匿名画像投稿サイトから画像SNSにピボットした「Pictory」、中高生人気を集めて月間1億PVを突破

以前にTechCrunchで紹介したカクテルの運営する匿名画像共有アプリ「Pictory」。2014年1月のサービス開始から約2年半……時間はかかったが、サービスが好調だという。10〜20代を中心にしてユーザーを拡大。2014年4月時点で月間200万だったページビューは、2016年8月に1億ページビューにまで成長した。

Pictoryは、Android向けアプリとウェブサイトでスタート。ユーザーが自らの持つ写真にエフェクトを付け、テキストを入れて「作品」として仕上げて匿名で投稿するサービスだった。ローンチ当初から10代を中心としたユーザーが多く、若いユーザーによる「ポエム」的な投稿が中心になっていった。

「Pictory」のトップ画面。さまざまなカテゴリの画像を投稿できる

「Pictory」のトップ画面。さまざまなカテゴリの画像を投稿できる

ページビュー数こそ増えたが、2015年半ばまではユーザーがあまり増えない状況に苦しんだ。「新規のユーザーが入っても、そのまま同じほどの数のユーザーが翌日離脱するような状態」(カクテル取締役CTOの天野仁史氏)だった。そのため約1年をかけて、完全匿名の画像投稿サイトから、ユーザー同士のコミュニケーションが可能な「画像SNS」へのピボットを進めた。

Pictoryの生まれた2014年頃といえば海外ではWhisperやSecret(すでにサービスを終了)といった、匿名で画像やテキストを投稿できるサービスが流行の兆しを見せていた時期。Pictoryも当初はそういったサービスを狙っていたのかも知れない。だが前述の通りで、結果的にできあがったのは、10代を中心にした小さいながらも濃いユーザーのコミュニティだった。

「当時は匿名で書きやすい、投稿しやすいというもの……いわば『今風の2ch』を目指していた。だが結果的に、狙った訳ではないがサービスが若者に受け入れられた。若者は自分の周囲、家族などに言えないことを投稿する。そんな内向的な投稿は匿名との食い合わせが悪かった。若者の『熱さ』はすごくあるが、読む人には価値がないということもあった」(天野氏)——そんな背景もあって、若いユーザーの熱量をより生かせるサービスへ転換を図った。

ピボット後、月間1億PVを達成

画像SNSへのピボットは成功。ユーザー数は非公開ながら、10代を中心にしたより大きなコミュニティが生まれつつあるという。ユーザーの8割は女性。また、全体の7割が中高生だ。夏休み期間でもある2016年8月には月間の画像投稿数60万件、登校への「いいね!」数は1億8000万回(Pictoryの仕様上、1人複数回のいいね投稿が可能。ユニーク数では約900万回)、月間1億ページビューを達成した。

Pictoryのアクティブユーザー数(実数は非公開)

Pictoryのアクティブユーザー数(実数は非公開)

投稿される画像はセルフィ(自撮り)のほかライフログ(外出時、食事時、購入物などライフスタイルに関する画像)、友達と撮影した写真(プリクラなど。コスプレしてプリクラを撮る「コスプリ」、ファッションを友人と合わせた「双子コーデ」なんていうものが人気だ)など。画像投稿するユーザーのフォロワー数は平均100以上。1万人超のフォロワーを抱えるユーザーも数多いという。ちなみに全ユーザーの3割が画像を投稿しているという。

「リニューアル後は継続率を純粋に追いかけていった。『いいね!』も(1つの投稿に対して)何度でも押せるようにすることで、ユニークユーザーが増えた」(カクテル代表取締役の水波桂氏)。「(いいね!を何度も押せる設計について)批判はあるかも知れないが、ポジティブなアクションを気軽にするのは正しいと思う。例えばFacebookで一番いいのは、『いいね!』ボタンによってコメント以外でも気軽にリアクションができることだ」(天野氏)

新規ユーザーの反応も好調だ。「(投稿がサイト上に露出される)評価軸をさまざまにしている。新しいユーザーでも面白い画像を投稿したならトップに表示される仕組み」(水波氏)。ネガティブな投稿に対しても抑止力が出てきたという。「ユーザーは名前を出すほどに悪口を言わなくなる。ここはコンテンツの見せ方ひとつで変わるところなので、調整を日々やっている」(天野氏)

