GoogleがLytroを4000万ドル前後で買収との情報――ライトフィールド技術でVR世界構築強化

先週、Googleは仮想現実中で没入的写真を表示する新しいアプリを発表した。また多数のカメラを利用してこうした全周写真を撮影するテクノロジーも紹介している。これは16台のGoProカメラを円周上に配置したデバイスだったが、Googleではエンドユーザーが手軽に利用できるサードパーティーのテクノロジーの採用を準備しているという観測が広がっていた。

複数の情報源がわれわれに語ったとこによれば、GoogleはLytroを買収するという。このスタートアップは当初ライトフィールド記録テクノロジーを用いた画期的な多焦点カメラを売り出したが、後にテクノロジーの応用先をVRへとピボットした。

TechCrunchは多数のLytroへの投資者に加えてGoogle、Lytro自身にメールで問い合わせているが、まだコメントは得られていない。しかしわれわれはこれら企業ないし買収手続きに近い複数の情報源から交渉が進行中であることを聞いている。

O一人の情報源は「これはLytroの資産を入手するのが目的で価格は4000万ドル以下だ」と述べた。別の情報源によれば2500万ドル以下だという。Lytroの売却先としてFacebook、ないしAppleも考慮されていたとする情報源もあった。別の情報源によれば、Lytroの社員でGoogleに移るものは多くないらしい。退職金を受け取って去ったり、単に会社を辞めた社員も多いという。

Lytroの資産の中心はもちろんライトフィールドに関連する59件の特許だ。

実現したとしてもGoogleによる買収はLytroや投資家にとって大勝利には遠い。PitchBookのデータによれば、同社はこれまで2億ドル以上を調達しており、、2017年に行われた最後のラウンドにおける会社評価額は3億6000万ドルだった。投資家はAndreessen Horowitz、Foxconn、GSV、 Greylock、NEA、Qualcomm Ventures他、多数に上る。Googleのハードウェア担当上級副社長、Rick OsterlohがLytroの取締役会に加わっている。

4000万ドルというのは同社が新しいコンセプトのカメラを発表したときに期待されていた額からはかけ離れたものだ。当時Andreessen Horowitzの共同ファウンダーのベン・ホロウィッツは「このカメラには仰天した」と述べていた。

Lytroは2006年にRefocus Imaging社としてRen Ngによって創立され、2011年に現社名となった。しかしハードウェアの製造は文字通りハードな事業であり、VRの普及速度も期待されたほどではなかった。また没入的映像のプラットフォーム構築に大企業が参入したこともあり、Lytroは苦境に陥っていた。

Lytroが失速したのは、テクノロジー的に優れていたもののカメラがマスマーケット向けプロダクトとして高価すぎ、大型過ぎたこと、VRにピボットした後もマーケティング力が弱すぎたことが原因だろう。同時にライバルの大企業には潤沢な資金にものを言わせて自動車であれ地図であれゲームであれ、VRに関連する市場環境が成熟するのを待つ余裕があったことも逆風となった。

GoogleがLytro買収で正確に何を目的としているのかはまだ不明だが、同社のテクノロジーが世界最大のIT企業のプロダクトに組み込まれる可能性が出てくることは確かだ。【略】

リアルな仮想現実を実現するにはいくつかの手法があるが、Lytroの場合は、映像を構成する光線の入射方向に関する情報を記録して画像を合成するライトフィールドと呼ばれるテクノロジーだ。2次元の映像に奥行き情報が畳み込まれて3次元の画像となっている。これは没入的体験を得るためには優れた方法だ。これにより一つの対象に焦点を絞ると他の対象はぼやけて表示される。これはグリーンスクリーンのような特殊な装置を使わずに特定の対象を分離するためにも役立てられる。

仮想現実体験の弱点のひとつがVR酔いと呼ばれる現象で、2次元映像に奥行きがないため、装着者の視点の移動に追随できないことが原因の一つだった。ライトフィールド・テクノロジーはこの弱点を解消するために適しているかもしれない。また他にも応用範囲は広いはずだ。【略】

この記事は当初の公開後、買収価格およびライトフィールド・テクノロジーに関してアップデートしてある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

755メガピクセル可変焦点のLytro Cinemaカメラは映画撮影からグリーンスクリーンを追放する

2016-04-12-lytrocinema

Lytroの高機能で巨大な可変焦点カメラは映画やテレビ番組の撮影からグリーンスクリーンを無用のものとするかもしれない。

Lytroのライトフィールド・テクノロジーは実にエレガントなイノベーションであり、将来はわれわれが日常用いるカメラにも採用されるだろう。このテクノロジーは光に含まれる情報を余さず利用することにより、異なる距離にある対象物を分離して三次元のグリッドとして記録することができる。自由にナビゲーションできる3D世界を作るのに理想的だ。しかし当面、映画やテレビのフィルムメーカーに大きな福音をもたらすことになりそうだ。Lytroを用いると、撮影後のポスト・プロダクションが非常に簡単になるだけでなく、これまでは不可能だったさまざまな効果が得られる。

今日(米国時間4/11)、同社はテレビや映画の製作に大きな影響を与えるLytro Cinemaを発表した。 Lytro Cinemaは外界の驚くべき量の情報を記録する。撮像素子は7億5500万ピクセルだ。Lytro Cinemaは40K解像度のRAWデータを最大で毎秒300フレーム撮影できる。なんと毎秒400ギガバイトのデータ量に相当.する。

これによってユーザーはポスト・プロダクションでこれまでには考えられなかった創造性を発揮できる。

Lytroは光の要素をすべて記録しているためシャッタースピードやダイナミック・レンジを後から変更することができる。たとえば撮影後に自由に合焦距離を選択し、異なる距離に置かれた対象を抜き出したり、ピントを合わせ直すことができる。また撮影後にモーション・ブラーのような効果を与えることも簡単だ。Lytroではこの能力によってコンピューターグラフィックスと実写をシームレスに融合させることができるとしているが、これはそのとおりだろう。

現在の映画やテレビ番組の製作にあたってはグリーンスクリーンが大きな役割を果たしている。スタジオのバックドロップを緑のシートに変えることによって魔法のような効果を生んでいる。これに対してLytro
Cinemaはライトフィールド・テクノロジーにより「深度スクリーン」と呼ばれる特殊効果を可能にする。撮影者はグリーンスクリーンなしにグリーンスクリーンと同じ効果が得られる。つまり俳優などの前景に対して、背景をまったく別のビデオ素材に置き換えることが可能になる。

ライトフィールド・テクノロジーは対象までの距離を極めて精密に記録できるため、Lytro Cinemaで撮影されたデータから特定の対象のデータだけを分離し、他を透明化することが可能だ。ビデオ編集者は撮影機材でごたごたしたスタジオで俳優の演技を撮影した後、背景を月の表面の情景に変えるといったことが簡単にできるようになる。

こうした特殊効果を得るのは非常に困難だったが、Lytroすべてをできるかぎり簡単にする努力を払っている。専用のシネマカメラに加えてローカルとクラウドへのデータ保存のシステムや各種の効果を得るためのアプリやプラグインが提供される。

このカメラはプロのビデオ製作者向けテクノロジーであり、Lytroでは売り切りではなく、ユーザーの必要に応じてパッケージをレンタルする方針だ。Lytroによれば、カメラと各種のソフトウェアを含むパッケージのレンタル料金は1週間あたり12万5000ドルからとなる。

読者がLytroというメーカーに聞き覚えがあるとすれば、それは消費者向けのかなり大型で角ばったライトフィールド・カメラによってだろう。

消費者向けプロダクトは同社の知名度を大きくアップさせるために役立ったが、昨年Lytroはビジネスモデルをピボットさせ、プロ向け映画製作分野でのライトフィールド・テクノロジーの応用に力を入れている。

今回のLytro Cinemaは同社の新方針の中でもっともメインストリームに近い製品だ。LytroはすでにVRビデオの製作者向けにナビゲーション可能な360度全天3D映像を得られるImmerge システムを開発中している。しかしCinemaカメラはもっと一般的な通常の映画、ビデオの撮影に利用できる製品だ。映画や番組の製作者はこれによってライトフィールド・テクノロジーのメリットを十分に利用できることになるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Lytro、VR動画カメラ “Immerge” を発表

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ピント合わせ不要カメラメーカーのLytroがバーチャルリアリティーに参入する。今日(米国時間11/5)同社は“Immerge” と呼ばれる製品を発表した。これは「世界初の映像VR用プロフェッショナル光照射野システムだ。

それはどういう意味なのか?

つまり、Lytroは動画VRを撮影するためのツールを提供したい。彼らはこの「光照射野(light field)」方式を一から作り上げた。CEOのJason Rosenthalによると、Lytroは旧カメラ製品のサポートと販売は続けるが、今後はバーチャルリアリティーに切り替えていき、それが「会社の未来」であると言っている。

Screen Shot 2015-11-05 at 10.16.08 AM

装置は球体でリング状の光照射野カメラ/センサーを5組備えている。ポイントは、あらゆる地点で全方向から来るデータを収集すること。映像の試聴者は上から下まで、左から右までをシームレスに、まるでVRヘッドセットを着用しているかのように見ることができる。基本的に現在のVR体験では、「動き回る」ことはできず、利用者は定位置にいる。だから倒れることはめったにない。

私はあるが。

今一番話題のVR装備メーカー各社が、Lytro Immergeについて語っている:

“Six degrees of freedom”[6-DoF/6つの自由度]がImmergeのおたけび。

カメラの出力は、Oculus、HTC、Sonyを含めあらゆる主要なプラットフォームと機器に対応している。発売時期は? これからテストをしてフルスペックが明らかになるのは2016年になり、安くはないと思われる。しかし、こういうカメラを使おうという人なら、この手の最新技術を買う予算を持っているに違いない。

同社はこれまでに1.5億ドルの資金を調達しており、バーチャルリアリティーに賭けることは決して悪いアイデアではない。まあ、少なくとも彼らはポラロイド写真か何かを再発明しようとしているのではない。これは「ピボット」だ。しかし、ひどく賢いピボットだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

LytroのカメラにはWiFiチップが隠されていた: FWアップデートで有効化, iPhoneアプリからアクセス

Lytroのクレージーなライトフィールドカメラ†が、たくさん売れなかったことは確実なようだが、買った人は必読。Lytroは今日(米国時間6/19)、このカメラの中で眠っていたWiFiチップを有効にするファームウェアアップデートと、写真にワイヤレスでアクセスし共有できるiOSアプリをリリースした。[†原注: light-field camera, 撮影後に焦点を自由に決められるカメラ。]

そしてそのアプリは、ものすごく幻覚的なアニメGIFを作ってくれる!

下のデモビデオを見てみよう。LytroのカメラマンEric Chengと一緒に作ったのだ。:

(Ericが”GIF”を“ギフ”と発音していることは、許してあげる(ぼくの説では、正しくは“ジフ”)。Alexiaが何と言おうと、”GIF”は“ジフ”なんだよ!)

Lytroを持っていても、中にWiFiチップがあることを知らなかった人がほとんどだろう。おどろき、だよね。そもそも、正式発表が今日やっとだ。それまでは、何の役にも立っていなかった。1年前にFCCが発売前のLytroを分解したときにチップの存在がばれたが、会社はそのときの審問に対して、“接続性は重要である。目下それを実装努力中である”、と答えたそうだ。

アプリLytro Mobileの主な目的は、Lytroで撮った写真をコンピュータを使わずにアップロード、加工、共有などすることだ。カメラからアプリへの写真の転送は無線で行われ、アプリがそれらに位置タグを付ける。焦点や遠近感を変えるのは画面のタッチインタフェイスでやるので、Lytro本体の小さな画像よりも楽だ。写真を撮ったら、すぐにそれがアプリへ行く。転送時間は5〜6秒だ。自分で撮った写真だけでなく、Lytroのコミュニティで共有されている写真も閲覧できる。

Androidアプリも、目下作り中だそうだ。リリース予定日は未定。同じWiFiでMacやPCに写真を送るアプリケーションは、作る予定なし。

上で述べたように、Lytorの写真から、めちゃめちゃラリったアニメGIFを作れる。下の二つは、上のビデオを作っているときのぼくの、お見合い用写真(?!)だ。左のはパララックスシフト効果、右は、前景と後景の焦点が変化する。写真のほぼ中央にあるのは、いまいましいiPhoneのケーブルだ。

ファームウェアを更新したら、そのLytroをiPhoneにつなぐのはとても簡単だ。Lytroの画面をスワイプするとタスクバーが出るので、小さなWiFiアイコンをタップするとLytroがWiFiホットスポットに変身する。そしたらiPhoneのWiFi接続先をLytroの信号に設定、アプリをローンチ、以上だ。

無料のアプリLytro Mobileはここからダウンロードする。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))