ライブコマース×D2Cで新たな商品展開へ、「Live Shop!」運営のCandeeがブライベートブランド立ち上げ

ライブコマースアプリ「Live Shop!」を提供するCandeeは11月16日、ライブコマースとD2C(Direct to Consumer)を掛け合わせた新たな商品展開として、同社初のプライベートブランド「TRUNK 88(トランクエイティーエイト)」を立ち上げることを明らかにした。

同ブランドでは約23万人のフォロワーを抱える、インスタグラマーの佐野真依子氏をクリエイティブディレクターに起用。アクセサリーやバッグ、シューズ、ライフスタイル雑貨などのアイテムを中心に扱う予定だ。

Candeeは2015年の設立以降、これまでにライブ配信9800本以上、モバイル動画1300本以上の企画から制作、配信までを手がけてきた。同社はソーシャルビデオプラットフォーム上でさまざまなカテゴリの動画コンテンツを提供することを目指し、その第一弾として6月にLive Shop!をリリースしている(立ち上げの背景や構想についてはLive Shop!リリース時に詳しく紹介している)。

Live Shop!の開始から約5ヶ月が経ち、今回新たにブライベートブランドを立ち上げる背景には、ライブコマースとD2Cに高い親和性があるからだという。

Live Shop!はインフルエンサーが着用しているファッションやおすすめのアイテムを、ライブ配信形式で紹介するアプリ。ユーザーはコメントやアンケートなどを通して出演者とインタラクティブなコミュニケーションを楽しみながら、リアルタイムで商品を購入できる。

この「ユーザー属性や傾向、ニーズを直接リアルタイムに収集できる」というライブコマースの特徴は、「自社で企画した商品を小ロットかつ適正価格で製造し、直接ユーザーへ販売できる」D2Cのモデルと相性が良いというのがCandeeの考えだ。

ライブコマースとD2Cの強みを掛け合わせることで、データを元にした商品製造を短期間で行い、商品投入のサイクルやロット数をコントロールできる。Candeeではマーケットインの商品展開により、さらなる販売力の強化、利益拡大を目指す。

なおTRUNK 88は12月19〜21日にLive Shop!および受注会で先行発売を実施し、2018年1月中旬からLive Shop!や公式ECサイトにて正式に販売開始する計画だ。

Candeeがライブコマースに参入、インフルエンサーが商品を紹介する「Live Shop!」

 

動画ストリーミングの新しいかたちとして注目を集めるライブコマース(動画コマース)。中国の動画配信プラットフォームでは、すでに個人が自撮りの動画を配信し、視聴者からデジタルギフトを受け取ったり、商品を販売したりなんてことが進んでいるようだ。例えば淘宝(タオバオ)上では、1回の生放送で視聴者数が数千人、年間売上二桁億円、なんていうライブコマースの事例もあるようだ。そんな動画コマースの波が日本にもやってきた。モバイル向け動画の制作などをてがけるCandeeは6月7日、ライブコマースアプリ「Live Shop!」の正式提供を開始した。

Live Shop!は、「ライブ配信× コマース× インタラクティブ」をうたうライブコマースアプリ。「ゆうこす」こと菅本裕子さんをはじめとしたインフルエンサーやモデルが、それぞれ自身のチャンネルを開設。定期的にライブ配信を行う。ユーザーはライブ配信中にコメントやスタンプを送ってリアルタイムのコミュニケーションを行ったり、配信者が紹介するファッションアイテムなどをリアルタイムに購入したりできる。

Candeeは2015年の設立。LINEの動画配信アプリ「LINE LIVE」内の番組をはじめとして、これまで1300本以上(ライブ配信は500本以上)の動画の制作、配信を手がけてきた。2016年12月にはYJキャピタルやTBSイノベーションパートナーズ、gumiを引受先とした総額12億円の資金調達を実施。さらに2017年5月には、ライブ配信に特化した映像制作会社のアポロ・プロダクションを完全子会社化するなどしている。

「これまでのクライアントワークでは、圧倒的なスピードで動画制作のトライアンドエラーを繰り返すことで、コンテンツ制作のノウハウを内部で持つようになった。ネット全盛の時代でも、プロのコンテンツが勝つ。マーケットについてはソーシャルゲームも参考にした。1人でなく、誰かと楽しむという流れは、動画にもやってくる。ソーシャルなビデオプラットフォームを作っていく」——Candee代表取締役副社長COOの新井拓郎氏は新サービスについてこう語る。

前述の通り、同社はLINE LIVEの人気番組「さしめし」をはじめとして、数多くのライブ配信動画を制作してきた。キャスティングやコンテンツの制作力に加えて、ソーシャルな動画プラットフォーム運営、自社での商品在庫の管理まで、ワンストップで実現することが、同社の強みになると語る(ディー・エヌ・エーがノンプロモーションで展開する「ラッフィー」などもあるが、こちらはあくまで動画プラットフォームのみの提供となっている)。Live Shop!は2月頃に企画を立ち上げ、4月にはテストローンチ(App Storeでのアプリ公開)。そして今回の正式公開に至った。

Candee執行役員の椙原誠氏(左)とCandee代表取締役副社長COOの新井拓郎氏

Candee執行役員の椙原誠氏(左)とCandee代表取締役副社長COOの新井拓郎氏

ライブコマースはコミュニティに近い

番組を担当するのはCandeeがキャスティングしたインフルエンサーが中心。商品はいわゆる“プチプラ”、つまり低価格帯のファッションアイテムやメイクグッズが中心となる。プラットフォームの一般開放は予定しないが、今後はモデルやインフルエンサーのほか、アパレルブランドなどの参加を呼びかけていく。「映像活用したコンテンツはあるが、マネタイズできるプラットフォームは少ない。それができれば、プラットフォームに入ってくる人も増えてくる」(新井氏)

動画自体はアーカイブされるのでいつでも視聴できるが、商品購入に関してはライブ配信中に限定する。これは出演者とのインタラクティブなコミュニケーション、ライブの価値にこだわるためだという。出演者はインフルエンサーなどが中心。すでにそれなりの規模のファンがいることもあり、コミュニケーションの延長線上での購買が多いという。配信は長くて1時間程度。メイクのハウツーやファッションの紹介、料理に挑戦するなど、さまざまな企画を準備している。

「ユーザーからの質問にも出演者が回答するので、視聴者に納得感を持ってもらえる。番組の尺が30分から1時間ていどなので、衝動買いできるような単価の安い商品が売れている。通常のECであれば能動的に動かないと商品を購入できないが、ライブコマースだと、『憧れの○○さん(モデルやインフルエンサー)が紹介している』という、これまでとは違う切り口での販売ができる」(Candee執行役員の椙原誠氏)

僕もプレローンチ時の動画を見たのだが、出演者がファンの質問に回答しつつ商品を紹介し、「購入した」というコメントにお礼をする、というのがリアルタイムに行われるというのは、ファンにとっては嬉しいものになると感じた。新井氏は「コミュニティサービスに近い。ある種ファンになって、結果商品を買う、というもの。ライブの物販に近いかも知れない。ライブTシャツを買うのに素材はこだわらない。出てくる人の距離感で商品を購入している」と語る。

Candeeでは、今夏をめどに、月間60〜80点程度の商品の販売を目指す。すでにアンケート機能や抽選販売機能を導入しているが、今後はオークションやクイズといった機能も追加していく。また現在支払い手段はクレジットカードに限定されているが、Apple Payや後払いなど手段も拡大していく。さらにイベント企画、タレントマネジメントなどをてがけるアソビシステムとも提携。今後同社所属のタレントらも動画に出演する予定だ。

國光氏が語るソーシャルビデオプラットフォーム構想

6月7日、イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」内で、gumi代表取締役であり、Candee取締役会長の國光宏尚氏がこのLive Shop!についてプレゼンテーションを行っている。國光氏は新井氏、椙原氏同様に、「ソーシャルゲームが流行した理由はみんなでやって楽しいから。動画も一緒にみんなで見る方が楽しいはず」と説明した上で、(1)スマートフォンファースト、(2)ソーシャル、(3)インタラクティブ——という要素を持った動画による「ソーシャルビデオ革命」が起こると語った。Candeeではソーシャルビデオのプラットフォームを作り、今後さまざまなカテゴリの動画コンテンツを提供する計画だが、Live Shop!でチャレンジするEC領域はその第1弾という扱いだ。

また國光氏は2020年以降のメディアについて語った。2020年にはモバイル通信はより高速な5Gとなり、動画はより精細な4K・8Kとなっていく。だがテレビに関してはチューナーを変えない限り現状の4K・8Kの品質を得ることができない。スマホの方が明らかにテレビより画像が良くなる。いったん上(の品質)を見ると、ユーザーはもう戻れない——そんな背景もあって、2020年以降、「いよいよ通信が放送を飲み込む」(國光氏)とした。

gumi代表取締役であり、Candee取締役会長の國光宏尚氏