日本でも販売されているスマートグラスのNrealが1年間で約244.2億円を調達

中国のARスタートアップ「Nreal」(エンリアル)が好調だ。軽量で明るいスマートグラスを作ってARの普及を目指す同社はシリーズC拡張ラウンドで6000万ドル(約73億2600万円)を調達し、この1年間で2億ドル(約244億2000万円)の大型調達を果たした。

今回のラウンドを主導したのはAlibaba(アリババ)だ。Alibabaは投資に関しては最大のライバルであるTencent(テンセント)よりも、これまでずっと実用性を重視しつつTencentほど積極的ではなかった。Alibabaは、その巨大な小売エコシステムを補完するピースになり得るスタートアップの経営権に関わる持分を獲得すると言われている。

しかしNrealに対するAlibabaの投資は純粋に資金面でのことだ。理論的には、両者が戦略的なシナジーを生み出す可能性はある。Alibabaが自社のゲームやビデオのストリーミング部門とNrealの協業に乗り出したり、最近音声コントロール付きヘルメットを着用するようになった膨大な数のフードデリバリーのライダー向けにスマートグラスをNrealに開発してもらうことは容易に想像できる。しかし中国では独占禁止法の取り締まりが厳しくなり、中国のテック大手が不公正な競争を助長すると受け取られかねない投資に注意を払うようになっていることは間違いない。

それに、Magic Leap(マジックリープ)の従業員だったChi Xu(徐驰、カイ・シュイ)氏が創業したNrealには、すでに注目すべきパートナーたちがいる。Nrealの戦略的投資家には、中国の新興EV企業のNio(ニーオ)、TikTok(ティックトック)の中国での最大のライバルであるショートビデオアプリのKuaishou(快手)、Baidu(百度)が支援するビデオストリーミングプラットフォームのiQIYI(爱奇艺)などがある。Qualcomm(クアルコム)は投資はしていないが最先端のSnapdragonプロセッサを供給し、開発者エコシステムの構築に関して緊密に連携している。著名な機関投資家であるSequoia Capital China(セコイアキャピタルチャイナ)、Jack Ma(ジャック・マー)氏のYunfeng Capital(雲鋒基金)、Xiaomi(シャオミ)の創業者Lei Jun(レイ・ジュン)氏のShunwei Capital(順為資本)の他、プライベートエクイティ大手のHillhouse(高瓴資本)、CPE(CPE源峰)、CICC Capital(中金資本)もNrealを支援している。

Nrealは中国を拠点としているが、中国市場をターゲットにするのではなく、消費者の購入意欲を日本や米国など海外の6カ国で最初にテストした。同社はデバイスの販売に関して各国の通信事業者の協力を得ている。例えば米国ではVerizon(ベライゾン)がNrealの複合現実グラスであるNrealLightの販売に協力している。NrealLightは600ドル(約7万3000円、日本ではauオンラインショップで6万9799円)と比較的手頃な価格で、5G対応のAndroidデバイスに接続できる。

Nrealは今回調達した資金で、ついに2022年に中国での事業に乗り出す。また今回の資金は研究開発や、ユーザー獲得に欠かせないコンテンツやアプリのエコシステムの成長にも使われる。

画像クレジット:Nreal

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

Nreal

メガネ型ディスプレイのNrealが、新モデル「Nreal Air」(エンリアル エアー)を3月4日にNTTドコモとKDDIから発売すると発表しました。メーカー希望小売価格は4万9800円ですが、ドコモでは3万9800円、auでも3万9799円で予約を受付中。なお、Nreal Airの一般販売は、日本が世界初になるとのことです。

Nreal Airは、2021年10月に発表されていたもの。動画の視聴に特化したARグラスで、見た目は通常のサングラスにかなり近い印象です。カメラ機能などを排し、シンプルな機能となったため、約76gと軽量になったのも特徴です。

映像は、ARグラス越しに4mで130インチ、6mで201インチに相当で表示されます。また、ツルの部分にスピーカーも搭載しており、「低音強調アルゴリズムとノイズキャンセリングにより、まるで仮想の専用 IMAXシアターにいるかのように、エンターテインメントの臨場感を高めます」と説明されています。

