Spotifyは「見て」ももらいたい、ビデオポッドキャスト用ツールを同社傘下Anchorのクリエイターに開放

Spotify(スポティファイ)は、買収、独占契約、その他のパートナーシップの間で、ポッドキャスティングにすでに約10億ドル(約1130億円)を投資している。そして、Spotifyは人々に聴くだけでなく、見てももらいたいと考えている。同社は米国時間10月21日、クリエイターがビデオポッドキャストできるようになる新しいツールを開始することを発表した。このツールは、Spotifyのポッドキャスト制作プラットフォームAnchor(アンカー)が提供するもので、一部のクリエイターのみを対象に、2020年にグローバルで開始したビデオポッドキャストを発展させたものだ。

当時、Spotifyは、ビデオポッドキャストのデビューラインナップには、Spotify Originals and Exclusives(オリジナル&独占)に加え、サードパーティ制作のポッドキャストも含まれていると述べていた。しかし、どんなクリエイターでも動画を配信できるわけではなかった。代わりに、YouTube(ユーチューブ)などの他の動画プラットフォームを利用する必要があった。

この状況が変わる時が来た。Anchorによって、現在のオーディオエピソードの作成・公開するのと同じように、クリエイターが自分のアカウントを使って動画をアップロードできるようになる。公開されたポッドキャストは、Spotifyのモバイルアプリ、デスクトップアプリ、ウェブプレイヤー、そしてほとんどのスマートテレビやゲーム機など、さまざまなプラットフォームで聴くことができる。また、クリエイターは、音声ポッドキャストと同様に、定額制を利用してビデオを収益化することができる。

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クリエイターは価格を設定し、サブスクリプションに何が含まれるかを決めることができるが、Spotifyは、サブスクリプションによって独占的なビデオコンテンツへのアクセスを提供したり、クリエイターのポッドキャストのビデオ部分をアンロックしたりすることができると提案している。ビデオポッドキャストには、クリエイターの既存の広告パートナーも組み込むことができ、近々、より新しい自動化された広告にも対応する予定だ。

Spotifyは正式にAnchorクリエイターへのアクセスを開始したが、機能は徐々に展開されている。つまり、興味のあるクリエイターは、当面はウェイティングリストに登録する必要がある。ちなみに、Appleはすでに、ビデオポッドキャスティングのホスティングを、すべてのホスティングソリューションを使用するすべてのクリエイターに提供している。

一方、Spotifyのビデオラインナップには、The Ringer(リンガー)のHigher Learning with Van Lathan and Rachel Lindsay(ハイヤーラーニング・ウィズ・ヴァン・レイサン・アンド・レイチェル・リンゼイ)やThe Joe Rogan Experience(ジョー・ローガン・エクスペリエンス)などのオリジナル&独占番組のビデオポッドキャストが含まれている。また、Philip DeFranco(フィリップ・デフランコ)、Jasmine Chiswell(ジャスミン・チズウェル)、The WAN ShowJuicy Scoop with Heather McDonald(ジューシー・スクープ・ウィズ・ヘザー・マクドナルド)など、今後Spotifyで公開される他のビデオクリエーターも含まれる。

Spotifyは過去に、動画への進出を試みては失敗してきた。5年前に行ったオリジナルビデオへの最初の取り組みは大失敗に終わり、同社はしばらくの間、ビデオ計画を棚上げにしていた。しかし最近になって、同社はYouTubeをベースにした動画事業を持つスポーツネットワークのThe Ringerを買収し、動画への復帰の可能性を示唆した。その後も、TikTok(ティックトック)のスターからNetflix(ネットフリックス)の女優になったAddison Rae(アディソン・レイ)との契約など、動画への移行が可能な契約を次々と行っている。

今回のポッドキャストクリエイターへの動画配信の拡大は、YouTubeが自社のポッドキャスティング事業へのさらなる投資を検討しているというニュースに直結している。2021年10月、Bloombergは、YouTubeがポッドキャストに特化した初の幹部を採用すると報じた。実際にアップロードを開始するためのアクセスは、まだウェイティングリストによってブロックされているものの、このニュースを受けて、Spotifyが自社のビデオポッドキャスティングへの取り組みを推進することになったのかもしれない。

