70億円規模の新ファンド

左からグリーベンチャーズ代表取締役社長の天野雄介氏、パートナーの堤達生氏

左からグリーベンチャーズ代表取締役社長の天野雄介氏、パートナーの堤達生氏

グリーベンチャーズは5月12日、新ファンド「AT-II投資事業有限責任組合」(AT-II)を組成し、1次募集(ファーストクローズ)を完了したことを明らかにした。主な出資者は、グリー、みずほフィナンシャルグループ各社(みずほ銀行、みずほ証券プリンシパルインベストメント、みずほキャピタル)など。ファーストクローズ時のコミットメントは約40億円。12月末まで出資者を募集し、総額約70億円規模のファンド組成を目指す。

グリーベンチャーズは2011年12月の設立。名称から分かるように、グリー傘下の組織ではあるが、いわゆる本体との事業シナジーを狙ったCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは異なり、非常に独立性の高い投資活動を行っているのが特徴だ(むしろグリー本体の事業と関わるゲーム領域の投資は行わないというのが基本方針だ)。グリーベンチャーズ代表取締役社長の天野雄介氏、パートナーの堤達生氏ともに個人としてもGP(ジェネラルパートナー、無限責任を負う組合員)としてファンドに出資するというのも、いわゆるサラリーマン的なCVCとは異なる点だろう。

これまでの投資実績はBtoB領域を中心にした国内および東南アジアの約30社。バラマキでなく、ハンズオンでの投資を行うという。4月に朝日新聞社が買収したサムライトも同社の投資先だ。国内に加えてすでに東南アジアでのイグジット実績もある(東南アジアのスタートアップの場合IPOではなく現地大企業や現地に進出したい日本企業による買収が中心だそう)。「具体的数字は公開できないが、(前回のファンドは)2年で投資が完了して、すでにファンドサイズの半分近くの金額を回収している。結構なペースだ。(それを評価して)今回のファンドでも前回のファンドの投資家が積極的に投資してくれている」(天野氏)。

新ファンドでも引き続きこれまで投資してきた日本国内・東南アジア地域への投資を行うが、新たにインドでの投資も進める。新ファンド組成にあたり、インド出身者も含めたキャピタリストを複数人を採用した。投資の対象となるのはコンシューマーインターネット、モバイルサービス、マーケティングテクノロジーなどインターネット領域全般。引き続きBtoB領域を重視する。これら領域のシード・アーリーステージに対して原則リード投資家として1社あたり約1億〜3億円の投資を実施する予定。最近TechCrunchでも紹介したSORABITOookamiはこの新ファンドのそれぞれ1号、2号案件となる。

ちなみにGPでもある天野氏、堤氏に投資の際、最も重要視するポイントを聞いたところ、2人からそれぞれ「マーケット」だという回答が返ってきた。

「僕らはマーケットに対するこだわりがある。大きくて、かつすごく伸びるマーケットを狙っていく。建機も、スポーツも飲食メディア(それぞれ投資先のSORABITO、ookami、Rettyを指している)もまだまだビジネス化されていない領域。そこにちゃんと真剣に取り組むべきかどうか。経営者がシリアルアントレプレナーである必要はないし、シードの極めて早い段階で投資するケースが多いので、起業家と投資家としてではなく、(より近くで)起業家と伴走できる関係でありたいと思っている。あとは24時間とは言わずとも楽しく仕事できるかは重要だ」(堤氏)

「最終的には狙っているマーケットが重要。その市場に可能性があるのか、規模は大きいのか。もちろんマーケットへのアプローチは、挑戦していく中で変わっていく。だがそこでアベレージのパフォーマンスを出せるかどうか。マーケットが成長していればアベレージのパフォーマンスでもいいし、さらに伸びる可能性がある。だがマーケットを間違うとそうはならない」(天野氏)

東南アジアのプリペイド式ケータイに注目した日本発スタートアップYOYO、グリーVやCAVから1.3億円を調達

携帯電話料金の支払いというと、多くの読者が口座引き落としをはじめとした「ポストペイド(料金後払い)」を思い浮かべるのではないだろうか。でも実は、携帯電話料金のポストペイドを採用している国は、世界全体の20%にも満たないのだという。残りの80%、つまり世界の大半はプリペイド(料金先払い)なのだ。

プリペイド式の携帯電話が最も流通している地域の1つが東南アジアだ。フィリピンでは96%、インドネシアでは98%のモバイルユーザーの端末がプリペイド式なのだという。タイでも全体の9割近い端末がプリペイド式だ。

このプリペイド式携帯電話が流通するマーケットに着目したスタートアップが、ディー・エヌ・エーを退職した2人の日本人起業家がシンガポールに設立したYOYO Holdingsだ。同社は5月21日、グリーベンチャーズ、サイバーエージェント・ベンチャーズ及びインキュベイトファンドを割当先とした総額約1.3億円の第三者割当増資を実施した。

YOYO Holdingsは2012年10月の設立。代表を務める深田洋輔氏とCTOの尾崎良樹氏は、いずれもディー・エヌ・エーの出身。

同社が提供するのは、プリペイド式携帯電話の通信料金を”報酬”としたリワードプラットフォーム「Candy」だ。Android、iOS向けのアプリをダウンロードして会員登録し、その後アンケートに回答したり、指定されたアプリをダウンロードすることでポイントが蓄積されていく。貯まったポイントは、プリペイドのポイントとして携帯電話にチャージすることができる。

3月にフィリピンでベータ版をローンチ。7月に正式版に開始した。現在、インドネシアとタイにサービスを拡大しており、ユーザーは10代後半から20代を中心に25万人にのぼる。

同社では今回の資金調達で、人材拡充やインフラ増強、マーケティング強化を図る。開発はフィリピン・マニラで行うとのことだが、人材に関しては、日本やフィリピンなど幅広く採用するとしている。また、スマートフォンアプリを使った新事業も展開する予定だ。