プログラミング学習サービスのProgateが世界登録ユーザー数150万人突破

Progate プロゲート プログラミング学習

Progate(プロゲート)は7月10日、オンラインプログラミング学習サービス「Progate」、同名スマホアプリ(Android版/iOS版)の合計登録ユーザー数が全世界で150万人を突破したと発表した。

Progateによると、2019年10月に登録ユーザー数100万人を突破、その8ヵ月後に150万人に到達したことになるという。背景にはステイホーム期間におけるユーザー登録数の増加があるとした。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19))による外出自粛要請を受けて自宅で過ごす時間が増えた多くの方に、オンラインプログラミング学習サービスを提供できたという。

Progateは、実際にプロダクトを作りながらコードを書く練習をすることで、初心者でもプログラミングを学べるというオンライン学習サービス。一般的なプログラミング学習には「環境構築」と呼ばれる開発を始めるための準備が必要だが、Progateでは、Webブラウザーやアプリのみで学習を始められる。

関連記事
Preferred Networksが教育事業に参入、独自のプログラミング教材「Playgram」を開発
40万人が使うプログラミング学習サービス「Progate」、米国子会社を設立しグローバル展開を加速
新世代プログラミング学習サービス「Progate」にiOSアプリ、専用キーボードでPC同様の学習が可能に

40万人が使うプログラミング学習サービス「Progate」、米国子会社を設立しグローバル展開を加速

「海外展開は思っていたより簡単じゃない、というのが正直なところ。プロダクトの基盤が一通りできてきた一方で、日本と海外でのニーズのズレなど課題も感じている。そこをどう乗り越えていくかが今後のチャレンジだ」——Progate(プロゲート)代表取締役の加藤將倫氏は同社の現状についてそう話す。

Progateが運営するプログラミング学習サービス「Progate」については、これまでTechCrunchでも何度か紹介してきた。

スライド教材を見て基礎を確認した後、ウェブブラウザ上で実際にコードを書きながら学べるスタイルを考案。初心者にとって難易度の高い環境設定などもなく、プログラミングを始めるまでのハードルが低い。

そんなProgateが力を入れているのが、英語圏を中心としたグローバル展開だ。同社では7月1日に初となる子会社Progate Globalを米国に設立。海外ユーザーの獲得をさらに加速させようとしている。

国内ユーザー数は約35万人、コンテンツ数も66レッスンまで拡充

Progateは2014年7月に、東京大学の学生だった加藤氏や取締役の村井謙太氏らが共同で創業。自分たち自身が苦労しながらプログラミングを学んだこともあり、初心者でも挫折しにくいサービスとしてProgateを立ち上げた。

特徴は初心者が最初につまずきやすいポイントを解消しつつ、実際に手を動かしながらプログラミングの楽しさに触れられること。

本や動画学習サービスを使って学習する場合、コードを書くためには自分で環境構築をしないといけないが、初心者にとってはこれが意外と面倒。その点Progateの場合はすぐにブラウザ上でコードを書くことができ、その結果をリアルタイムに確認できる。

2017年2月にはフリークアウトグループ、DeNA、エンジェル投資家から1億円の資金調達を実施(それ以前にもEast Ventures、ロンドンブーツの田村淳氏、メルカリ創業者の山田進太郎氏らから資金調達をしている)。調達した資金も活用しながら、英語版やアプリ版の開発、コンテンツの拡充などプロダクトの改善を着々と進めてきた。

特に国内ではアプリのリリース(1月にiOS版、4月にAndroid版)以降ユーザー登録のペースが以前の倍くらいになっているそう。国内のユーザー数は約35万人にまで増え、そのうちの5%ほどが有料会員だという。

Progateのキモとなるコンテンツについては、現在15コース・66レッスンを提供。直近ではメルカリ/メルペイの現役エンジニアと共同でGo言語のレッスンを開発するなど、外部のエキスパートと共同でコンテンツを作る新しい取り組みも始めテイル。

海外ユーザーのペインを解決できるプロダクトが必要

このような背景もあり、加藤氏は「ProgateのVer1が完成に近づいてきた状態」と話す。ただこれはクチコミである程度ユーザーが安定的に入るようになってきた日本での話。海外では少し事情が違うらしい。

「海外版を出せば日本と同じような層に広がっていくかと思っていたが、そもそもターゲットの抱える目的や課題も違うことがわかってきた。海外で戦えるプロダクト、海外ユーザーのペインを解決できるプロダクトとしてはまだ足りない」(加藤氏)

具体的には「コンテンツが圧倒的に足りない」という加藤氏。同社にとってコンテンツの増強が今後の大きなテーマになるようだ。

Progate代表取締役の加藤將倫氏

たとえばインドの場合。現地の学校を回ったり若者と情報交換をしたりなどヒアリングをしてみると、「データサイエンスやマシーンラーニングのコースがあるのかをどこに行っても聞かれる」のだという。ここは現状のProgateではまだカバーできていない領域だ。

「海外の方がニーズが進んでいるイメージ。インドの場合だと高校の授業でProgateのレッスンのような内容を学んでいたりもするので、日本と同じように大学生向けに同じようなコンテンツを提供していては上手くいかない」(加藤氏)

そのため国内と海外ではユーザー層にも違いが生まれているそう。現在海外ユーザーは約5万人。内訳としてはインドが3万人、米国が1万人、その他が1万人とのことで、インドについては日本よりも年齢層が低く、10代後半がボリュームとしては大きい。

海外では日本以上にプログラミング学習サービスの選択肢も多くなるため、他社と比べられる機会が増えるという事情もある。

実際、加藤氏が注目するサービスのひとつとして挙げるUdemyなどには膨大な量のコンテンツが並ぶ。ユーザー投稿型のためコンテンツの質にはバラツキがあるものの「(プログラミングに関するものだけで)1万レッスンないしそれ以上のコンテンツがあり、上位5%のクラスは質も高い」(加藤氏)という。

「Progateで提供しているコンテンツには自信を持っているけれど、たとえば現状でPythonのコースは5コースしかない。これだけのために課金をしてまで使うか、クチコミで広がっていくかというと難しい。他にも選択肢がある海外ではなおさらのことだ」(加藤氏)

コンテンツが充実すれば海外でも十分チャンスはある

Progateの英語版。2017年10月のβ版を経て、2018年5月に正式リリース

後発とも言えるProgateが、今後海外でどのくらい広がっていくのだろうか。加藤氏に手応えを聞いてみたところ「コンテンツを拡充させることができればやっていける感触はある」という答えが返ってきた。

「インドや中国など、十分にプログラミング教育が発展していない国には大きな可能性を感じている。ツール自体もあまり知られていないので、そこまで後発というわけでもない。そこでしっかりと盤石な立ち位置を確立できれば、他のエリアでもより多くの資金を使って取り組める」(加藤氏)

一方の米国は相当大変になってくると話すが、「この市場はウィナーテイクオール(1社がひとり勝ちするようなビジネス)ではない」ため、いいコンテンツを提供できればチャンスはあるというのが加藤氏の見解だ。

大まかなプランとしては、まず海外で既存のコンテンツが刺さる層のファンを増やす活動に注力。並行して世界で戦えるようなコンテンツを開発しながら、新たなユーザーも開拓し日本と同様にクチコミで広げていく方針だという。

今回設立した米国法人も「世界で1人でも多くのファンを作る」手段のひとつ。インドでも近く法人の設立が完了する予定で、これがProgateの海外展開を加速させるギアとなりそうだ。

「自分たちの強みは徹底的にユーザーに向き合ったコンテンツを作れること。(このスタイルは崩さず)アプリや機械学習など対応するコースも増やし、『どんなものを学びたいかに限らずProgateであれば安心できる』という環境を作っていきたい」(加藤氏)

新世代プログラミング学習サービス「Progate」が1億円を追加調達して国際化を加速

16667117_1814854388540891_1553889967_o

東大生が在学中に創業したプログラミング学習サービスの「Progate」(プロゲイト)が1億円の追加資金調達を実施したと発表した。フリークアウトグループDeNA、エンジェル投資家を引受先として第三者割当増資に応じた。2014年7月創業以来、同社はこれまでプレシードやエンジェル投資などで合計5000万円ほど資金調達をしており、累計資金調達額は約1億5000万円となっている。East Venturesが2014年11月に1500万円を投資しているほか、エンジェルと投資家として、ロンドンブーツの田村淳氏やメルカリ創業者の山田進太郎氏が名を連ねている。共同創業者の加藤將倫CEO(上の写真右)はTechCrunch Japanの取材に対して、追加資金により国際化に注力すると話している。

「スライド+コード表示+実行環境」の学習スタイルを確立

プログラミング学習サイトは日本語でも英語でも数多くあるが、これまでのプログラミングサイトとProgateが違うのはスライドを中心とした初中級者向けの学習コンテンツを、うまく実行環境と組み合わせることで、ブラウザだけで学習が完結すること。これは初中級ではメリットのあることだと思う。

書籍の延長である電子書籍やHTMLをのぞくと、プログラミング学習コンテンツとしては動画が多かった。講義形式の動画やスクリーンキャストと呼ばれる動画コンテンツが多数存在している。MOOCsの代名詞ともなったCourseraは基本的に教科書を読み、講義を聴講するスタイルだ。日本でベネッセとも提携しているUdemyも映像講座を基本コンテンツとしている。

実際にコードが書けるようになるには実践が必要だ。これはスポーツや楽器と同じ。講義スタイルのオンラインコースでも、たいていは課題やノルマのような提出物があったりするが、「講義→コーディング」というところに不連続面がある。ここでクセモノなのが「分かった気になって手を動かさずに済ませてしまうこと」と「実行環境を用意すること」の2つだ。

実際に課題をやってみると必ず詰まる。すると、自分がたいして分かっていなかったことが分かる。そして講義や教科書に戻る。そしてまた課題をやる、というのが正攻法。ただ問題なのは、「講義と課題」を行き来して最後までたどり着ける人は、実は少ないのではないかということだ。ぼくはUdemyの「実践Pythonデータサイエンス」を受講したものの課題はほとんどやっていない。講義は素晴らしい。Pythonのもすばらしい。しかし、すべての学習者がすばらしいわけじゃない。裏付けとなる客観データは持っていないけど、これはぼくだけの問題とは信じたくない。こう言うと必ずその筋のプロが憤然としてぼくに諭してくる。「課題やんないと意味ないよ」「分かった気になっても駄目だよ」。口を酸っぱくして経験者が言わなければならないのは、それだけぼくのような課題スキップによる落伍者が多い証なんだと思う。

講義と実践が分離している場合のもう1つの問題は、実行環境を用意する手間が大きいこと。

「最初に学ぶ言語」としてHTMLの学習を多くの人が推奨するのは、何の準備も要らず、しかも結果がすぐに表示されるからだ。しかし、UdemyでPythonを学ぼうと思うと自分でPythonの実行環境をダウンロードして用意する必要がある。実行環境を用意することを「環境構築」と呼んだりするが、これはこれで骨が折れることだったりする。

多くのプログラミング言語の教科書の1章目は「環境構築」の話だし、周辺ツールも含めたモダンな開発環境となると数冊の本を読まないと、その筋のプロが「快適」という状態にはならないことすらある。なぜそうなっているかというと、プログラミング言語はプロだけのものだったからだ。プロはUnixのコマンドラインの使い方を当然知っているし、生活の場ともいえる「シェル」や「IDE」の設定にハマった経験もあるのが普通だ。秘伝の設定スクリプトを先輩から譲り受けたりしてもしている。環境構築とういうのは、やりこむと盆栽のように楽しい面がある。でも作りたいものがあるからプログラミングを学びたいと考える初心者にはハードルでしかない。

そんなわけで、ブラウザに向かってコードを書ける環境というのが生まれてきた。その場で実行できて、どんどん学べるサービスとして2011年に話題をさらったのがCodecademyだった。ブラウザ上にコード実行環境があるという意味ではTopcoderやAtCoderといった「競技プログラミング」や、プログラミングの課題を解くことでゲームを進めるCheckIOといったサイトもある。日本だとPaizaというサービスを何度かTechCrunch Japanでも紹介している。

と、ここまでオンラインのプログラミング学習サービスの流れを書いて、やっとProgateのことが書けるのだけど、Progateは学習コンテンツであるスライドを見ながら、そのまま実行環境でコードを書いて試せる学習サービスだ。Progateで実際に少しコースをやってみて感じるのは、既存書籍の電子化やスクリーンキャストによる講義形式は、まだネットネイティブとは言えなかったのかなということだ。Codecademyと比べたときProgateがよく出来てるなと思うのは、コードを書いていて分からなかったら、またすぐに関連スライドを全画面ポップアップで呼び出せることだ。コーディング中にスライドを一括検索する機能もある。

progate01

左が解説部でスライド呼び出しボタンが付いている。中央がコード編集、右が実行結果

 

  1. progate02

  2. progate03

  3. progate04

まとめると、こういうことだと思う。

かつてプログラミングの勉強は、多くの人は書籍で行っていた。講義も受けていたかもしれない。そしてコード実行環境のパソコンがあった。これらは独立して順番に電子化されてネットにやってきた。Progateは理論と実践の両方を1枚のブラウザ画面に入れてあって、いい感じにその2つを行き来できる工夫がしてある。この辺は、Progateの加藤CEOが自らが初心者としてプログラミングの勉強をしていた経験から考え付いた機能だそうだ。後発であることと、プログラミングというスキルの民主化から来る要請が背景にあると思うのだけど、Progateは新世代のプログラミング学習サービスと言っていいと思う。

実際、Progateの継続率や有料会員へのコンバージョンは高い。初級編を終わらせる人は全体の3〜4割だが、初級編を終わらせた人に限ると、その9割が中級編へと進むのだという。「ちゃんとやった人は続けてやってもらえる。中級編に進むところで有料会員になる人は約25%です」(加藤CEO)

法人需要に手応えを感じつつも、国際化にフォーカス

今のところProgateでは10言語で合計約50のレッスンを用意してある。提供コンテンツは、HTML、JavaScript、Ruby、PHP、Java、Pythonなど(これは人気順)だが、Gitやコマンドラインの使い方といったプログラミング言語以外のコンテンツもある。

レッスンは1つあたり3、4時間で消化できるサイズに区切っているという。2014年に起業して以来、6人ほどでコンテンツを作ってきた。徐々に知名度があがって現在ユーザー数は12万人、有料会員は5000人弱。すでに採算分岐点を超えつつあるそうだ。有料会員は月額980円で全レッスンが使える「プラス会員」と、チャットによるエンジニアのサポートが受けられる月額2980円の「プレミアム会員」がある。

法人向けの「Progate for Team」(1人あたり月額約4000円でボリュームディスカウトあり)や、中学・高校向けの「Progate for School」も展開している。「学校教師の方が使ってくれていて、ご意見箱から授業で使えないかと要望があったんです」(加藤CEO)というのが提供の背景で、学校向けでは約10の高校で授業教材として活用されるているという。また法人向けも問い合わせから要望のあった「一括支払い」に応えた形で、現在10社ほどで導入され、社内研修などに利用されているという。法人向けは進捗管理画面などもある。

積極的に法人営業をやれば事業の伸びは見えているように思える。加藤CEOによれば、すでにProgateで提供しているコンテンツ以外にも、自社でコンテンツを作ってProgateの枠組みで提供したいというプラットフォーム利用のニーズもあるという。日本のSIerなんかは自社フレームワークやレガシーシステムも多いだろうから、社内研修向けコンテンツの受託ニーズはありそうだ。

ただ、加藤CEOは注力するのは国際化。特に英語市場への進出だと言い切る。「国際化か法人向けかで悩んでいましたが、(メルカリCEOの)進太郎さんに国際化をやるしかないと言われて踏ん切りがつきました」という。3年ほど先行するCodeacademyは3000万ユーザーと桁が2つも違うが、「将来的にはCodeacademyと戦って行きたい」と加藤CEOは話す。今回の資金調達ラウンドで投資家として入っているフリークアウトが東南アジアに拠点を持つことから、東南アジアも視野に入れているそう。「小さく出してみて、どこの国で伸びるか、何が人気になるかを見ながらやっていく」(加藤CEO)。

現在は海外経験のある加藤CEOが英語化を進めているが、コンテンツの国際化を担当するチームメンバーを探しているところという。

初心者から「作れる人」を生み出す

プログラミング学習サービスや、コンテンツは非常に多く、従来からある書籍市場とも重なるところがある。では、どういう方面を目指すのか? 現在は初中級者向けに見えるが、もっとプロ向けコンテンツへも拡充していくのだろうか?

「初心者という入り口で終わるつもりは全くありません。ただ、ターゲットは圧倒的に初心者です。いちばんのKPIは「作れる人」が出ることなんです。起業したり、実際の開発をやる人が生まれること。実際、Progateで学習した人がその後にエンジニアとして就職したという話も出てきています」(加藤CEO)

プログラミング学習サービスは、その特性を考えると、プログラミング関連書籍市場のように「一人勝ち」のような状態にはならないのかもしれない。実際、Progateユーザーであっても、より中級以上のコンテンツが多いドットインストールを併用するユーザーもいるという。

Progate代表の加藤氏は2014年9月に東京大学を休学。2017年3月末に退学している。インターンを入れて現在はチームメンバーは15人。加藤氏と同じく退学したメンバーもいれば、卒業したメンバーもいるそうだ。

progate_photo