クレジットカード決済のSquareがスペインのP2P決済アプリVerseを買収

Square(スクエア)は、ヨーロッパで使えるスペインのピア・ツー・ピアの決済アプリVerse(ヴァース)を買収した(Squareリリース)。条件は非公開だ。Crunchbaseによると、VerseはSpark Capital、eVentures、Greycroft Partnersなどから3760万ドル(約40億円)を調達している。

SquareはCash Appで多くのユーザーを引きつけている。P2P決済アプリのCash Appではユーザーはスマホでお金の送受信が簡単にできる。ただしCash Appは、米国と英国でのみの提供だ。

Verseの買収は、ヨーロッパでSquareの存在感を高めるのにうってつけのようだ。VerseのチームはSquare内のCash App部門に加わる。

Cash AppとVerseの間には多くの類似点がある。Verseの主要機能は、モバイルアプリでお金を送受信できるようにすることだ。ユーザーは一切手数料を払う必要がなく、送受信はわずか数秒で完了する。

Verseのユーザーは電話番号でサインアップできる。つまりアドレスブックに電話番号がある人に送金が可能だ。もしあなたのVerseアカウントに十分な残高がない場合は、アプリはあなたのデビットカードに直接課金できる。そしてVerseアカウントからお金を引き出したい場合は、銀行口座に送金することができる。

また、Splitwiseのようなアプリからのグループ費用を追跡したり、貯蓄口座を開いたり、チケット発行機能を使ってイベントを準備したりできる。

直近では、Verseアカウントから直接お金を使えるVisaデビットカードをスペインで立ち上げた。為替手数料を払う必要はなく、毎月2回まで無料でATM引き出しができる。VerseはVisaの為替レートに準拠している。

Verseはしばらくユーザー数を公開していないが、App Annieによると、現在スペインのApp Store全カテゴリーでのダウンロード数ランキングで247位となっている。P2P決済は小さな企業が多数参入している。例えばフランスのスタートアップLydia(リディア)は、フランスにユーザー300万人を抱える。

「現時点で、我々の優先事項はVerseが引き続き欧州で成功するようにすることだ。Verseは今後も独立して事業を続け、さしあたって既存のプロダクトや顧客オペレーションに何ら変更はない」とSquareは発表文で述べている。

発表文の中で最も重要な表現は「at this point(現時点で)」だ。Squareは壊れていないものには手を加えたくない。しかしVerseが徐々に欧州におけるCash Appになったとしても驚きではない。

画像クレジット:Square

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(翻訳:Mizoguchi

フィンテック系ユニコーン企業TransferWiseが設立6年で黒字化

黒字化を果たしたユニコーン企業ほど珍しいものがあるだろうか? ロンドンを拠点に送金サービスを提供しているTransferWiseは、設立から6年が経過し、遂にこの度”利益を生み出している”状態に到達したと発表した。なお、以前TechCrunchでも報じた通り同社の評価額は11億ドルにのぼると言われている

具体的な数字を見てみると、月々の売上額は800万ポンドに達すると彼らは語っており、ランレートは1億ポンドに到達する勢いだ。また昨年には前年比で150%成長しており、今年の成長幅も同じくらいになると言われている。さらに月々の送金総額は10億ポンドにのぼり、ユーザーはTransferWiseを使うことで、1日あたり150万ポンドの為替手数料を節約できていると同社は話す。

参考までに、TransferWiseの2016年3月期の通期売上は2780万ポンドで、税引前損失が1740万ポンドだった。2017年3月期の業績はまだ発表されていないが、本日の黒字化のニュースを考えると、2016年3月期に比べて税引前損失額はかなり減っていることが予想される。

また、同社はこれまでに合計1億1700万ドル(約9100万ポンド)を調達してきた。主な投資家としては、Andreessen Horowitz、Peter ThielのValar Ventures、Sir Richard Branson、そして最近株主に加わったBaillie Giffordが挙げられる。

