不動産投資クラウドファンディング「大家.com」がSTOスキーム導入、運用期間中でも出資持分を譲渡可能

不動産投資クラウドファンディング「大家.com」がSTOスキーム導入、運用期間中でも出資持分を譲渡可能

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2020年12月6日~12月12日の情報から。

不動産や商業施設建築事業のグローベルス(旧社名:キーノート)は12月11日、同社運営の不動産投資型クラウドファンディング「大家.com」の第1号案件「Foresight南麻布」において、STO(Security Token Offering)スキームを導入すると発表した

これまで不動産事業や多種多様な商業施設のデザイン・設計・施工を行ってきたグローベルスは、「不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディング事業」を定款に追加し、8月4日付けで東京都知事より不動産特定共同事業の許可を取得。オンラインで手軽に不動産投資を行える不動産投資型クラウドファンディングサービスサイト大家.comを展開している。

従来の不動産投資は投資の最小金額の規模が大きく、最低でも数千万円超の投資額となってしまうことが課題だったが、大家.comは少額投資(1口1万円)を可能にし、誰でも気軽に「大家さん」になれるサービスとなっている。また当初のスキームでは、一度出資すると運用期間中は出資金がロックされてしまうため、運用期間終了まで出資持分を保有し続けなければならなかったが、不動産特定共同事業者向けSTOスキームでは、運用期間中であっても出資持分を譲渡することが可能となり、投資家の資金流動性リスクの軽減につながるという。

今回、大家.comに導入されたのは、LIFULLおよびSecuritize Japanが提供する不動産特定共同事業者向けのSTOスキームとなる。

不動産特定共同事業者向けSTOスキームを利用するには

不動産特定共同事業者向けSTOスキームを利用するには、投資家は大家.comに投資家登録をし、対象案件の成立前書面の確認を行う必要がある。大家.comにて出資した投資家は、出資持分の譲渡を希望する際は、グローベルスにセキュリティートークンの発行を依頼する。セキュリティートークンが発行された出資者は、ブロックチェーン上で持分の譲渡が可能となる(2021年3月下旬予定)。また、出資持分を譲り受ける第三者もまた、大家.comへの投資家登録、対象案件の成立前書面確認が必要となっている。

ちなみに、ここで発行されるセキュリティートークンは、不動産特定共同事業法第2条第4項に定める不動産特定共同事業(1号事業)にもとづく出資持分を表象したものであり、金融商品取引業等に関する内閣府令第1条4項17号に規定される電子記録移転有価証券表示権利等に該当するものではない(金商法第2条2項5号に定める有価証券から除外されている)。

大家.comの第1号案件「Foresight南麻布」では、12月14日(予定)より投資申込を開始し匿名組合出資持分を表象するセキュリティートークンの発行を受けることが可能になる。出資者は案件運用開始後、LIFULLおよびSecuritizeが提供するプラットフォーム上でのセキュリティートークン譲渡により、第三者への出資持分の譲渡が可能になる。

ちなみにForesight南麻布案件は、グローベルスが所有する港区南麻布に所在する収益ビルとなる。1992年3月築の建物で、2012年にグローベルスが取得。その後、エントランスの改修工事や各階の設備の更新・交換工事を行うことで、2020年12月現在は満室稼働となっているという。建物の管理・運営・入居者などの問合せ対応はグローベルスが行っている(一部外部委託)。

不動産投資クラウドファンディング「大家.com」がSTOスキーム導入、運用期間中でも出資持分を譲渡可能

関連記事
LIFULL・ゼンリンなどが不動産ID発行システム試用版の公開に向け開発・運営協議会を設立
ブロックチェーンで不動産取引を完全にオンライン化、安全かつ簡潔化するPropy
LIFULLが不動産クラウドファンディング向けにブロックチェーン基盤デジタル証券化を支援・推進
Geoloniaと不動産テック協会が日本全国の住所マスターデータをオープンデータとして公開

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:大家.comクラウドファンディング(用語)グローベルスSecuritize不動産テック(用語)ブロックチェーン(用語)LIFULL

LIFULL・ゼンリンなどが不動産ID発行システム試用版の公開に向け開発・運営協議会を設立

LIFULL・ゼンリンなどが不動産ID発行システム試用版の公開に向け、開発・運営協議会を設立

LIFULLゼンリン、家賃保証・賃貸保証サービスの全保連、不動産テック特化型VCのデジタルベースキャピタルは10月12日、「一般社団法人不動産情報共有推進協議会」(PROP。Platform of Real Estate Open data Promotion)の設立を発表した。代表理事は松坂維大氏(LIFULL 不動産ファンド推進事業部 ブロックチェーン推進グループ長)。