現在、Spotifyで動画コンテンツを探すには、見たい番組からエピソードページに移動し、再生ボタンを押してエピソードを開始する必要がある。画面下の再生バーをタップすると、動画がフルスクリーンで表示される。あとは、何をしているかに応じて、聞くか見るかを選ぶことができる。

ただし、動画に対応しているすべてのポッドキャストを簡単に確認する方法はまだない。Spotifyは、サービス開始時にビデオとして利用できるポッドキャストの数については明らかにしていないが、年末までに「数千」のポッドキャストへのアクセスを提供する予定であると述べている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

Podcastleはポッドキャストの制作から公開までできるオールインワンのプラットフォーム

最近の主要ポッドキャスト制作プラットフォームとしてはAnchorとDescriptが有名だが、バックミラーにはPodcastleが見え始めている。Podcastleは録音、制作、公開をすべてカバーするオールインワンのプラットフォームだ。

PodcastleはRTP GlobalとPoint Nine Capitalが共同で主導したアーリーステージのラウンドで700万ドル(約7億8000万円)を調達した。S16 VCと、以前に投資したSierra VenturesとAI Fundも参加した。

Podcastleは急成長中のクリエイターエコノミーに参入している。あるレポートによるとクリエイターエコノミーの規模はおよそ1042億ドル(約11兆6000億円)と評価され、最近では200万以上のポッドキャストが存在する。

Podcastleによれば、これまでに約15万人のクリエイターが同社を利用し、その数は急速に増えているという。コンシューマクラスのマイクでスタジオ品質のリモートインタビューをする、マルチトラックで録音と編集をする、ポッドキャスト中の話し言葉を切り出して聴きやすくするなど、ポッドキャストクリエイターが簡単に使えるツールを備えているためだ。また、テキストを読み上げて話し言葉にしたり、逆に話し言葉をテキストにしたりして、クリエイターはオーディオをテキスト書類のように編集できる。

以前はPicsartのエンジニアリング担当VPで、現在はPodcastleの創業者でCEOのArtavazd Yeritsyan(アルタヴァズド・イェリツィアン)氏は次のように述べた。「2022年に1日あたりの平均視聴時間は1時間37分になると予想され、ポッドキャスト業界はストーリーを伝える上で最も影響力のあるカテゴリーの1つになります。Podcastleは技術的な障壁をすべて取り除き、クリエイターがほんとうに大切にしなくてはならないこと、つまり人々と共有したいコンテンツの制作と配信に集中できるように努めています」。

同氏は、Descriptは編集ツールだがPodcastleは「創作」プラットフォームに近く、クリエイターはこのプラットフォームでリモートインタビューをしてそのまま編集もできるという。「MicrosoftのドキュメントとGoogleドキュメント、あるいはSketchとFigmaを比較するようなものです。この例えでいうなら、我々はGoogleドキュメントでありFigmaです」と同氏は筆者に語った。

RTP GlobalのマネージングパートナーであるAlexander Pavlov(アレクサンドル・パブロフ)氏は次のように述べた。「ポッドキャスティング市場は2020年に114億6000万ドル(約1兆2700億円)に達し、Podcastleは意欲の強いホストとクリエイターを満足させる統合ソリューションを提供しています。我々はこのプラットフォームには大きな可能性があると見ており、Podcastleのこれからの成功を支援できることをうれしく思っています」。

Point Nine CapitalのパートナーであるLouis Coppey(ルイ・コッペイ)氏は次のように述べた。「Point Nineは近年、パリのPlayPlay、ロンドンのGravitySketch、ブダペストのShapr3Dといったクリエイティブソフトウェアに投資してきました。この3社はビデオ制作やVR、3Dのデザインを徹底的に平易にしています。Podcastleはオーディオコンテンツ制作の民主化への道を開いています」。

Podcastleは4種類の料金プランを用意しており、基本的な機能は無料で利用できる。

画像クレジット:Podcastle team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)