HACARUSと東京大学がアルツハイマー病やパーキンソン病の治療法開発を目指すAI創薬研究を開始

HACARUS(ハカルス)と東京大学大学院薬学系研究科は6月16日、アルツハイマー病やパーキンソン病の治療法開発を目指す、AI創薬の共同研究を開始すると発表した。今回の共同研究では、両疾患の病因となるタンパク質の凝集・散開するメカニズムの解明をHACARUSのAIを活用した画像解析技術を用いて試み、治療法開発を目指す。

アルツハイマー病、パーキンソン病ともに、脳内でのタンパク質凝集が病因となることがわかっている。人間にはタンパク質を分解する能力(オートファジー)が備わっているものの、アルツハイマー病・パーキンソン病は、この能力の機能不全であることも解明されてきているという。

研究課題としては、アルツハイマー病では、病因となるタンパク質の生産を抑制する阻害剤がいくつか見つかっているものの、毒性の問題があり治療への活用に至っていないこと、またパーキンソン病では対症療法が「L-ドパ」という薬を使ったドパミン補充が中心であることを挙げられている。ともに根本的な治療法が発見されておらず、新たな予防・診断・治療法の開発が必要としている。

東京大学大学院薬学系研究科は、「医薬品」という難度が高く、かつ高い完成度が要求される「生命の物質科学」と、国民生活に直結した「生命の社会科学」を探求し、2つの科学の最終目標である「人間の健康」を最重要課題としていることが最大の特徴の部局。同機能病態学教室の富田泰輔教授は、アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患の病態生化学に関する研究を行っている。

HACARUSは、スパースモデリング技術をAIに応用したデジタルソリューションを提供しており、少ないデータ量で高精度なAIを活用できることから産業分野だけでなく、希少疾患への応用など医療分野でも数多くの課題解決に貢献している。

富田教授によると、様々な神経変性疾患において、細胞内外の異常タンパク質の蓄積や細胞内輸送の異常などが発症プロセスにおいて重要であることが明らかとなっており、これらを定量的に解析し、様々な薬剤の影響を見積もる必要が出てきているという。ただ従来は、細胞や組織を染色後画像データの解析を人為的に行っていたため、HACARUSと共同でそのプロセスを自動化し、機械学習を用いてノンバイアスに解析する手法を開発することで詳細に解析できるのではないかとしている。

またHACARUSは、スパースモデリング技術を用いた画像診断およびR&Dプロセスの自動化に取り組んできており、その2つの強みを掛け合わせて、CNS(中枢神経系)分野において富田教授と共同研究に取り組むとしている。

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カテゴリー:ヘルステック
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医療・産業分野でAIソリューション開発を手がけるHACARUSが累計13億円のシリーズB調達

医療・産業分野でAIソリューション開発を手がけるHACARUSが累計13億円のシリーズB調達

医療分野・産業分野でのAIソリューション開発を手がけるHACARUS(ハカルス)は11月16日、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は、既存株主の大原薬品工業、みやこキャピタル、中信ベンチャーキャピタル、またMTG Ventures、りそなキャピタル6号投資事業組合、PARKINSON Laboratories。京都銀行、日本政策金融公庫からの融資も実施している。今回の資金調達は、2020年4月に実施したシリーズBと同じラウンドで、これにより累積資金調達額は約13億円となった。

調達した資金は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)および創薬支援のR&D強化、大手企業との共同事業を推進するビジネス開発・コンサルタント人材の採用、日本国内向けに開発されたAIソリューションの欧州、北米、東南アジア地域での展開に用いる。

情報科学を用いた材料開発の手法MIでは、近年、AIの適用が進んでいるものの、AIや提示した新材料の有効性確認には実験が必要であり、ひとつの実験には数ヵ月かかる。このため、いかに少ない実験で最適な新材料に辿り着けるかが課題となっているという。

HACARUSが注力するスパースモデリングは、この課題に対する解決策を提供。ヒトが持つ経験・勘とスパースモデリングを組み合わせることで、短時間で最適な新材料に辿り着くための手法の研究開発に取り組んでいる。医療・産業分野でAIソリューション開発を手がけるHACARUSが累計13億円のシリーズB調達

