Googleが実店舗のネット活用を支援するスタートアップPointyを買収へ

Googleは、実店舗で販売を行う小売業者と密接な関係を作り、電子商取引の世界に参入するという長期目標を掲げているが、どうやらその計画が少し進展したようだ。検索エンジン大手である同社は、アイルランドのダブリンに本拠を置き、実店舗の小売業者を支援するハードウェアとソフトウェア技術を開発するスタートアップPointyの買収に乗り出した。その技術とは、特に取り扱い商品を細かく陳列するネットショップを開設していない店舗を対象に、大きな手間をかけることなく、商品をネット上で見つけやすくするためのものだ。

どちらの企業も買収額は公表していないが、ある情報筋によれば1億4700万ポンド(約210億円)とのことだ。

Googleは1時間以内に公式発表をすると言っていたが、情報筋から得た話の詳細を探っている間に、Pointyはすでに自社サイトでそのニュースを公開していた。現在は「習慣的な買収完了条件」の交渉中で、数週間以内に契約は完了するという(Googleの買収に関するブログ記事はこちら)。

Pointyは買収後も事業を続ける。「私たちは、Googleの資産とリーチの支援を受けて、今後もよりよいサービスが構築できることを楽しみにしています」と同社は書いている。だが、この計画に誰が残るかは不明だ。

情報筋は、この買収は「よい結果」だったと話している。なぜならPointyには「唯一無二」の製品があり、市場に比較対象がなかったからだ。さらにPointyは、小さなスタートアップにしては非常に多くのトラクションがあり、アメリカでは、特定分野の実店舗小売り業者の10パーセントほどと取り引きをしている(その中にはペットとオモチャの小売業者が含まれている聞いている)。

Pointyは創設6年目の企業で、さまざまな投資家から2000万ドル(約22億円)の資金を調達している。投資会社にはFrontline Ventures、Polaris、LocalGlobe、個人投資家には、以前はGoogleマップの開発を取り仕切り、その後、Facebookで検索エンジンや企業向けの製品の開発を行っていたLars Rasmussen(ラーズ・ラスムーセン)氏が名を連ねている。

Pointyは、CEOのMark Cummins(マーク・カミンズ)氏とCTOのCharles Bibby(チャールズ・ビビー)氏によって共同創設された。注目すべきは、カミンズ氏にとって今回がGoogleへの2度目のイグジットであることだ。彼が最初に立ち上げた会社Plink(プリンク)は、Googleがイギリスで最初に買収した企業だった。

Googleにとって、Pointyはカミンズ氏のスタートアップを前にも買収したことがあるという以上の既知の仲だ。この検索エンジン大手が実店舗を経営する小売り業者のためのツール開発をPointyが強く後押ししたことで、両者は2018年から一緒に活動していたのだ。

当時、Pointyの主軸製品は企業の販売時点管理、つまりバーコード読み取りユニットに接続するハードウェアだった。これを使えば、商品の販売時にバーコードを読み取るだけで、その商品が(販売数も含め)インターネットにアップロードされる。その後も、商品が売れるたびに読み取られたバーコードから在庫数が更新される。Pointyは入荷に関しては関知しない。長期的な販売パターンから、ほぼ正確に在庫数を割り出せるアルゴリズムを使用しているためだ。

一般の利用者は、その商品を検索すると、Googleの検索結果(ナレッジパネルの「◯◯を見る」やGoogleマップ)で、または広告にその詳細が示されるようになる。目的は、これらのリストを通じて該当する商品を、Pointyでそれをアップした店で買ってもらうチャンスを高めることだ。お客さんを店に導き、他の商品も買ってもらえればなおいい。

この装置の価格は700ドル(約7万7000円)ほどだが、特定メーカーのPOSに組み込める無料アプリも提供されている。Clover、Square、Lightspeed、Vend、Liberty、WooPOS、BestRx、CashRx POSのシステムなら、ハードウェアを必要としない。

2018年、Pointyと最初に提携したGoogleの狙いは、検索ポータルの電子商取引ツールとしての機能を高めることにあったのだが、なかなか実現しなかった。一方Amazonは、実店舗との連携を順調に強め、インターネットで買い物をする人が最初に見るサイトというGoogleの地位を大きく脅かした。

