家に閉じこもる今、ポッドキャストを始めるためのヒント

もう過去5年以上ポッドキャストをしてきたが、これまではゲストと直接顔を会わせてインタビューできない場合、オファーを断ってきた。リモートで優れたポッドキャストを行う人々は大勢おり、私自身も何回か(そこそこのレベルで)番組に出たことがある。しかし直接、会ってインタビューすることの代わりにはならない。動画や音声がクラウドを通過する間にあまりに多くのニュアンスが失われてしまうからだ。

しかしこの数週間、そういう贅沢は言っていられないことになった。ゲストと直接対話して配信するというオプションは当面使えない。そこで自他の安全を確保しつつ高品質のポッドキャストを作るために、かなりの時間を費やしてハード、ソフトを研究してみた。長めの記事だが、自宅でポッドキャストを始めようと考えている大勢の人々のヒントになれば幸いだ。

ただしいくつかの注意点がある。まずはデマや未確認情報を拡散するなというCDCの警告だ。新型コロナウイルスの影響は広汎で職場、私生活をはじめとして社会生活全般に及ぶ。そうした変化に不用意に触れることはCDCの警告を無視することになる。また退屈した人間が他の人間を退屈に巻き込むつもりなのか、YouTubeにはくだらないポッドキャストが山ほど投稿されている。私は以前から多数のポッドキャストが生まれるのは良いことだと主張してきたが、パンデミックはその主張を検証してくれるものになるでしょう。

2番目の注意点は、これは他のハウツー記事でも同様だが、あくまで現在の状況で私個人にとって最適な解だという点だ。何が最適なのかは、人や状況によって異なる。

ポッドキャストを配信していて気づいた点の1つは視聴者は寛容だということだ。CNNを見ているときと不安定なSkypeを介して専門家の意見を聞いているときでは期待のレベルが違う。ウェブカメラの質が悪いことなどポッドキャストの視聴者は気にしない。そうであっても利用できるリソースで可能なかぎり最高の品質を配信したいと考えるのは当然だ。

私はジャーナリストという職業がら、多数のハードウェアをテストできた。そこで高価なスタジオをレンタルしなくても現在市場に出まわっているUSBマイクに十分な能力があることが確認できた。

BlueのYetiといったマイクはポッドキャストやリモートインタビュー用として十分な品質があると一般に認められている。しかしポッドキャスト、YouTubeチャンネルの利用が拡大するにつれて多数のメーカーがこの分野に参入している。

現在、AKGのLyra(写真左)を使っているが、音質に十分満足している。価格はBlueのYetiと同程度、Yeti Pro(写真右)より100ドル(約1万1100円)ほど安い。Lyraのデザインは非常にスマートだが、私の環境ではやや浮いて見える。Lyraには4つ集音パターン(フロント、フロント&バック、タイトステレオ、ワイドステレオ)があり、どれに設定されているか前面のランプでひと目でわかる。コントロールは非常にシンプルでわかりやすい。せっかく定評あるUSBマイクを使いながら大勢のユーチューバーがマイクの設定を間違えて非常に品質の悪い音声を配信していることを考えるとこれはこの点は大きなプラスだ。

もうひとつ、マイク用のウィンドスクリーンを買っておくことを強く勧める。上の写真でLyraにクリップで取り付けてあるのはEJT Upgraded Microphone Pop Filterだ。サイドに幅を調整できる万力タイプのグリップがあり、さまざまなマイクに取り付けることができる。10ドル(約1100円)以下の買い物だが安いウィンドスクリーンでも音質に大きな違いが出る。ポッドキャストを編集してみれば、不愉快な息継ぎ音や風音を除く手間が格段に減っていることに驚くはずだ。

次点にRodeのNT-USB Miniを挙げておく必要がある。ミニサイズなのに強力でサウンドは驚くほど良い。もっともRodeの製品だから当然かもしれないが、99ドル(約1万1000円)という低価格はやはりすばらしい。Blue Raspberryと並んで携帯性が高い低価格マイクの定番だ。また旅行が可能になったら出先に持っていくマイクにはこれを選ぼうと思っている。マイクは付属のデスクトップスタンドに磁石で吸着するようになっており、外してアームや別のスタンドに取り付けるのが非常に簡単だ。

ただし私がどうしても手放せない重要なBlueのプロダクトが1つある。私はポッドキャストの録音では耳をすっぽり覆うタイプのヘッドフォンを使う。BlueのMo-Fiは大型で頑丈でまさにこの目的に理想的だ。着け心地のいい大型のイヤーパッドは環境雑音をきれいにブロックしてくれる(私はニューヨークのアパートメントビルに住んでいる)。たいていの場合、手近にあるヘッドフォンで用が足りはずだが、これから本格的にポッドキャストを始めるのであれば良質のヘッドフォンに投資することを考えてもいいだろう。