スタンドアロン型ではなく、スマートフォンとUSB Type-Cで接続して利用します。このため、利用するには、USB-Cポートを備え、Display Port(Alternate mode)に対応していることが条件となります。ただ、拡張性を高めるアクセサリとして、「Nreal Streaming Box」も発売され、これを利用すれば、Miracastに対応したスマートフォンならNreal Airを利用可能となります。

重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

Nreal

Nreal AirとNreal Streaming BoxをUSBで接続。スマートフォンはNreal Streaming Boxとワイヤレス(Miracast)で接続することで、スマートフォン上のコンテンツをNreal Airにミラーリングできます。

(Source:USB-IFNreal(PR Times)ドコモauEngadget日本版より転載)

Qualcomm製品を搭載した中国の複合現実スタートアップNrealが42.5億円を調達

中国で最も注目されているMR(複合現実)のスタートアップであるNrealが、高名な投資家たちのグループからシリーズBで4000万ドル(約42億5000万円)を調達した。これにより同社のポータブル拡張ヘッドセット(未訳記事)の普及が、さらに進むと期待されている。

中国版TikTokのDouyinとライバルであるKuaishouがこのラウンドをリードしたことで、既存の投資家である中国のNetflixと呼ばれるiQiyiに続きNrealとの連携を確立するビデオプラットフォームがまた1つ増えた。世界中の他の主要な動画ストリーミングサイトと同様に、KuaishouとiQiyiは拡張現実コンテンツの制作に取り組んでおり、ハードウェアパートナーの確保は彼らの初期的な実験に役立つことは間違いない。

この他にも、国有金融持株グループのShanghai International Groupや中国の大手映画スタジオであるHengdian Groupを投資家とするGP Capital、国有通信機器メーカーのChina Electronics Corporationと国有の投資銀行である中国国際金融(China International Capital Corporation)が設立したCCEIF Fund、著名なプライベートエクイティ会社のHillhouse Capitalが設立したアーリーステージファンドであるGL VenturesやSequoia Capital Chinaといった、業界の豊富な資金力を持つ企業がこのラウンドに参加している。

2019年初めにNrealはXiaomi創業者のベンチャーファンドであるShunwei CapitalからシリーズAの1500万ドル(約15億9000万円)を調達した。当時、私が書いた(未訳記事)ようにAR、VR、MR、XRは、XiaomiのIoT帝国にとって重要なピースになることは間違いない。スマートフォンの超大手企業であるXiaomiが将来的にいずれNrealにスマートグラスを求めるであろうことは、火を見るよりも明らかだ。

創業3年の企業であるNrealにとって、その他の重要なパートナーはQualcommだ。このチップメーカーはは中国における5Gの展開に積極的に貢献し、中国の大手スマートフォンメーカーの次世代ハンドセットに採用されている(Qualcommリリース)。Nrealの軽量MRグラスに対してもクアルコムはSnapdragonプロセッサーを供給し、それらが容易にAndroidスマートフォンに接続できるようにした。

ARとVRに関するコンサルタントであるSeewan Toong(シーワン・トン)氏は「クアルコムと親密になったNrealは同社の顧客ネットワークにアクセスできるようになっており、その中には通信企業もいる」と語る。

それどころかこの複合現実技術を開発するNrealはすでに日本の通信企業であるKDDIと契約(KDDIリリース)し、韓国ではLGの携帯キャリアであるLG Uplus Corp(The Korea Herald記事)と提携している。

今回の最新ラウンドで、Nrealの総調達額は7000万ドル(約74億4000万円)を超え、同社によると5G時代における複合現実技術の大量採用が加速されるという。

Nrealがどのようにしてその約束を果たし、大規模でユーザーを確保し、大手テクノロジー企業の複合現実におけるのシンボルのような役割を超えていくのかは、今後の課題となっている。

これまでのところ、大手通信企業との取引はNrealと法定で争っていた(Engadget記事)Magic Leapの取引を思い出させるが、中国の企業はまだ現金を使い果たしていないように見える。その一方で、問題を抱えた米国企業は、消費者市場の開拓に失敗した後、エンタープライズ指向へと方向を変えている(未訳記事)。

「Nrealは忍耐づよく、大量販売ができることを示すために急いでいるわけではない。現在、同社はその技術にユーザーシナリオがあることを証明しようとしている」とトン氏はいう。

カテゴリー:VR / AR / MR

タグ:中国 Nreal 資金調達

画像クレジット: Nreal

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa