中小企業向けHRプラットフォームPersonioが約306億円調達、人事業務プロセスの自動化にも進出

この20カ月間でHRテクノロジーはスポットライトを浴びてきた。新型コロナウイルス(COVID-19)で私たちの働き方が変わったことで、仕事環境において人を管理する方法も変わらなければならなかったからだ。米国時間10月11日、中小企業に特化してこの問題に対処する方法を提供し大きなビジネスを構築してきた、ミュンヘンを拠点とするスタートアップ企業であるPersonio(ペルソニオ)が、同社のサービスに対する強い需要を受け、次のステップに向けて2億7000万ドル(約306億円)の資金調達を発表した。今回のシリーズEにより、Personioの評価額は63億ドル(約7140億円)に跳ね上がり、現在ヨーロッパで最も価値のある人事関連のスタートアップ企業の1つとなっている。

今回の資金調達は、Greenoaks Capital Partners(グリーンオークス・キャピタル・パートナーズ)が主導し、新たな投資家であるAltimeter Capital(アルティメット・キャピタル)とAlkeon(アルキオン)も参加している。このラウンドには、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、Accel(アクセル)、Meritech(メリテック)、Lightspeed(ライトスピード)、Northzone(ノースゾーン)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)など、以前からの支援者も参加している。IndexとMeritechは、2021年1月に行われたばかりの同社の前回のラウンドを主導した。当時のシリーズDラウンドの評価額は17億ドル(約1920億円)で、10カ月で3.7倍に成長したことになり、Personioの成長の速さを物語っている。

関連記事:中小企業にHRプラットフォームを提供する独Personioが約130億円調達

Personioは現在、ヨーロッパの中小企業(通常、従業員数10~2000人)を対象に、採用・入社手続き、給与計算、欠勤管理などの主要な人事機能をオールインワンのプラットフォームで提供している。1月の時点では3000社だった顧客数は、現在5000社に達している。Personioは、今後もさまざまなツールを拡充していく一方で、CEOのHanno Renner(ハンノ・レナー)氏が「ピープルワークフローオートメーション(人事業務プロセスの自動化)」と表現する分野にも進出していく予定だ。

基本的にこれは、Personio以外のアプリケーションで行う人事関連の作業において、人事情報を自動入力したり、それらのアプリケーション内でアクションを起こしたりすることで、手作業では時間がかかっていた作業をスピードアップすることを目的としている。例えば、雇用契約書の作成・発行や、入社や退職時に特定のアプリへのアクセス権を切り替えるといったことが可能だ。

Personioのプラットフォームが、企業が大規模で多面的なプラットフォームを用意するのと同じように、中小企業のニーズに合わせて連携する一連のHRツールであり「中小企業のためのWorkday」と捉えられるとすれば、同社が現在追加している自動化ツールは、中小企業向けのUiPath(ユーパス)やServiceNow(サービスナウ)に対する答えだと捉えられるかもしれない。つまり、機械学習やロボティック・プロセス・オートメーションなどの技術を使って、人事関連のタスクに関わる忙しい反復業務を取り除くことができる。

「12ヵ月間取り組んできましたが、今では5000人のお客様にプロダクトをそのまま使っていただいて、そこから学んでいます」とレナー氏はインタビューで答えている。この問題の核心は、異なる領域にあるソフトウェアをより迅速に連携させることにある。例えば、内定者に契約書を発行する必要があるときに、ここで時間をかけてその内定者が別の会社で契約するようなことにならないに、また、解雇された従業員が会社のITシステムに侵入できるようなことがないようにする必要がある。「人事プロセスは人事部だけではありません。人事プロセスは人事にとどまらず、他の機能や部門にも影響を与えます。遅延は時間を無駄にするだけでなく、有害な結果をもたらす可能性があるのです」。

Personioはこれまで、中小企業向けの製品を開発することで、中小企業という収益性の高い顧客層を開拓してきた新興企業グループの一員であることをアピールしてきた。中小企業は、ヨーロッパだけでも2500万社以上あり、全企業の99%以上を占めている。しかし、中小企業はさまざまな業種や関心事によって細分化されており、IT予算も非常に少なかったり、もしくはまったくなかったりするため、見過ごされがちだ。

人事の世界では、それがさらに深刻な状態だったとレナー氏はいう。ほとんどの中小企業は、人事関連のデータをエクセルのスプレッドシートや、ただの紙で管理していたりする。「私たちが日々目にするのは、中小企業の70%が何らかのHRソリューションを持っていないという状況です」と彼はいう。

しかし、デジタルトランスフォーメーションが中小企業を完全に見過ごしていたわけではなく、先進的な中小企業は販売、財務、CRMソフトウェアを徐々に導入していきている。そしてその流れが人事に関する考え方にも「波及」してきていると彼はいう。

Personioは、このことが顧客に自動化を売り込む際にも役立つと考えている。一般的な中小企業では、平均して約40種類のアプリを使用しており、その多くが人事システムからのデータを必要としていると同社は推定している。Personioは、これらのアプリケーションに連動性を提供することで、これらのアプリケーションの動作を高速化することができると考えている。

同社にはまだまだ多くの成長余地が残っている。Personioが対象としている中小企業(従業員数10〜2000人)の数は170万社であり、これはまだ市場のごく一部に過ぎないからだ。

つまり、新しい自動化製品が軌道に乗るかどうかにかかわらず、Personioにはまだ成長の可能性が高いということであり、同社が必要とする前に都合よく調達された今回の資金は役に立つだろう。新技術の導入により、将来的には人事部門以外の中小企業にも自動化サービスを提供できる可能性が出てきたため、今回の評価額の大幅な上昇は、中小企業に人事部門を進出させるための大きなチャンスであると同時に、その多様化にも関係していると考えられる。

「小規模企業は欧州経済を支える存在ですが、従来の企業では長い間、十分なサービスを受けられず、見過ごされてきました。Personioは、従業員のライフサイクル全体にわたって人事業務プロセスを簡素化し、大手企業がもっていた機能を広く普及させ、生産性を一段階向上させてくれました」とGreenoaks(グリーンオークス)の創業者兼マネージングパートナーであるNeil Mehta(ニール・メータ)氏は語っている。「私たちは、世界有数のプライベート・テクノロジー企業の多くとパートナー関係にあることを幸運に思っていますが、Personioのチームは、まだ彼らのミッションに着手したばかりだと確信しています。「人事業務プロセス自動化」のカテゴリーを立ち上げることで、ヨーロッパ中の企業にさらに多くの価値を提供することができるでしょう。私たちは、Personioのスリリングなステージに参加できることを誇りに思うとともに、今後も末永くパートナーであり続けたいと思っています」。

長期的には株式公開も視野に入れているが、ここで強調したいのは、その「長期的には」の部分だ。Personioは現在5億ドル(約560億円)の資金を調達しているが、レナー氏は次のステップを考えるのは少なくとも18〜24ヵ月後だと述べている。「公開を急いでいるわけではありません」と彼は語っている。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

原文へ

(文:Ingrid Lunden、Akihito Mizukoshi)

中小企業にHRプラットフォームを提供する独Personioが約130億円調達

2020年はどのように(そしてどこで)働くかが大きく変わり、組織はいかにうまく従業員を管理し、そのためにどのようなツールを使うか再考し始めた。米国時間1月18日、こうした難題を解決するテクノロジーを構築しているスタートアップの1つが、これまでの牽引力を強調する大きな資金調達ラウンドを発表した。

ドイツのスタートアップPersonio(ペルソニオ)は中小の事業所(従業員数10〜2000人)向けに、人材採用や従業員の教育・育成、給与支払い、勤怠管理、その他人事の主な機能をカバーするオールインワンのHRプラットフォームを展開している。同社は17億ドル(約1760億円)というポストマネーバリュエーションで1億2500万ドル(約130億円)の資金を獲得した。

