Microsoft、Visual Studioフルバージョンを5人チームまで完全無料化

今日(米国時間11/12)、Microsoftは Community 2013エディションの Visual Studioリリースした。これは数年前から提供されている多くの制限のかかったVisual Studio Expressを置き換えるプロダクトだ。

Visual Studio ExpressとVisual Studio 2013 Community Editionは比べ物にならないほど大きな差がある。新バージョンはエクステンションをサポートするので、Visual Studioエコシステムに存在する5100以上の エクステンションが利用できる

ひとことで言えば、新しいコミュニティー・エディションはVisual Studioフルバージョンの無制限、無料版ということだ。ただひとつの条件は、5人以下のチームでしか使えず、エンタープライズでは利用できないことだけだ。しかもユーザーは商用、非商用を含めてあらゆるアプリケーションの開発に用いることができる。

Microsoftのデベロッパー事業部を担当するコーポレート・バイスプレジデントのS. “Soma” Somasegarは先月行った私の取材に対して、「一言でいえば、われわれはVisual Studioへのアクセスを大きく拡大するということだ。Community Editionはウェブ、モバイルデバイス、デスクトップ、クラウドを含めどんな種類のアプリでも開発できるフルバージョンのVisual Studioだ。Visual Studioエコシステムのの豊富なエクステンション資産を完全に利用できる」と語った。

つまりデベロッパーは、Peek、Code Analysis、Graphical Debuggingを始め、ありとあらゆるVisual Studioツールが利用できる。

今回の決定でVisual Studioは基本的にフリームアム・モデルとなった。Microsoftは今日、 Visual Studio Online (これにも数多くのアップデートが加えられた)に新しい有料ツールを公開した。Microsofttはこれらのプロダクトから収益を上げる方向に舵を切った。Visual Studio IDEがそのゲートウェイになる。無料化でVisual Studioを利用するデベロッパーが大きく増えれば、MSDNのサブスクリプションを始めとして有料プロダクトの利用者も増えるという目論見だ。

当面Express Editionの公開も続けられるが、最終的にはCommunity Editionが取って代わることになる。

私はMicrosoftのクラウドおよびエンタープライズ担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのScott Guthrieに電話で取材した。「Community Editionの公開で、クレジットカードを取り出したり、特別プログラムに参加する手続きをせずに誰でもVisual Studioを使えるようになった」とGuthrieは説明し、「Visual studioは誰からも賞賛されているが、大学生や大学を出たばかりのデベロッパーは金を払いたがらないからね」とジョークを飛ばした。「そこで、さらに多くのデベロッパーがこのプロダクトを毎日使うようになるよう、われわれは敷居を大きく下げることにした」のだという。

Visual Studio Onlineの無料版とAzureの無料版を組み合わせれば、商用版の本格的モバイル・アプリ、ウェブアプリが完全に無料に開発できるようになった。

〔Microsoftは同時に.NETのオープンソース化とMac、Linuxへの移植を発表した。〕

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Microsoft、.NETをMac、Linuxに移植、サーバ・サイドをオープンソース化すると発表

Microsoftの.NETフレームワークはこの12年にわたっってWindowsでアプリケーションを開発するデベロッパーのプログラミング・モデルとなってきた。今日(米国時間11/12)、Microsoftはデベロッパー・ツールのクロスプラットフォーム化の努力を一歩押し進め、近く.NETをMacとLinuxに移植することを発表した。同時に、.NETのサーバ・サイド(クライアントの.NETではない)のコア・スタックを次のバージョンからオープンソース化するという。

Microsoftはすでに今年に入って.NETコンパイラをオープンソース化しているから、今回の決断もまったくの不意打ちというわけではない。それでも多くの専門家は“Microsoft”という言葉と“オープンソース”という言葉が同一の文章の中で使われることに驚きを隠せないかもしれない。

Microsoftのデベロッパー事業部を担当するコーポレート・バイスプレジデントのS. “Soma” Somasegarは私の取材に対して、「.NETフレームワークを利用してプログラミングを行っているデベロッパーは600万人程度だ。普及の点でわれわれは大成功を収めている」と述べた。問題はこの成功をベースにさらに前進するにはどうしたらよいかだ。

しかし、サティヤ・ナデラがCEOに就任した後のMicrosoftの動きをよく観察すれば、今日の決定も納得できるだろう。たとえば、今年のBuildデベロッパー・カンファレンスでMicrosoftは.NET Foundation の設立を発表しているが、この組織が今回のオープンソース化の受け皿となった。

適切な判断といえるだろうが、MicrosoftはXamarin社と同社が後援するMonoコミュニティと協力していくという。XamarinはすでにC#を用いたオープンソースでクロスプラットフォームの.NETフレームワークを開発し多くのデベロッパーの支持を得ている。Somasegarは私に「今回の発表の後、オープンソース化の作業については、数ヶ月かけてMonoコミュニティーと協力していく。われわれはXamarinと非常に密接な協力関係にある」と語った。

Somasegarは「クロスプラットフォーム化とオープンソース化は.NETにとって将来へ向けての大きな一歩だ。Microsoftは.NETをさらに普及させたい。そのための最善の方法は新たなプラットフォームへと拡張することだ」と述べた。

数日前、私はMicrosoftのクラウドおよびエンタープライズ担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのScott Guthrieを電話で取材したが、彼も同じ趣旨のことを述べ、「われわれはデベロッパーからしばしばく『.NETはすばらしいプロダクトだと思うが、クローズドでWindowsしかサポートしていないから使わない』という声を聞いていた。水曜日の発表を聞けば.NETを使わない理由がすべて消滅したと知るだろう」と語った。

SomasegarはこれによってMicrosoftのパートナーには多くのチャンスが訪れることを強調した。たとえばDockerの事業開発とテクニカル・アライアンスの責任者、Nick Stinematesは「われわれのDockerオープン・プラットフォームの最大の価値は、 Dockerコンテナを利用してさまざまなインフラにDockerアプリケーションを移植できるポータビリティーの高さにある。オープンソースの.NETランイタイムをすべての主要なOSプラットフォームに提供するということは、Microsofがポータビリティーの概念をアプリケーション・プラットフォームそのものにまで拡大したことを意味する」というコメントを発表してている。

Microsoftはオープンソース・コミュニティーとの会話を開始する手始めとして.NETのコードのGitHubレポジトリを開設する計画だ。最終プロダクトがどのようなものになるかまだ分からないが、Somasegarは「近く.NETアプリをMicrosoft AzureのLinuxのDockerコンテナで動かせるようになる」と述べた。

これにともなって、デベロッパーを法的紛争から保護するため、MicrosoftはMonoプロジェクトとそのユーザーすべてを対象とした新たな特許特約を公表した。

企業が主要プロジェクトをオープンソース化すると、ユーザーは「企業がそのプロジェクトのサポートを止める前触れではないか?」と不安になるのが常だが、SomasegarもGuthrieも「そういう考えは毛頭ない」と強く保証した。

これほど大きな発表であれば、読者には質問したいことも山のようにあるだろう。Somasegarは直接質問に答えると約束してくれた。〔元記事の〕コメント欄に質問を書き込んでいただきたい。太平洋時間11:30amから受け付ける。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+