ポッドキャスト用のカメラはMac内蔵のウェブカメラを使っている。上でも言ったように視聴者は画質には寛容だ。それでもポッドキャストを制作したら公開する前にカメラのテストをしておくことを強く勧める。まずフレーム内に何が写っているかを確認する。カメラアングルを変えることができるなら、いろいろ動かして最適な背景を探してみよう。ただしカメラアングル以上に重要なのは照明だ。

正直、私自身まだ照明のセットアップに納得できていない。現状は……「間にあわせ」に近いかもしれない。

Macの上の天井のソケットに取り付けた小さいベッドサイドランプだ。ビデオで私の眼鏡に反射するのが見えるだろう。

ソフトウェアではいくつかのオプションを使っている。オーディオのみのポッドキャストならZencastrがやはり優れている。ポッドキャスト用に最適化されており、複数トラックを個別、同時にクラウドへアップできる。同社は今回のパンデミックに対応して無料枠を大幅に拡大し、ポッドキャスティングの普及を図っている。

現在製作中で未発表の分も含めてビデオポッドキャストの場合、録音はAudacityでローカルに行いSkypeを使ってアップロードしている。Zencasterは優れたアプリだが、共同ホストの1人に接続問題を起こすのでもっと伝統的なやり方をしているわけだ。

パンデミックになってビデオポッドキャストのオプションをあれこれ試しているが、今のところ気に入っているのはZoomとYouTube Liveの組み合わせだ。しかしZoomからYouTubeまたはFacebookでダイレクトにストリーミングするには、有料のアカウントを取得する必要がある。最も安いプランが月額14ドル(日本では2000円/月)だ。私は少なくとも新型コロナウイルスの流行がひと段落するまで有料プランにしておくつもりだ。

Zoomの良い点は参加者がログインすべき時間を指定できる点だ。プレミアムメンバーになれば参加者はダイアルアップでオーディオだけの参加もできる。世界に向けてライブ配信する前に、テストビデオを非公開で配信しすべてが正常に稼働していることを確認しておくことを強くお勧めしておきたい。予定されているゲストには開始時刻の少なくとも数分前に参加をしてもらいデバイス、ソフトなどの動作を確認するようにしよう。

Zoomがユーザーの YouTubeアカウントに接続するために少なくとも24時間は必要だ。トラブルシューティングの時間も考えててライブ配信の始める数日前にZoomの設定を済ませておく。

ライブになってからは配信状況のモニターはYouTube Studioを利用する。視聴者からコメントの処理なども簡単だ。私はポッドキャストの時間を通してギャラリーモードに設定している。これは参加者全員が常時ディスプレイに表示されているので面倒な操作が不要だ。アーティストがゲストで音楽のパフォーマンスがある場合は単一カメラモードとし、その参加者のカメラに切り替えている。もっと高額のプランに切り替えると画面に透かしロゴが入るが、機能に問題はない。サービスには基本的なエディターが含まれており、配信の開始、終了部分トリミングすることができる。

さらに洗練された手法もあるのだろうが、前にも述べたようにポッドキャストであれば視聴者はあまり細かい点は気にしない。例えオンラインにせよ、誰かが仲間になって楽しく時間が過ごせればそれだけで喜んでくれる視聴者も大勢いるのだ。

最近公開したポッドキャスト:

I’m Listening’s Anita Flores
Let’s Talk About Cats’ Mary Phillips-Sandy and Lizzie Jacobs
Broken Record’s Justin Richmond
Criminal/This Is Love’s Lauren Spohrer
Jeffrey Cranor of Welcome to Night Vale
Jesse Thorn of Bullseye
Ben Lindbergh of Effectively Wild
My own podcast, RiYL

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook

HuluとAmazon PrimeがNetflixの牙城に挑む

Netflixは、eMarketerの最新レポートによると今もサブスクリプション型ストリーミングサービスのナンバー1だが、Amazon Prime、Huluなどのライバルもシェアに食い込み始めている。

同社のアナリストは、今年中に1億8250万人の米国消費者がストリーミングビデオサービスを定期購読すると予測している。これは人口の53.3%に相当する。Netflixは2019年に1億5880万人の視聴者を得てトップの座を守りなお成長を続けているが、定期購入者の総数が増加する中で市場シェアは減少するだろうとレポートに書かれている。

Netflixは、Q2の米国ユーザー数が10年近くぶりに 減少した発表したが、その後も順調な成長(前年比7.6%)を続けるだろうとeMarketerは言っている。これは「Orange Is the New Black」や「Stranger Things」などの人気番組の新シリーズ、アカデミー賞受賞監督マーティン・スコセッシ監督の新作「The Irishman」などが後押ししているのだろう。

しかしもはやNetflixはストリーミングビデオで唯一の選択肢ではない。2014年に90%だった市場シェアは、2019年に87%に減少する見込みだ。

1 1市場シェアの減少は、HuluやPrime Videoといったライバルの進出が理由だ。

例えば、Huluは今年米国内視聴者数が7580万人(シェア41.5%)に達した。視聴者数は2019年に17.5%増加したが、2018年の49.6%という成長率には及ばなかった。

AmazonのPrime Videoは、今も米国第2位のストリーミングビデオサービスであり、2019年の視聴者数は9650万人(シェア52.9%)、前年比8.8%増だった。

eMarketerは、Prime Videoの利用者が2021年に米国人口の3分の1に達すると予測している。

2Netflixの市場シェア独占は、新たな脅威にも直面している。中でも DisneyとHulu、ESPNのセットは、Netflixの米国標準価格と同じ料金で提供されている。

「Netflixはここ数年強力なライバルと視聴者を奪いあっており、ストリーミングビデオプラットフォームだけでなく、有料テレビやビデオゲームからの挑戦もある」とeMarketerの予測アナリスト Eric Haggstrom(エリック・ハグストローム)氏は「真の『Netflixキラー』は存在しないが、Disneyの『Disney+、Hulu、ESPN+』のセットはそれに近いところまで来ている。現在のNetflixの答えは、同サービスを市場リーダーに押し上げた戦略を続けること。すなわちライセンス、オリジナルのコンテンツに他社よりも多くつぎ込み、競争力のある価格を消費者に提供することだ」と語る。

新たなライバルはDisneyだけでもない。

Apple TV+は今年中のサービス開始を見込んでおり、コンテンツに60億ドル費やすと言われている。当初報じられた10億ドルをはるかに上回る金額だ。月額使用料も9.99ドルという競争力ある価格帯になるらしい。

NBC UniversalとAT&T Warner Mediaも市場参入を目指している。後者はHBO Maxと組む。また、CBSとViacomの合併に続き、新会社は自社プラットフォームであるCBS All Accessと広告支援型サービスのPluto TV に新たに獲得したコンテンツを加えて強化しようとしている。

「ストリーミングビデオの市場は、ハイエンドのオリジナルコンテンツと従来の有料TVに比べて安い月額使用料によって爆発的に広がった」とハグストローム氏は指摘する。「新しい番組や映画に対する視聴者の強い欲求が、NetflixやHulu、Amazon Prime Videoなどの視聴者を拡大し、市場全体を広げた」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MITは色々なデバイスに同時に高品質のビデオストリームを配信する方法を開発

画像:Getty Images/aurielaki

自宅ネットワークの接続状況と世帯の規模にもよるが、ビデオストリーミングはまったく悲惨な状態になることもある。バンド幅には上限があるからだ。みんながそこに群がって、できるだけ多くのデータをもぎ取り、カクカクした映像にならないようにしたがる。同時に要求される複数のストリームにバンド幅を分配するやり方をコントロールする新たな手法があれば、世界に平和をもたらすかもしれない。山ほどのデバイスが1つの接続を共有して、すべて同時にビデオをストリーミングしようとしているような状況に対処できるとしたら。

MITのコンピュータ科学とAI研究室(Computer Science and Artificial Intelligence Lab)の研究者は、「Minerva(ミネルバ)」と呼ばれるシステムを開発した。バッファリングに起因するカクカクを防ぎ、ストリームがダウングレードされてしまうことによるギザギザを最小限にとどめようというものだ。NetflixやHuluのようなストリーミングサービスには、基本的に大きな効果が見込めるという。特に、一軒の家に住む複数の家族が同時にビデオを観ようとしている場合に有効だ。ただし、このシステムの基盤となっている技術は、一軒の家に限らず、近隣の家庭、さらには地域全体など、より広範囲にも適用できる。理想的な状態に届かないストリーミング環境の問題を緩和する効果が期待できるのだ。

Minervaは、1つのネットワークからストリーミングを受け取ろうとするさまざまなデバイスの、それぞれ異なるニーズを考慮する。たとえば、フルHDさえ表示できないディスプレイの古いスマートフォンと、4KのApple TVを同列に扱うようなことはしない。またMinervaは、コンテンツの性質も考慮する。たとえば、スポーツのライブ中継を高品質で観ようとすれば、子供向けのアニメのTV番組などとは比べものにならないほど、多大なバンド幅を要求する。これは重要なポイントだ。

というわけで、ビデオは、実際のニーズに従って視聴者に分配される。けっしてどんなデバイスにも均等に割り振られるわけではない。さらにMinervaシステムは、ストリームの配信中にも変化するニーズに対応して、分配する速度を最適化し続ける。

実際の環境でのテストでMinervaは、720pが1080pになったのに相当するほどのビデオ品質の向上を、全体の3分の1ほどの時間、実現できた。再バッファリングの必要性も、ほぼ50%近くまで低減できた。これは、実際にビデオストリーミングのコンテンツをシームレスに連続再生することを考えた場合、非常に大きな改善と言える。こうしたことを、ネットワークのインフラに対する根本的な変更なしに実現できるという点も優れている。つまり、ストリーミングのプロバイダーは、ユーザー側には何の変更も加えることなく、このシステムを採用し、導入できるというわけだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)