「設立からたった6年で損益分岐点に達したということが、私たちのビジネスを支える基盤の強さを物語っています」とTransferWiseの共同ファウンダーでCEOを務めるTaavet Hinrikusは声明の中で語った。「しかし黒字化はスタートに過ぎません。私たちがこれまでに築いてきたユニークなプラットフォームを使って、今後新時代の金融サービスを顧客に提供していくのが楽しみです」

“新時代の金融サービス”というのは気になるポイントだ。というのも、私は彼らがTransferWiseブランドのもと、現状の外国送金サービスを超えて新たな機能やサービスを開発していくと考えているからだ。

電話での取材中、Hinrikusは新しいサービスの詳細には触れなかったが、突っ込んで聞いてみたところ、追加の資金や規制対応が必要になる銀行ライセンス取得の「予定はない」と語った。つまり、しばらくの間TransferWiseがチャレンジャーバンク化することはないということだ。

とは言いつつも、もしも彼らにその気があれば、すぐにでも導入できそうなサービスはいくつかある。まずPayPal傘下のVenmoやBarclays Pingitのサービスのように、同じ国に住むユーザー間でのP2Pペイメントであれば、TransferWiseのインフラを持ってすれば簡単に実現できるだろう。また、海外でも使える為替手数料の安いデビットカードを同社が既に提供していないのも不思議だ。

もしも彼らがデビットカードの発行をはじめるのであれば、RevolutやHinrikus自身も投資しているカード統合アプリCurveをはじめとする、MasterCardの安い為替手数料を利用したサービスと直接競合することになる。

しかしHinrikusに言わせれば、100万人強のユーザーを抱え、信頼度の高い強固なブランドを築き上げてきたTransferWiseの方が、現状のサービスと近い位置(もしくはギリギリのライン上)にある新しいサービスを提供する上で有利なポジションにいる、ということなのだろう。確かに同社は設立当初から、TransferWiseブランドと素晴らしいプロダクトの確立にたっぷりと時間をお金をかけてきた。

競争が激化する中、外国為替はコモディティ化しつつあるとも言える。そこで私は、Hinrikusに過去6年間のTransferWiseの成功にとって、ブランドとプロダクトのどちらが大切だったかを尋ねてみた。すると彼は「それは究極の質問ですね」と答え、いつも通り一旦話を止めて言葉を選びながら「実際にはプロダクトがブランドをつくると考えています。素晴らしいプロダクトがブランド化しない状況の方が考えづらいですからね」と語った。

この点に関連し、彼はイギリスの海外送金市場におけるTransferWiseのシェアは10%程度だと語っており、確かに未だ4大銀行が同市場の約80%を占めているという話もある。しかし見方を変えれば、海外送金という分野ではTransferWiseが大手銀行の半分のシェアを握っているとも言え、既存のプレイヤーがこの状況に気付かないわけがない

「周りを見ると本当にたくさんのフィンテック企業が存在しますが、そのほとんどは従来の銀行を介して自分たちのプロダクトを販売しています」とHinrikusは付け加える。「フィンテック業界では、グローバルに活躍するような企業が今後数社しか出てこないだろうと私は考えており、TransferWiseはそのうちのひとつになれると思っています」

余談だが、先日HinrikusがTechCrunch宛に送った初めてのピッチメールのコピーをツイートしていた。6年以上前のこのメールが、フィンテックユニコーン企業の最初のメディア露出と売上に繋がったのだ。その後彼らが大きく成長し、現在では700人強の従業員を抱え、遂に黒字化を果たしたというのは感慨深いものだ。

Steve O’Hear(@sohear)
テック系メディアの記者の中で、恐らく一番初めにTransferWiseに関する記事を書いた私ですが、その記事が彼らにとって初となる1000ポンドの送金に繋がったという話を聞きました。

Taavet Hinrikus (@taavet)
@sohearあなたが最初の記者でしたし、いつもそのことをありがたく思っています。添付画像のメールがその証拠です。CC@andruspurde

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Facebookの決済ライセンス取得で危ぶまれる銀行の存在意義