シリーズDラウンドはIndex VenturesとMeritechが共同でリードし、既存投資家のAccel、Lightspeed Venture Partners、Northzone、Global Founders Capital、Picusが参加する。

17億ドルというバリュエーションは1年前の5億ドル(約519億円)から大きな飛躍だ。前年に同社は売上高を倍増させ、前回調達した資金がまだ銀行口座に残っていることから新たな資金調達は考えていなかった。

Personioは現在、欧州に3000もの中小企業の顧客を抱える。

インタビューの中で、共同創業者でCEOのHanno Renner(ハノ・レナー)氏は引き続きプロダクトの構築に調達した資金を使うと述べた。同社のプロダクトはWorkdayに少し似ているが、より小さな組織向けだ。Personioはまた、欧州での事業拡大にも資金を使う。

中小企業は相手するのに難しいセクターかもしれないが、レナー氏は新しい機会が生まれたと話した。新たな考え方を持つ中小企業セクターの人々がモダンで統合されたHRプラットフォームを持つことの価値を認識し始めた。

「我々はミッドマーケット企業のための先最端のHRプラットフォームになるべく、2016年にPersonioを立ち上げました。素晴らしい会社になることはわかっていましたが、HRが真に意味するものを把握するのは難しいかもしれないと認識しています」と同氏は話した。「しかしこれまでに当社の事業を動かしてきたものは、HRが単に重要な部分ではなく、あらゆる事業において最も重要な部分であるということの悟りだったと私は考えます」。

(1つの例として)採用、契約書のサイン、リモートによる新規従業員の教育・育成のためのツールを提供することで、ユーザーを変える魔法になる場合があります、と同氏は話した。それでも同氏は、ミッドマーケット、特にテクノロジー中心になっていない企業の多くはいまだにエクセルのスプレッドシートで、さらに驚くことにはペンと紙で作業をしていて「何年も遅れている」ことを認識している。「より効率的な方法でそうした企業のデジタル化をサポートすることで当社の事業は成長してきました」。

どのように働くかという点での変化が、HRツールの新たな購買欲につながることを望んでいるスタートアップは、Personioだけではない。Hibob(ヒボブ)のようなスタートアップも事業を大きく成長させていて、より積極的にチャンスをつかもうと資金も調達した。

Hibobはさらなるトレーニングツールを構築しようとしていて、これはPersonioも負けずについていかなければならない機能開拓レースだ。

しかし欧州マーケットには2500万社超とかなりの中小企業があり、EUの調査によると全企業の99%を占める。そうした中小企業の多くがまだHRプラットフォームをまったく導入していないという事実からして、この分野で多くのプレイヤーが大きく成長する余地はある。

「中小企業は欧州中で1億人を雇用して欧州経済を支えていますが、主に大企業にフォーカスしていたソフトウェア企業に無視されてきたセクターでもあります」とPersonioの役員を務めるIndexのパートナー、Martin Mignot(マーティン・ミグノット)氏は声明文で述べた。「Personioは中小企業のニーズを解決するテーラーメードのパワフルなツールを作り、そうした状況を変えます」。

「世界で最も成功しているSaaS企業と協業する楽しさがありました。過去5年間のPersonioの成功とマーケットの膨大なポテンシャルを考えたとき、我々はPersonioの成功して影響力を持つ事業を構築する能力をかたく信じています」とMeritech CapitalのゼネラルパートナーAlex Clayton(アレックス・クレイトン)氏は声明文で付け加えた。「ここ数年間、(CEOの)ハノ(・レナー)と数多くの素晴らしい議論を交わし、我々は今、Personioの旅に加わることに興奮しています」。クレイトン氏はまた、資金調達ラウンドの一環としてPersonioの役員メンバーに加わる。

関連記事:人事プラットフォーム開発のHibobがHRへの新たな取り組みに向け約73億円を調達

カテゴリー:HRテック
タグ:Personio資金調達

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi