1日1題の英語学習アプリ「HiNative Trek」にビジネス英語コースが登場 ― 8カ国同時リリース

外国語学習者向けのQ&Aアプリ「HiNative」や、ネイティブによる英語添削アプリの「HiNative Trek(以下Trek)」を開発する日本のLang-8(ランゲエト)は4月10日、これまではIT業界のみに特化していたTrekに一般ユーザー向けのビジネス英語プログラムを追加すると発表した。

この新プログラムは日本だけでなく、中国、韓国、台湾、香港、ロシア、メキシコ、チリのユーザーにも同時リリースする(学習できる言語は英語のみ)。

2016年2月に正式リリースしたTrekの利用料金は月額9800円。海外向けには98ドルで提供する。今回の新コース追加後も料金に変更はない。

今回発表したビジネス英語コースでは、面接やカンファレンスで利用するフレーズなど、ビジネスの現場で使う実践的な英語を学ぶことができる。教材の監修を務めたのは、アル・ゴア元アメリカ副大統領、マーク・ザッカーバーグなどの同時通訳を務めた経験をもつ関屋英里子氏だ。また、実際に米国企業で就労経験のあるネイティブスピーカー5人によるチェックも重ねて行っている。

ビジネス英語コースの利用方法は従来のTrekと変わりない。ユーザーは平日に1日1問ずつ出題される課題を解くことで英語を学習していく。問題の内容としては、英作文、英語で出題される質問に対して英語で解答するもの、英会話などがある。

今回から一気にサービスの多言語化を進めるLang-8。同社の国際色豊かなユーザーベースを踏まえれば、これは妥当な選択だったと言えるだろう。

同社がこれまでに獲得したユーザー数は現在約60万人。HiNativeはQ&AサービスであることからWeb経由の流入などが増え、2016年3月時点の約9万人から大きく上昇している。そして、その8割が海外ユーザーだ。2017年3月における国別利用割合(Android版)を多い順に並べると、ポーランド、ロシア、アメリカ、メキシコ、ブラジルとなる。日本はそれに続く6番目の位置だ。

Lang-8代表の喜洋洋氏は、同社がこれまでに進めてきたYouTubeマーケティングが海外ユーザー獲得の原動力となったと話す。具体的には、インフルエンサーと呼ばれる影響力をもつ海外YouTuberにアプローチをかけ、彼らにHiNativeを紹介してもらうという方法だ。例えば、同社は2017年2月にポーランドのYouTuberへのアプローチを開始。3月には同国のApp Store「教育アプリランキング」で1位にランクインするなど、一定の効果は出ているようだ。

下の動画では、韓国語を勉強するアメリカ人がHiNativeを紹介している。

ところで、これまでのTrekは「IT特化」という特徴があり、それが他社との差別化要因になっていた気もする。しかし、今回の一般ビジネス英語コースを追加することにより、Trekは他の一般的な英語学習サービスと直接競合することになる。これについて喜氏は、「(差別化の要因となるのは)コンテンツの質というよりも、Trekの仕組みだと思っている。Trekでは予約が必要なく、非同期でやりとりができるので時間効率が良いこと。そして、テキストと音声がデータとして残るので復習しやすいことなどが特徴だ」と語る。

ただ、同社が公開しているユーザー数はHiNativeとTrekを合わせたもので、2016年2月にリリースしたTrekがどれだけのユーザーを獲得してきたのかは不明だ。だから、この仕組みが本当にユーザーに「ウケて」いるのか僕には分からない。逆に言えば、今回ビジネス英語コースを追加したことによって、これからTrekの真価が問われることになるのだろう。

Lang-8は2016年10月に京都大学イノベーションキャピタルなどから2億円を調達。その後、2017年2月の「ITコース2」、そして今回の「一般ビジネス英語コース」と立て続けにTrekの強化を行ってきた。

「これでようやく準備が整い、既存アプリのチューニングに注力できるようになった。その指標の1つであるHiNativeの『回答を得るまでの時間』は今年初めと比べて30%ほど改善し、平均して28分程度になっている。また、スタートは遅れてしまったが、2017年末までにユーザー数250万人というかねてからの目標はなんとか達成したい」と喜氏は語る。

Lang-8代表の喜洋洋氏