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【編集部注】執筆者のChristoffer O. Hernæsは、チャレンジャーバンクかつノルウェイ初のオンライン専門銀行であるSkandiabankenのチーフデジタルオフィサー。

Facebookはアイルランドで電子マネーと決済サービスのライセンスを取得したことを、昨年12月頭にようやく明らかにした。しばらく前にFacebookが送金ライセンスを申請したという報道がなされた頃から、同社がヨーロッパで決済市場に新規参入するかもしれないとは噂されていた。さらにPayPalの前社長David MarcusをFacebook Messengerのトップとして迎えたことから、Facebookが決済市場参入の野望を抱いていることは明らかになりつつあった。Mark Zuckerbergが昨年1月に「私たちは決済サービスを提供している会社全てと提携していくつもりです」と話していた通りだ。

アメリカでは既にFacebook Paymentsが提供されており、ヨーロッパでも同サービスを展開するという戦略がまず頭に浮かんでくる。そしてFacebookがMessengerプラットフォームのスティッキネスを高めるためにシンプルなP2P決済サービスを提供することで満足するのか、はたまた5000億ドルを超える世界の送金市場を狙っていくのか、というのはこれから明らかになってくるだろう。

決済を他のサービスと組み合わせて考えると、Facebookが決済サービスを提供し始めることで、従来の銀行は現在の地位が危ぶまれることになるかもしれない。

改正後の決済サービス指令(PSD2)のもと、ヨーロッパの各銀行は金融系のサードパーティに対して決済APIを提供しなければならなくなる。さらにユーザーはサードパーティに1)支払指図と2)口座情報の抽出を委任できるようになる。

Facebookはコンシューマー市場における最も強力なデジタルエコシステムを誇る企業として、リテールバンクを省くことができるポジションにいる。

Facebookは既にFacebook Marketplaceのローンチでクラシファイド広告市場を変革しており、PSD2がヨーロッパ各地で法制化されれば、Facebook自体が支払指図サービス事業者(PISP:Payment Initiation Service Provider)として決済処理を行い、APIを通じて口座情報を直接Facebookのプラットフォーム上に引っ張ってこれるようになる可能性がある。そうすれば、Facebookは支払い関する情報を取得するため、消費者に対して銀行情報にアクセスする許可を求めるられるようになり、一旦アクセスが許可されれば、Facebookはセキュアに消費者の口座へアクセスし、代金を回収できるようになる。

FacebookがPISPになることで、コスト削減以外にも複雑な支払プロセスが省略され、繰り返しサービスを利用する顧客に対しては“ワンクリック”支払のオプションも準備されるだろう。さらにPSD2のもと、顧客の銀行口座から代金を直接回収できるようになれば、支払にかかる時間が短縮されるほか、従来の業界構造も大きく変わってくることになる。

さらにFacebookは、口座情報サービス提供者(AISP:Account Information Service Provider)にもなれる。PSD2では複数の口座にまたがった情報をAISPが取りまとめられるようになっているので、AISPは消費行動の分析サービスを提供したり、複数の銀行の口座情報をひとつにまとめ、ひとつひとつの口座に紐づいた旧来のモバイル・オンラインバンキングソリューションを代替したりできるようになる。

またチャットボットが銀行サービスに大きな変化をもたらすことになるのは既に周知の事実だ。というのも、銀行サービスの大部分は、「次の給料日までに使える金額はいくら?」や「まだ払ってない請求書の支払処理行って」といったシンプルなメッセージを利用して自動化することができるのだ。Facebook Messengerで全てセキュアに行うことができれば、銀行のアプリにわざわざログインする必要はなくなる。

一方、決済ライセンスを持った企業として、Facebookがソーシャルレンディングプラットフォームを運営するためには、一部地域で決済リスクに関する規制対応を行わなければいけない。ヨーロッパ中で300以上の企業が類似サービスを提供しているソーシャルレンディング業界の競争は厳しいが、Facebookは膨大なユーザーベースやユーザーデータ、リスク・信用査定のための口座情報を武器にすることができる。

Facebookはコンシューマー市場における最も強力なデジタルエコシステムを誇る企業として、リテールバンクを省くことができるポジションに既にいる。同社が現在の地位を維持するためには、日々変化する消費者行動に沿って進化していかなければならない。この点に関し、これまでのところFacebookは素晴らしい実績を残している。またFacebookが持つデジタルエコシステムとしての大きな力は、全てのユーザーの個人情報を管理しているという事実に支えられており、上手く行けばFacebookを利用することで電話番号やメールアドレス、口座番号さえ不要になるかもしれない。

その結果、将来的には今私たちが知っている銀行のサービスはコモディティ化し、送金やECのほか日常的な銀行業務含む顧客とのやりとりは全てFacebook PaymentsやFacebook Messengerを通して行われるようになるかもしれない。PWCが行った調査によれば、銀行員の68%が今後顧客との結びつきをコントロールできなくなるのではないかと心配している。Facebookがきちんと規制に対応すれば、その心配は間違いなく現実のものとなるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Facebookがアイルランドで電子マネーライセンスを取得、ヨーロッパへP2P決済サービスを展開予定か

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ヨーロッパでのFacebook Messengerを介したP2P決済サービス提供に向けて(昨年3月のアメリカでの同サービス提供開始からしばらく時間はたったものの)、Facebookは密かにアイルランド中央銀行から電子マネーのライセンスを取得していた。

アイルランド中央銀行の登録簿を見てみると、Facebook Payments International Limitedという会社が10月24日にライセンスを取得していたことがわかる。具体的には、電子マネーの発行のほか、口座振替、支払、送金といった決済サービスが提供できるライセンスが同社に付与されている。

さらに、アイルランドはEUの加盟国であるため、Facebookはいわゆる金融パスポート制度を利用し、アイルランド以外の27加盟国でも今回許可を受けた業務を行うことができる。

しかし、なぜFacebookがヨーロッパでのライセンスを取得するのにここまで時間がかかったかは明らかになっていない。同社がライセンス取得に向けて動き始めている様子は、2014年の時点で既にThe Financial Timesが報じていたのだ。さらに同じ時期に、Facebookがロンドンの送金系フィンテックスタートアップを買収しようとしているという話まで出ていた。この記事の本題からはズレてしまうが、その後も買収の話は進み、買収先候補のうち一社が、FacebookファウンダーのMark Zuckerbergと会議を行ったという決定的な情報も私は得ていた。

別の疑問として、Facebookがこのライセンスを使って実際に何をしようとしているのかも具体的には分かっていない。彼らはFacebook Messenger Payをヨーロッパにも展開して、同じ国で同じ通貨を使っているユーザー同士がお金をやりとりできるサービスを提供しようとしているのか、それともヨーロッパという環境に合わせて、外貨為替のサービスまで提供していくつもりなのだろうか。

送金サービス比較サイトMonitoのファウンダーであり、今回のFacebookによるライセンス取得の話を知らせてくれたFrançois Briodも以下のように語っている。

短期的に見れば、Facebookは今後Messengerを介したP2P送金サービスをヨーロッパにも展開していくでしょう。彼らはPaymやBarclaysのPingitといったサービスと競合すると思われますが、それに加えて、アメリカほど普及していないP2Pのモバイル決済サービスをヨーロッパで広めるのに一役買うことが期待されています。しかし、中期的に見たときのサービスの可能性については、いくつか不明点が残ります。まず、Facebook Messengerの送金サービスは、ヨーロッパの全ての通貨に対応していくのか、ユーロのみに対応するのかという点です。また、同通貨のクロスボーダー送金サービス(例:フランス→ドイツへのユーロ送金)を提供していくのか、さらには異なる通貨間の送金(例:イギリスからポンド送金→スペインでユーロ受取)にも対応していくのかというのも気になるところです。

本件については、近々もっと詳しい情報が明らかになる可能性が高く、現在Facebookに対してもコメントを要請しているため、何か新たな情報を入手次第、本記事をアップデートしていきたい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter