MITは色々なデバイスに同時に高品質のビデオストリームを配信する方法を開発

画像:Getty Images/aurielaki

自宅ネットワークの接続状況と世帯の規模にもよるが、ビデオストリーミングはまったく悲惨な状態になることもある。バンド幅には上限があるからだ。みんながそこに群がって、できるだけ多くのデータをもぎ取り、カクカクした映像にならないようにしたがる。同時に要求される複数のストリームにバンド幅を分配するやり方をコントロールする新たな手法があれば、世界に平和をもたらすかもしれない。山ほどのデバイスが1つの接続を共有して、すべて同時にビデオをストリーミングしようとしているような状況に対処できるとしたら。

MITのコンピュータ科学とAI研究室(Computer Science and Artificial Intelligence Lab)の研究者は、「Minerva(ミネルバ)」と呼ばれるシステムを開発した。バッファリングに起因するカクカクを防ぎ、ストリームがダウングレードされてしまうことによるギザギザを最小限にとどめようというものだ。NetflixやHuluのようなストリーミングサービスには、基本的に大きな効果が見込めるという。特に、一軒の家に住む複数の家族が同時にビデオを観ようとしている場合に有効だ。ただし、このシステムの基盤となっている技術は、一軒の家に限らず、近隣の家庭、さらには地域全体など、より広範囲にも適用できる。理想的な状態に届かないストリーミング環境の問題を緩和する効果が期待できるのだ。

Minervaは、1つのネットワークからストリーミングを受け取ろうとするさまざまなデバイスの、それぞれ異なるニーズを考慮する。たとえば、フルHDさえ表示できないディスプレイの古いスマートフォンと、4KのApple TVを同列に扱うようなことはしない。またMinervaは、コンテンツの性質も考慮する。たとえば、スポーツのライブ中継を高品質で観ようとすれば、子供向けのアニメのTV番組などとは比べものにならないほど、多大なバンド幅を要求する。これは重要なポイントだ。

というわけで、ビデオは、実際のニーズに従って視聴者に分配される。けっしてどんなデバイスにも均等に割り振られるわけではない。さらにMinervaシステムは、ストリームの配信中にも変化するニーズに対応して、分配する速度を最適化し続ける。

実際の環境でのテストでMinervaは、720pが1080pになったのに相当するほどのビデオ品質の向上を、全体の3分の1ほどの時間、実現できた。再バッファリングの必要性も、ほぼ50%近くまで低減できた。これは、実際にビデオストリーミングのコンテンツをシームレスに連続再生することを考えた場合、非常に大きな改善と言える。こうしたことを、ネットワークのインフラに対する根本的な変更なしに実現できるという点も優れている。つまり、ストリーミングのプロバイダーは、ユーザー側には何の変更も加えることなく、このシステムを採用し、導入できるというわけだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)