あれから2年。こうした課題は、Amazonの躍進によってますます大きくなるばかりだ。GoogleがPointyの引き込みに熱心だった理由は、恐らくそこにある。だが今、その技術を深く取り込み発展させる準備が整った。

Pointyも、小売業者との緊密さを少しだけ高めることができ、何が売れるか、何を多く仕入れるべきかといったインサイトを店舗に提供できるようになった。だが、インターネット上にリストアップされる商品の実際の売買にまでは、手を出さず、あくまで店舗とそこを訪れて直接商品を買いたい客との取り引きに任せていた。Pointy(と独自に小売り事業を目指すGoogle)がそこでどのような展開を見せるか、未来のドアは大きく開かれている。

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(翻訳:金井哲夫)

Pointyは地域の店をAmazonに対抗させる――PoSレジ連動で商品情報をオンライン化するプラットフォーム

アイルランドのスタートアップ、Pointy​は地域の店舗が在庫商品を簡単にオンラインで公開し、消費者が簡単に検索できるようにするシステムを開発した。このほど同社はシリーズAのラウンドで600万ドルの資金を調達した。このラウンドはFrontline Venturesがリードし、ポール・アレンのVulcan Capital、Draper Associates、さらに何人かの著名なエンゼル投資家が加わっている。

エンゼル投資家にはWordPressのファウンダー、Matt Mullenweg、Google Mapsの共同ファウンダー、Lars Rasmussen、Transferwiseの共同ファウンダー、Taavet Hinrikus、Beboの共同ファウンダー、Michael Birchが加わっている。Pointyはこれ以前にLocalGlobe、Frontline、Seedcampから120万ドルのシード資金を得ている。

共同ファウンダーのMark CumminsとCharles Bibbyはスタートアップの起業に経験を積んでいる。Cumminsは2010年にGoogleによって買収されたビジュアル検索エンジン、Plinkの共同ファウンダーでもある。

Pointyはソフトとハードを統合したプラットフォームで、店舗の在庫商品をオンラインで検索可能にして顧客の流入増を図る。 カギとなるのは​Pointy​Boxと呼ばれる小さなデバイスで、店舗のPoSレジに接続するとバーコードのスキャン結果を自動的にPointyが運営するウェブサイトに転送し、オンラインでの検索を可能にする。

Pointy上の各ストアのページは検索エンジン向けに最適化されており、ユーザーが商品を検索すると、Pointyはユーザーの所在地付近でその商品をストックしている店舗を表示する。つまりお気に入りのクラフト・ビールを検索すると、どこに行けばそのビールが買えるか、近所の店を教えてくれる。簡単に言えば、地域の店舗がAmazonのような巨大通販会社に対抗できるようにするシステムだ。Pointyを利用する地域店舗は最小の投資で顧客の増大を実現できる。

電話取材に対して共同ファウンダーたちは(ちなみに両者ともロボティクスで博士号を持つ)はPointyの仕組を説明してくれた。商品の販売時にPoSレジでバーコードがスキャンされると、そのデータはPointy Boxを通じてPointyサイトに送られる。Pointyはこの際、複雑な在庫管理システムの導入なしに店舗に在庫があるかどうかを決定しなければならない。開発されたアルゴリズムでは推定のベースとして販売頻度などが利用されている。ある製品が頻繁に販売されているなら在庫も補充されている可能性が高い。

Cumminsは、 「消費者が何あるアイテムを買いたいと考えてスマートフォンで検索したとすると、 たいていの場合、​Amazonの在庫が表示される。たとえ50メートル先の実店舗にその商品が置いてあっても検索結果には出てこない。これは消費者にとっても店舗にとっても苛立たしい状況だ。Pointy​は店舗側の資金や時間などの負担を最小限にしてこの問題を解決しようとしている」と説明する。

現在Pointyはすでにアメリカの48の州の店舗で利用されており、「登録された商品は何千万回も検索結果に表示されている」という。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+