今後は広告でのマネタイズも

カクテルは2012年の設立。これまでにインキュベイトファンドやメルカリ代表取締役の山田進太郎氏のほか、East Ventures、iSGS Investment Works、ベンチャーユナイテッドなどから約1億円の資金を調達している。

1年間作り込んだサービスの手応えを感じ始めたというPictory。今後は人材を拡大し、開発をさらに強化していく狙いだ。マネタイズについても広告の導入を検討しているが、「単なるバナーでなく、『テキスト+文字』でどんな広告ができるかチャレンジしていく」(天野氏)という。将来的には動画投稿についても検討中だ。

カクテル代表取締役の水波桂氏(左)と取締役CTOの天野仁史氏(右)

カクテル代表取締役の水波桂氏(左)と取締役CTOの天野仁史氏(右)

 

Whisperライクな匿名画像共有アプリ「Pictory」が月間200万PVに–自撮りで炎上しない世界の実現を目指す

月間アクティブユーザー12億人を越えるFacebook。そこでの開かれたコミュニケーションと逆行する形で、10代の若者を中心に、クローズド、匿名といった特徴を持ったサービスが登場し、注目を集めている。

送信したメッセージや画像が数秒で消えるメッセンジャーアプリの「Snapchat」、匿名で画像とつぶやきを投稿できる「Whisper」、FoursquareやInstagramのチェックイン情報をもとに、知り合いと出会わないようアラートを出す「Cloak」など、そのアプローチもさまざまだ。

日本でも同様の傾向があるのか、Whisperライクなサービス「Pictory(ピクトリー)」が賑わいを見せはじめているという。PictoryはAndroidアプリとPCで利用できるサービスで、カクテルが1月に公開した。ユーザーが持つ画像を加工してアップロードし、テキストを入れた作品として匿名で投稿、共有できる。投稿した作品にはお気に入りに入れたり、匿名でコメントをつけたりできる。ノンプロモーションながら月間の投稿数は1万4000件、月間200万ページビュー(PV)まで成長しているという。

特徴的なのはアクティブユーザー1人あたりの投稿数だ。アクティブユーザーの実数は答えてもらえなかったが、3月のアクティブユーザ1人あたりの平均作品投稿数は1日0.45件と、2人に1人が1日1回投稿をしているという状況だという。メインユーザーは10代の学生。そのため、下校時間となる夕方から深夜にかけてトラフィックが集中する傾向があるという。

「自撮り」でも炎上しない仕組み作り

僕が投稿された画像を見て気づいたのは、「Selfie」、いわゆる「自撮り」画像の多さだ。多くのユーザーが自分の写真や友人、カップルでの写真にテキストをつけてアップしているのだ。そしてそこには独り言やポエムから、自分のメイクが可愛いか、ファッションがおしゃれかといった質問など、さまざまなメッセージが添えられている。

自撮りが多いと気になるのは、それらに対する罵詈雑言のコメントだ。Pictoryでは——悪質なユーザーに対策がなされる可能性もあるとして詳細な方法は聞けなかったが——クラウドソーシングを使った人力での監視やテクノロジーを組み合わせることで、「自撮り画像をアップしても『危険』と言われない、居心地のいい場所を作っており、変な方向に荒れたりしないようにしている」(カクテル取締役CTOの天野仁史氏)とのことだ。公序良俗に反する画像、コメントも削除しているそうだ。

インキュベイトファンドのほか、メルカリ山田氏やモイ赤松氏が出資

カクテルは2012年の設立。インキュベイトファンドのほか、メルカリ代表取締役の山田進太郎氏やモイ代表取締役の赤松洋介氏が出資をしている。

同社ではこれまでTwitterやFacebookとは異なるソーシャルグラフの構築を目指してサービスを開発してきたという。それは実名制でもなく、決まったタイムラインがあるわけでもない、かといって「出会い系」にもならないもの——現在代表取締役を務める水波桂氏はこう語る。

今後はダイレクトメッセージ機能をはじめとしたコミュニケーション機能を強化する。「『匿名かつ居心地のいいところ』ができないかを考えている。友達やつながりを持てて、でもその関係をリセットできたりというもの」(天野氏)

そのほか、画像の検索機能やiPhoneアプリの提供などを予定する。ただしiPhoneアプリに関しては、「開発サイクルの早いAndroidアプリで機能が一通りそろった時点で提供していきたい」(天野氏)