日本IBMが量子コンピューター活用のハッカソン「IBM Quantum Challenge Fall 2021」を開催、高校生以上参加可能

日本IBMが量子コンピューター活用のハッカソン「IBM Quantum Challenge Fall 2021」をオンライン開催、高校生以上参加可能

日本IBMは10月6日、量子コンピューターを使って産業分野の具体的な課題に挑戦するハッカソン「IBM Quantum Challenge Fall 2021」を10月27日(日本時間10月28日9時)より10日間開催すると発表した。「量子コンピューティングの産業応用に向けて」をテーマに、量子コンピューターが「実際に何に使えるのか?」を考えるための、産業応用の課題にチャレンジする。高校生以上の人なら、経験の有無を問わず参加が可能。

参加者は、IBMが運用している量子コンピューター・プラットフォーム「IBM Quantum Lab」上で、オープンソースの量子ソフトウェア開発キット「Qiskit」を使い、金融、量子化学、AI機械学習、最適化という、将来量子コンピューティングの活用が期待される4つの重要な産業分野の課題に挑戦する。「チャレンジを通じて基礎から応用まで学ぶことができるとともに、産業応用を意識した量子コンピューティングの活用に取り組むことができます」とのことだ。

IBM Quantum Challenge Fall 2021における4つのチャレンジ

金融では、「どの会社の株をどれくらいの比率で持てばベストな資産運用ができるか」といったポートフォリオの最適化など、量子コンピューターを使用した財務上の課題解決法を考える(Qiskit Finance documentationチュートリアル参照)。

量子化学では、量子コンピューターによる分子シミュレーションをもとに、変分量子アルゴリズムを用いた有機EL発光材料の励起状態の計算方法を考える(Qiskitテキストブックの4.1.2章Qiskit Global Summer SchoolのLecture22〜27Qiskit Nature documentationチュートリアル参照)。

量子機械学習では、従来型機械学習アルゴリズムの量子拡張版を使い、機械学習においてもっとも基本的な問題となっている特定クラスの分類問題をいかに解決するかを考える(Coding with Qiskit season 2のエピソード6Qiskit Machine Learning documentationチュートリアル参照)。

最適化では、巡回セールスマン問題、最大カット問題、ナップサック問題といったNP困難問題に、量子コンピューターで挑戦する(Qiskitテキストブック「QAOA を利用して、組合せ最適化問題を解く」Qiskit Optimization documentationチュートリアル参照)。

演習問題については、東京大学と慶應義塾大学の学生が検討し、出題する予定。

「IBM Quantum Challenge Fall 2021」概要

このハッカソンは、2019年から4回開催されている。2020年5月に開かれた第2回では、45カ国から1745人が参加。2020年11月の第3回では、85カ国3320人以上から応募があった。各回の概要は下のリンクで見ることができる。

第1回:2019年9月 https://github.com/quantum-challenge/2019
第2回:2020年5月 https://www.ibm.com/blogs/research/2020/05/quantum-challenge-results/
第3回:2020年11月 https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/quantum-challenge-2020-fall-results/
第4回:2021年5月 https://research.ibm.com/blog/quantum-challenge-2021-results

IonQがIBMの量子コンピュータ開発キット「Qiskit」をサポート

先にSPACを通じて上場したイオントラップによる量子コンピューティング企業のIonQが米国時間4月12日、同社の量子コンピューティングプラットフォームをオープンソースのソフトウェア開発キットであるQiskitと統合すると発表した。つまりQiskitのユーザーはコードに大きな変更を加えることなく、自分のプログラムをIonQのプラットフォームに持ち込むことができる。

これは一見大したことはないように思えるが、QiskitはIBM Researchによって設立されたIBMの量子コンピュータ用デフォルトツールであることは注目に値する。IBMとIonQ(公平を期すためにいうと、この分野の他の多くの企業も)の間には健全な競争関係があり、その理由の1つは両社がそれぞれのプラットフォームの中核で非常に異なる技術を採用しているからだ。IonQはイオントラップに賭けており、これによりそのマシンは室温で稼働できるが、IBMの技術ではマシンを過冷却する必要がある。

IonQは今回、Qiskit用の新しいプロバイダライブラリをリリースし、GitHub上のQiskitパートナーリポジトリの一部として、またはPython Package Index経由で利用可能な、Qiskit用の新しいプロバイダライブラリをリリースした。

IonQのCEO兼社長のPeter Chapman(ピーター・チャップマン)は「IonQは当社の量子コンピュータとAPIをQiskitコミュニティが簡単に利用できるようにすることに興奮しています。オープンソースはすでに、従来のソフトウェア開発に革命を起こしています。今回の統合により、広く適用可能な第一世代の量子アプリケーションに世界が一歩近づくことになります」。

一方で、これはIonQがIBMを少しいじめているようにも見えるが、Qiskitが量子コンピュータを扱うデベロッパーの標準になったことも認めているともいえる。しかしこのようなライバル関係を別にすれば、私たちは量子コンピューティングの初期段階にあり、まだ明確なリーダーがいないため、量子コンピュータ向けのアプリケーションを開発したいと考えている開発者にとっては大きなメリットとなる。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:IonQIBMQiskit量子コンピュータ

画像クレジット:Kai Hudek, IonQ

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:塚本直樹 / Twitter