クラウド営業支援「Senses」運営のマツリカが総額5億円を資金調達

写真右からマツリカ共同代表取締役 黒佐英司氏、飯作供史氏

クラウド営業支援ツール「Senses(センシーズ)」を提供するマツリカは10月30日、DNX Ventures、NTTドコモ、SMBCベンチャーキャピタル、いよぎんキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、9月13日時点で3.7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達は同社にとってシリーズBラウンドに当たる。同社は今後、協業先や提携先、VCなどから追加調達を実施し、シリーズ全体では総額約5億円を調達して、年内に本ラウンドをクローズする予定だ。

マツリカは2015年4月の設立。マツリカが提供するSensesは、共同代表を務める黒佐英司氏が前職のユーザベース時代の経験を踏まえ、営業の「現場目線の機能や操作性にこだわって作った」という営業支援ツールだ。

Sensesは、カード形式で直感的に案件管理ができるクラウド型のSFA/CRMシステム。G SuiteやOffice 365、サイボウズ、Sansanなど、メールやカレンダー、名刺管理の外部ツールと連携し、情報を再入力せずに一元管理できる。またAIを活用して、蓄積された情報から営業の成功・失敗事例を解析。営業担当者にいつ・誰に・何を・どのように行動すればよいか、次の行動をサジェストしてくれる機能を持つ点が特徴だ。

利用料金は「Starter(スターター)」プランが月額2.5万円(1ユーザーあたり5000円)から、「Growth(グロース)」プランが月額10万円(1ユーザーあたり1万円)から。ほかに導入支援やデータ解析、セールスコンサルティングなどのサポートメニューを含む運用プランが設定されている。Sensesは2019年10月現在、利用企業数は1300社を超え、利用継続率は98%という。

今回の資金調達は、2016年4月のシードラウンドでの約5000万円の調達、2017年8月のシリーズAラウンドでの約1.3億円の調達に続くもの。マツリカでは、調達資金を機械学習・深層学習による営業行動予測や売上予測などのモジュール強化に充てるとしている。また、出資者であるNTTドコモ、いよぎんキャピタルとパートナーシップ協議を進め、地方展開の強化も図る考えだ。

現場主義SFA「Senses」運営のマツリカが総額1.3億円を資金調達、中規模企業向け新プランも提供開始へ

クラウド型営業支援ツール「Senses」を提供するマツリカは8月21日、第三者割当増資による総額約1億3000万円の資金調達実施を発表した。引受先はDraper Nexus Venturesアーキタイプベンチャーズニッセイ・キャピタルの3社。

Draper Nexus Venturesとアーキタイプベンチャーズは、2016年4月のシードラウンドでも約5000万円をマツリカに出資済み。今回の出資に伴い、Draper Nexus VenturesのManaging Directorで、セールスフォースベンチャーズの元日本投資責任者を務めていた倉林陽氏が社外取締役に就任する。倉林氏はテラスカイSansanなどへの投資実績も持つ人物だ。

現場営業の目線にこだわって作ったSFA「Senses」

マツリカは2015年4月の設立。共同代表を務める黒佐英司氏は「NewsPicks」でおなじみのユーザベースで、経済情報検索サービス「SPEEDA」の販促・保守、営業・マーケティング戦略の立案・執行を担当していた。もう1人の共同代表である飯作供史氏も、ユーザベースで技術統括執行役員としてプロダクト運営、製品開発に携わっていた。

黒佐氏は、マツリカで営業支援ツールを手がけることにしたきっかけについて、こう話す。「ユーザベースにいた当時、上場準備に伴って営業やマーケティングの人員が増える中、SFA(Sales Force Automation:営業支援ツール)やCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)ツールを入れたいということで導入を検討したが、既存のツールではしっくり来なかった。何がかというと、現場にメリットがない点だ。管理者にとってはメリットがあるのだが、現場の営業担当にとっては『入力させられる』ツールになっている。BtoBツールとはいえ、実際に使うユーザーに価値が届いていないのは、もったいないなと感じていた」(黒佐氏)

そうして開発されたのが、クラウド型SFA/CRMツール、Sensesだ。案件や顧客の管理、レポーティング機能など、既存のSFA/CRMツールが持つ基本的な機能に加えて、「現場目線の機能や操作性にこだわって作った」と黒佐氏は言う。「これまでのツールとの違いはまず、入力しやすく使いやすい、という点。G SuiteやOffice 365、サイボウズ、Sansanとの連携機能があって、メールやカレンダーなどの情報を自動で取り込めるので、入力の手間を省き、簡単に情報をためることができる。UI/UXについても、3〜4クリックを費やしていたところを1〜2クリックで操作できるようにするなど、画面にとことんこだわった」(黒佐氏)

また「たまった情報を記録するだけでなく、活用できるようにした」点も、現場目線を重視した結果だと黒佐氏は続ける。「AIを使った情報解析で、担当者に次の行動を提案する機能を搭載した。過去の案件から似たような例で成功した行動をサジェストしてくれる」(黒佐氏)

Sensesは、2016年4月にサービスを公開し、2017年初からはより本格的にサービスを展開。現在、有料の基本プランとして「スタータープラン」を1ユーザーあたり月額5000円で提供し、利用企業数は100社に届く勢いだという。そしてマツリカでは今回の資金調達と同時に、中規模以上の企業を対象にしたアップグレードプランとして、「Growthプラン」の提供を発表している。

Growthプランでは、AIでのデータ解析機能を強化。現場担当者の次の行動をアシストするスタータープランの機能に加え、部門全体での売上や成約数などの目標達成に対するアラートを通知するなど、経営管理サイドのニーズにも応える機能を準備しているそうだ。また、営業担当が一定数以上となる中規模企業を想定し、営業組織の階層化にも対応する予定だという。

Growthプランは、まずは2017年内にベータ版として提供を開始。2018年には本格展開を行う予定だ。黒佐氏は「今後、スタータープランに代わる主力サービスに育てていきたい」と述べている。

「SMB向けのSFAとして競合と戦っていく」

今回の資金調達の目的について、黒佐氏は「まずは開発に投資する。現在開発中のGrowthプランを仕上げていくことと、既存ユーザーが増える中、新規機能だけでなく、サービスの安定運用に向けてもリソースを割いていく」と話している。また、営業、マーケティングの強化も図る考えだ。「2017年初のサービスの本格展開から半年以上を経て、販売のサイクルが整ってきた。どの程度マーケティングに(費用)投下すれば、どのぐらい成果が上がる、というのが見えてきたので、いよいよ拡販体制に入り、成長速度を上げていく」(黒佐氏)

なお、中規模企業向けとしてGrowthプランの提供を予定してはいるものの、黒佐氏は「今後の競合サービスとの戦い方としては『SMB(中小企業)向けのSFAならSenses』とまず思い浮かぶようなサービスにしたい」とも語っている。「今までならSFAといえばSalesforceしか選択肢がなく、小規模の企業では導入をためらっていたかもしれない。そこでSensesを第一の選択肢として考えてもらえるようにしたい」(黒佐氏)

また、中期的には「グローバル展開も考えている」と黒佐氏は言う。「SFAは国によって違うというところがあまりなく、ローカライズもそれほど要らないので、英語化して販売することも検討している」(黒佐氏)。さらに、営業支援ツールとしてのSensesを、人事や広報部門向けにチューニングすることで、新サービスラインアップとして提供する構想もあるという。社員や採用候補者、あるいはパブリックリレーションを図るメディアなどを、社内外の“顧客”と見立ててアプローチすることを考えれば、当然の発想かもしれない。「実際、Sensesの顧客の中に、既に人事・広報部門で利用しているケースがある。意図しない使い方を、ユーザーが見つけてくれている形だ。実はマツリカでも、新規営業開拓と既存顧客管理のほかに、採用や広報でSensesを使っている。自分たちでもナレッジをためたところで、プロダクトとして出したいと考えている」(黒佐氏)