大気中から二酸化炭素を抽出し、水と混ぜてウォッカを作る技術を開発したニューヨークに本社を置くスタートアップが、そのすべての生産能力をすべて手指消毒液の製造に振り向け、ニューヨーク市当局の協力を通じて、生産した製品のすべてを寄付することにした。それは、社会的距離の確保や自宅待機の措置が続く中、非常に重要となる出前スタッフを雇用している地元レストランにも届く可能性がある。
Air Co.は、2019年にウォッカの販売を開始したばかりだ。事実上、二酸化炭素の収支が完全にゼロの独自開発の工程(NASAとXPrizeから表彰されている)を採用している。空気中から二酸化炭素を1ポンド(約450グラム)取り出し、太陽光を基本とする再生可能エネルギーを使って水と混合し、純粋なエタノールを生産する。エタノールは手指消毒液の主要な成分でもある。最も効果的な作業を繰り返すことで、通常、60パーセントから95パーセントの濃度のアルコールが生成できる。
Air Co.のCEOで共同創設者のGregory Constantine(グレゴリー・コンスタンティン)氏が電子メールで私に話してくれたところによると、同社は社会を良くするという基本的使命に基づいて設立されたため、新型コロナウイルスのパンデミックに対抗する地元の活動に協力できる方法を考えていたという。そして自然の流れとして、同社の主力製品であるエタノールで、アルコール濃度70パーセントの手指消毒液を作ることを思いついた。
同社は、現在の(分別のない)買い占めにより、大手小売り店やAmazonで手指消毒液が売り切れや品薄になる風潮に乗って稼ごうとしているわけではない。むしろ同社は、生産能力の100パーセントを手指消毒液の生産に切り替えながらも、商品すべてを寄付すると決めている。
当初の生産量は思っていたよりも少ないが、製造方法を変えることで生産量を増やせるとコンスタンティン氏は話している。現在、50ミリリットル入りボトル1000本をなんとか生産しているが、今後も「1週間に1000本のペースで生産を続け、技術が追いつく限り供給量を増やしていく」とのことだ。
私はコンスタンティン氏に、手指消毒液を寄付する相手はどうやって決めるのかと尋ねた。このような慈善事業を喜ぶ団体はたくさんあるに違いない。
「私たちは、寄付したすべての製品を、市の助言に従い直接供給します」と彼は言う。「食事をデリバリーする人たちに我々の手指消毒液を使ってもらうよう、地元のレストランと協力したいとも考えています。バーやレストランは閉店を要請され、ここニューヨークでの外食産業の最前線はデリバリーサービスだけとなるからです」
今回の取り組みのために、彼らは利益を生む事業からまったく別の生産ラインに切り替えたわけだが、いつまでこれを続けるつもりかコンスタンティン氏に聞いてみた。どこまでこの必要性が続くのかは不確かながら、彼らは「できる限り」手指消毒液の生産を続けるという。
「私たちは生産ラインを切り替え、非常に限られた人数で運営しています。私たちの活動によりウイルスが拡散しないようにするためです」と彼は言い添えた。「すべての人と企業の小さな支援のひとつひとつが、こうした困難な時期に実を結びます。私たちはできることなら何でもやる覚悟です」
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(翻訳:金井哲夫)