MUGENUP、クラウドソーシングのノウハウ生かした進行管理ツール「セーブポイント」を公開

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ゲーム向けのイラストやマンガをはじめとしたクリエイティブをクラウドソーシングで制作するMUGENUP。同社は5月14日、制作管理ツール「セーブポイント」の提供を開始した。すでに11社への導入が決まっており、2015年度内にゲーム会社を中心として100社への導入を目指すとしている。アカウントやストレージ容量により、無料版や月額5万円のスタンダード版を用意。大規模組織向けにカスタマイズしたビジネス版も提供予定。6月末までに限定して、通常の無料版よりストレージ容量などを追加した「リリースキャンペーンプラン」を無料で提供する。

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現在2万6000人のクリエーターをネットワーク化し、イラストなどをクラウドソーシングで制作しているMUGENUP。同社では「WORK STATION」と呼ぶ社内向けの制作管理ツールを利用することで短期間でクリエイティブを大量制作する体制を築いてきた。

イラストを制作するには、原画、塗りなど複数の工程があるが、MUGENUPではこの工程ごとに分業するかたちでクリエーターへの発注を行っている。

ただしその管理を、Excelで作ったガントチャートだけで行うには限界がある。そこでWORK STATIONを開発し、少人数のディレクターで膨大なクリエーターから最適な人材を配置し、進行を管理し…ということを実現してきたのだそうだ。MUGENUPによると、ディレクター1人あたりでハンドリングできる業務量は、ツール導入前と比較して200〜400%も増加するという。同社では、1人のディレクターが月間1200枚のイラストを進行・納品した実績があるそうだ。

 

その実績もあって、社外からWORK STATIONを自社に導入したいという声は何度もあったんだとか。セーブポイントはそういったニーズから生まれた、WORK STATIONをベースにした製品なのだそう。

セーブポイントでは、外注先の制作会社や個人クリエイターの一括管理にはじまり、データ保存とバージョン管理、納期のアラートやガントチャートなどの機能を提供する。

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MUGENUP CTOの伊藤勝悟氏に聞いたところ、これまでコミュニケーションはメールやSkype、チャットワーク、スケジュールやステータス管理はExcelやGoogle ドキュメント、ファイルの受け渡しはメールやファイル転送サービスといったように、それぞれ機能ごとに別々のツールを使っていた制作会社が多いそうで、分散されていた機能を一元管理できるという点で導入企業からの評価は高いという。

現在はイラストや漫画といった2Dのクリエイティブに特化しているそうだが、今後は3Dやアニメーションなどの制作環境にも対応していく予定だ。

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役者の動きをリアルタイムに3Dアニメ化、MUGENUPは「和製Pixarを目指す」

ゲームイラストのクラウドソーシングを手がけるMUGENUP。2013年3月にクラウドソーシングの受託者(クリエーター)と社内ディレクター間でのチャットやファイル、工程などを一元管理するツール「MUGENUP WORK STATION」を開発することで、約1万7000人のクリエーターで数多くの案件を管理できる体制を整えている同社だが、2014年はそのクラウドソーシングのノウハウをイラスト以外の分野に横展開をすると語っていた。

その第1弾として同社は、クラウドソーシングを使ったゲーム攻略サイト「みなゲー」を1月に公開している。こちらに関してはまだ状況は伝わってこないが、第2弾の事業が展開されている。

MUGENUPは3月24日より、ディー・エヌ・エー(DeNA)が提供するライブキャスティングサービス「Showroom」にて、ライブコミュニケーティングアニメーション 「こちら娘島高等学校ほーそお部」を開始する。配信時間は毎週月曜の午後9時から9時30分まで。

ライブコミュニケーティングアニメーションと聞くと何のことか? と思うかもしれない。これは、モーションキャプチャーや画像解析技術を組み合わせることで、役者の動きをリアルタイムに3Dアニメ化するというもの。リアルタイムにアニメ化されるので、ユーザーとのインタラクティブな会話も実現する。言葉で説明するよりも、MUGENUPが提供するイメージビデオを見てもらう方が早いだろう。なおアニメのキャラクターや3Dモデルもクラウドソーシングを使って作成しており、キャラクターの衣装変更なども素早く対応できるのだという。

「日本はクリエイティブを発信することについて力があるのに、みんなテクノロジーに目を向けない。手書きには手書きの良さがあるがそれだけではないのではないか」——MUGENUP代表取締役社長の一岡亮大氏はこう語る。

