Facebookは先ほど、ビデオ広告配信テクノロジーのLiveRailを買収したことを発表した。このスタートアップは広告主とウェブサイトのパブリッシャーを結びつけ、モバイル・ビデオ広告を毎月70億回も配信している。情報源によれば、Facebookの買収額は4億ドルから5億ドルの間だろうという。
取材に対してFacebookは買収条件についてのコメントは避けたが、「LiveRailの運営継続のために必要な資金を投資する。LiveRailとのデータの共有方法については今後検討していくが、基本的にはLiveRailの広告ターゲティングを助けるものとなるだろう」と述べた。社員170人のビデオ・スタートアップの買収によってFacebookのビデオ広告における地位は強化されることになる。
2007に創立されたLiveRailは、いわゆる「サプライサイド・ビデオ・プラットフォーム」として知られるサービスにメジャーリーグ野球、ABC、A&E Networks、Gannett、Dailymotionなどの有力顧客を抱えている。LiveRailは独自のビデオ広告ターゲティング・テクノロジーによって広告主が想定する対象に広告を表示する。またビデオ広告を供給することによってサイト運営者も助ける。
LiveRailはSan JoseのPond Venturesを主要投資家として、シードからシリーズCまでのラウンドで総額1200万ドルを調達している。 買収金額がわれわれの聞いたように4億ドルから5億ドルだというのが事実なら、Pondにとってこの投資は大成功だったことになる。
LiveRailの核心はリアルタイムの広告オークション・テクノロジーにある。LiveRailは広告配信先のサイトのすべてのビデオ広告掲載スペースとその条件をスキャンし、広告主に対してもっとも有利な条件の広告枠をダイナミックに判定する。この広告主とパブリッシャーの双方を利するテクノロジーはFacebookが開始したサードパーティーへの広告ネットワークを強化するためにうってつけだ。
LiveRailはまたCheckpointというテクノロジーを持っており、アルコール飲料、タバコその他の年齢制限のある広告が未成年者の目に触れないようにできる。
2013年にLiveRailはTechCrunchの取材に対して、対前年比300%の成長を続けており、年間売上1億ドルを達成できる見込みだと答えている。当時同社は2014年中の株式公開を考えていた。しかしFacebookの出した条件のほうがさらに良い選択肢となったわけだ。LiveRailが株式上場に懸念を抱くようになった事情はよく理解できる。IT系スタートアップの上場は次々に不調に終わっている。たとえば、YuMeは9ドルで上場したが、現在は5.95ドルだ。Tremor Mediaの上場価格は10ドルだったが、今は4.61ドルだ。
上で述べたように、Facebookは今年5月のf8カンファレンスでFacebook Audience Networkというモバイルビデオ広告ネットワークをローンチした。おそらく最終的にはFacebookのAudience NetworkとLiveRailは統合運用され、あらゆるプラットフォームのアプリにビデオ広告を配信することになるだろう。
この3月、Facebookは自サイト向けに15秒の自動再生ビデオ広告をスタートさせている。いわばFacebook版のテレビCMだ。LiveRailの広告ターゲティング・テクノロジーとFacebookの膨大なユーザーデータが統合されれば、たとえば映画の予告編などのビデオ広告をそれにもっとも興味を示しそうなユーザーに対して効率良く表示することが可能になる。
ソーシャル公告戦争は現在激しさを増しているところだ。今週月曜にはTwitterがモバイル広告の再ターゲティングのスタートアップ、Tap Commerceを買収したが、Twitterは今年に入ってネーティブ・フォーマット広告のNamo Mediaを5000万ドルで、モバイル広告市場のMoPubを3億5000万ドルの巨額で買収している。
広告費が活字媒体やテレビからオンラインにシフトする中、広告ターゲティングはオンライン広告の市場シェア獲得のためにもっとも重要なテクノロジーとなりつつある。LiveRailの買収によってFacebookはテレビCMに対する大きな優位性を手に入れた。同時に、われわれユーザーにとっても、まったく興味のない商品のCMビデオを見せられる可能性が減少するならメリットがあるわけだ。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)