なお11月5日13:00から設立記念イベントを開催予定としている。

今後は、不動産取引・不動産流通の活性化に向けて不動産情報共有インフラの開発・提供を進めていく。不動産ID発行システムの試用版の公開にあたり、データの登録や活用の実証実験を行うパートナー企業を広く募集。不動産情報の利活用、業務効率化に関心のある事業者であれば参加が可能としている。

不動産取引は、様々な関係者が関与するため、正確で鮮度の高い情報が安心安全かつ効率的な取引の実現のために必要となる。

しかし不動産は、世の中にひとつしか存在していないにも関わらず情報が一元管理されず、様々な企業・場所でデータが重複管理されていたり、記録すべきデータが保管されていなかったりといった問題が生じている。

これら課題解決に取り組むため、LIFULL、ゼンリンらが中心となり、2018年10月よりブロックチェーン技術を活用した不動産情報の共有化を目的としたADRE不動産情報コンソーシアムを設立し、活動を推進。

2019年7月、物件情報の特定・識別を実施するため、不動産IDの開発に着手。2020年4月には丸紅、GA technologiesら新メンバーも加盟。2020年10月に不動産ID発行システムのβ版を公開する運びとなり、今後不動産情報共有システムの開発・運営を組織として行うために、PROP設立に至ったとしている。

PROPは、すべての法人・個人が不動産に関わる情報を自由かつ安全に利用できるプラットフォームの構築を実現し、企業や組織のサービスの効率化や新規創出を促すことで、不動産業界のDXの推進と、エンドユーザーのより良い暮らしや働き方に貢献することを目的に活動するとしている。

カテゴリー: ブロックチェーン
タグ: 全保連ゼンリンデジタルベースキャピタル不動産IDLIFULL日本

関連記事
LIFULLが不動産クラウドファンディング向けにブロックチェーン基盤デジタル証券化を支援・推進
Geoloniaと不動産テック協会が日本全国の住所マスターデータをオープンデータとして公開
Fintech協会事務局長・桜井氏が不動産テック特化ファンドを設立

LIFULLが不動産クラウドファンディング向けにブロックチェーン基盤デジタル証券化を支援・推進

LIFULLが不動産クラウドファンディング向けにブロックチェーン基盤デジタル証券化を支援・推進

不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」など住生活関連サービス提供のLIFULL(ライフル)は8月21日、デジタル証券プラットフォーム提供のSecuritize Japan(セキュリタイズ ジャパン)との業務提携を発表。

不動産クラウドファンディング事業を展開している不動産業者(不動産特定共同事業者)などが、不動産をブロックチェーン上のデジタル証券として発行・取引を行い資金を調達する不動産STO(Security Token Offering。セキュリティトークン オファリング)を行う際、セキュリティトークン発行アプリ・トークン譲渡スキームを提供すると明らかにした。

LIFULLが不動産クラウドファンディング向けにブロックチェーン基盤デジタル証券化を支援・推進

セキュリティトークンとは、資産などの「裏付け(Security)」をブロックチェーン上で表現したもの。ブロックチェーン技術の特性である「改竄耐性」「二重譲渡防止」「透明性」などを活かし、権利譲渡の利便性・安全性を高められる。

同スキームは、既存不動産クラウドファンディングの出資持分発行にセキュリティトークン発行をリンクさせることで、従来業務フローの変更を最小限に発行できるという。トークン発行は、米国で多数の発行実績を持つSecuritizeのDSプロトコルを用いており、発行操作はSaaS型専用アプリを利用。ブロックチェーンに関する複雑なシステム開発を必要とせず導入可能としている。

また、発行したセキュリティトークンを用いた投資家間の取引は、パブリックチェーンであるイーサリアム(Ethereum)上に記録される。取引先はスマートコントラクトにより制限され、匿名組合員以外への譲渡制限が可能となる。

不動産業界への幅広いチャネルを持ち、これまで複数のブロックチェーンに関するPoCによって培った不特法事業への適用に関するLIFULLの知見と、米国で多数のセキュリティトークン発行実績を持つSecuritizeのSaaSを組み合わせることで、セキュリティトークン発行を支援・推進するという。

同スキームは、リーガルアドバイザーのTMI総合法律事務所成本治男弁護士監修の元、不動産特定共同事業契約に基づく出資持分を表示するトークンを発行するとともに、出資持分譲渡におけるDVP(Delivery Versus Payment)を実現する。

なお、同取り組み発行のセキュリティトークンは、不動産特定共同事業法に定める不動産特定共同事業に基づく出資持分を表象したもの。⾦融商品取引業等に関する内閣府に規定される「電⼦記録移転有価証券表⽰権利等」には該当しないとしている。

関連記事
SorareがJリーグ全選手をブロックチェーン基盤のトレーディングカード化し発行
三井物産流通とNTTコミュニケーションズがイーサリアム基盤のサプライチェーンDX実証実験推進で合意
LayerXが行政機関・中央銀行などと共同研究を手がけるLayerX Labs開設、デジタル通貨・スマートシティなど注力