クラウドソーシングで2Dのイラストに加えて3Dデータの取り扱いもはじめていたMUGENUP。3Dデータを使ったサービスの可能性を考えている中でShowroomのリリースを知り、すぐにDeNAにコンタクトをとったのだという。「ソーシャルゲームの次の“波”は動画しかないと思っていた。今がその潮目。動画で、課金の機能を持っているプラットフォームでコンテンツプロバイダーになろうと思った。テクノロジーで和製Pixarを目指す」(一岡氏)

システムに関しては詳細は公開されていないが、ゲームエンジンのUnityを利用し、モーションセンサーなどもバルク品などを組み合わせているとのことで、「制作期間は企画から2カ月ほど。スピードは通常のアニメーションの3分の1、費用は10分の1程度になる」(MUGENUP執行役員CCO エンターテイメント事業部部長の西山理彦氏)だという。

最近では、YouTubeで自ら企画、出演した動画を配信する「YouTuber」と呼ばれる人たちも登場しており、uuumのように、そのマネジメントを手がけるスタートアップも登場している。一岡氏はライブコミュニケーティングアニメーションがYouTuberらと本質的には同じとしながらも、「属人的ではなく、企画からコンテンツを作れるので広がりがある。さらに言えばキャラクターなのでリスクコントロールもしやすいと考えている」と強みを語る。すでにタイアップやOEMの打診などもあるという。

マネタイズについては未定だが、3Dデータをフィギュア化することなども含めて「ファンの数に応じた回収方法はあると思っている」(一岡氏)という。制作を手がける西山氏も「艦これ(艦隊これくしょん〜艦これ〜:DMM.comとKADOKAWA GAMESのブラウザゲーム)のようにネット発のIPが出てきた。まずはやってみる、やり続ける」と語っている。

実は僕は、この取材にあわせて少しだけではあるが、テスト配信を見る機会を得た。3Dアニメの動きと、役者の会話は見事に一致して配信されている様には大いに驚いた。時間のある方は、まず今夜その配信を見てみてはいかがだろうか。

左からMUGENUP代表取締役社長の一岡亮大氏と執行役員CCO エンターテイメント事業部部長の西山理彦氏


イラスト制作クラウドソーシングのMUGENUPが1億3000万円を調達、3Dデータ制作効率化も

ゲームアセット等のクラウドソーシングサービスを運営しているMUGENUPが1億3,000万円の資金調達を実施した。MUGENUPにとってシリーズBとなるこのラウンドにはIGPI(経営共創基盤)、SMBCベンチャーキャピタルの2社が参加した。

MUGENUPは主にゲーム内のキャラクターのイラストを取り扱っているサービスでゲーム制作会社とクリエイターを仲介する役割を担っている。現在このサービスに登録しているクリエイターは約1万人となっている。

MUGENUPが特徴的なのは発注者とクリエイターの間に入り、必ず仲介している点だ。クリエイターが自身のポートフォリオを提示するとMUGENUPがスキルのレベルをチェックし、彼らのスキルに応じてタグを登録しておく。そして、発注(コンペ)の際にイラストにも必要なスキルなどのタグが設定されており、クリエイターとイラストのタグをマッチングさせることで受注者を決定させているという。

また、クリエイターとMUGENUPの担当者がコミュニケーションを取るためのグループチャットも用意されており、このチャット上でイラストに赤入れできる機能などを備えている。このように2つシステム–クラウドソーシング、制作プラットフォーム(グループチャット)–を展開している。

だが、ここまでクラウドソーシングサービスを運営するスタートアップだとご紹介してきたが、MUGENUP代表取締役の一岡亮大氏は「クラウドソーシングの会社でも、イラスト制作の会社でもなく、デザインデータを効率よく大量に作ることをテーマにしている会社」だという。

このテーマの入り口の1つとしてクラウドソーシングサービスを提供してきたそうだ。現在MUGENUPでは2Dのイラストが主であるが、最近では3Dのデータも扱っておりグループチャット上で2Dと同様に3Dデータも確認、赤入れできるシステムの構築も完了したところだ。

すでにフィギュア作成も進んでいるようで、今後はこのような需要が増すと予想している。このような3Dデータも含めデザインデータを解析し、市場を効率化していくことが目標だと一岡氏は語る。

というのも、例えばフィギュアを3Dプリンタで出力する際に、キャラクターの羽と体の素材が違う場合などは収縮率も調整しなければならず、その微妙な調整は各社の職人だけが知っている状態であり、非常に効率が悪いそうだ。そのためMUGENUPでは、このようなデータを蓄積/分析し、共有することで効率化を図りたいという。

今後も現状のサービスはもちろん継続するが、今回調達した資金はこうしたデータ解析や3Dデータを扱えるクリエイター確保のためのマーケティングに投下していくとのこと。