MIおよび創薬支援のR&D強化

創薬分野においても、MIと同様AIが提示した化合物の有効性・毒性の確認には実験が必要であり、ヒトでの治験を含めると数年単位の時間がかかり、いかに少ない実験で最適な化合物に辿り着けるかが課題となっている。

さらに近年では、ゲノム創薬と呼ばれる、ゲノム情報と患者の反応性情報から、副作用の少ない薬の開発する手法が注目を集めている。また既存の化合物から、様々なデータベースを網羅的に探索することでターゲット疾患の候補を導き出す手法も注目されている。HACARUSは、これら分野においても、スパースモデリングを用いた独自の創薬支援の研究開発に取り組んでいるとした。

AI導入のためのコンサルティングを強化

HACARUSは、100社超の企業・団体に対してAI技術の開発・実用化を行ってきた知見を活かし、企業へのAI導入を支援するコンサルティング業務の強化も行う。AI導入前のビジネスインパクト解析、要件定義、データ解析、アノテーション、モデル開発、アプリケーションのプロトタイプ開発など、AI導入に必要な作業をすべてワンストップで提供する。

AI導入の失敗原因の大半は、AI導入により得られるビジネスインパクトが小さすぎること(誤った課題設定)、AIに対する現実的ではない期待(誤った目標設定)が占めているという。同社はこれまで培ったAI導入の成功事例のノウハウを駆使して、企業でのAI導入を成功に導くとしている。

またAI導入後の運用に必要な人材の育成についても、サービスの強化を実施。企業において不足するデータサイエンス人材をトレーニングプログラムを通じて迅速に育成することで、企業はAIを自社で運用する人材を自社で確保できるようになり、さらに企業内での他の課題に対してAIを適用可能となる。

東京R&Dセンター

HACARUSは2020年10月、東京R&Dセンターを開設。これまでは本社機能を京都、アプリケーション・システム開発をフィリピン子会社(マニラ市内)に持たせる2拠点体制を採用していたが、これに加えてHACARUSが今後注力する分野の研究開発を東京にて実施する。

東京R&Dセンターでの活動は、論文やセミナーなどを通じて発信。国際的な視点を持ったサービス開発に取り組み、将来的に世界進出を行う足掛かりにする。

HACARUSは、AIベンチャーとして、2014年に京都で創業。同社の強みは、少量のデータからの特徴量抽出に優れ、解釈性の高いスパースモデリング技術にあるという。HACARUSでは、このスパースモデリング技術をAIに応用している。

現在、AIの主流技術となっているディープラーニングは、学習に大量のデータが必要であり、AIの意思決定の過程がブラックボックス化されてしまうという課題を抱えている。また、学習フェーズにおいて大量の計算資源が必要になることから、分析に膨大な時間がかかったり、電力の消費量が多いという課題もある。

HACARUSは、このようなディープラーニングが抱える課題を独自のAI技術によって解決。また、スパースモデリングを使うことにより幅広い業種・業態のAIに関連する課題解決を実現しており、これまで100社を超える企業・団体に対してAI技術の開発や実用化に取り組んできたという。今後も、AI技術基盤のさらなる強化と既存サービスの拡販に注力し、さらなる事業拡大を目指すとしている。

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カテゴリー: 人工知能・AI
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HACARUS(ハカルス)は4月24日、数億円規模のシリーズBラウンドの資金調達を発表した。金額は非公開。第三者割当増資による資金調達で、引受先は国内の大手4大都市ガス事業者の1社である大阪ガス。加えて、DSファーマアニマルヘルスと既存株主の京銀リース・キャピタルがGP(無限責任組合)として運営管理する、京銀輝く未来応援ファンド2号投資事業有限責任組合からも追加の資金調達を実施している。

HACARUSは2019年8月に大阪ガスとの以下の共同開発の検討について合意しており、今回の資金調達はその流れを汲むものとなる。。

  1. Daigas(大阪ガス)グループの社内業務の効率化・省人化を行うAIシステムの共同開発
  2. Daigasグループが顧客に提供するAI・IoTソリューションの共同開発

また、DSファーマアニマルヘルスとは、同社主催の「動物の健康を支える新規事業探索プログラム2018」に参加したことを契機に今回の資本提携が決まったという。

HACARUSは、少量データからの特徴抽出に優れるスパースモデリング技術を機械学習に応用した独自のAI開発する2014年設立のスタートアップ。