宇宙空間でのCrew Dragonの手動操縦に初成功、同じ操縦をシミュレータで誰でも試せる

NASAのDoug Hurley(ダグ・ハーリー)宇宙飛行士はSpaceXの宇宙船であるCrew Dragon(クルードラゴン)を手動操縦することに成功した。この宇宙船は5月30日にケープカナベラルから発射された後、全自動でISS(国際宇宙ステーション)に向かった。Crew DragonのミッションはISSへのドッキングから軌道離脱、地表帰還まですべてコンピュータ制御によってコントロールされる。しかし自動システムになんらかの不具合が発生したときには宇宙飛行士は機体を自ら操縦しなければならない。

今回のテストは史上初の宇宙で機体を手動操縦する試みだった。Crew Dragonが定期的に運行される有人宇宙船として認証されるうえで手動操縦機能はカギとなる重要部分だった。

Bob Behnken(ボブ・ベンケン)とハーリーの両宇宙飛行士はSpaceXの新しい宇宙服を脱いでからテストに取りかかったが、これも当初からの計画どおりの行動だった。Crew Dragonのキャビンは与圧されており、ドッキングの過程に入るまで宇宙服を着用している必要がない。キャビンには動きまわるスペースが十分にあるし、宇宙服を着けていないほうが操縦も容易だという。

マニュアル操縦ではハーリー飛行士がタッチスクリーンを通じてカプセルに LVLH(機内からの垂直水平操作)を行うことも含まれていた。この場合の高度は地表からの距離だという。つまりCrew Dragonの操縦は現在の航空機の操縦に極めて近いものとなっている。微小重量環境ではあっても地球が「下」に位置するわけだ。

ハーリー飛行士が手動操縦操作を行う間、自動システムが操作をオーバーライドすることがないようコンピュータに指令が送られた。ただしドッキングを含めミッション全体をコントロールするコンピュータシステムを無効化して実際にCrew Dragonを動かす指令は送られなかった。

ハーリー飛行士は今回のミッション中に2種類のテストを実施する。1つは「遠距離操作」でISSから十分に離れた空間での操縦だ。 もう1つはこれと反対に宇宙ステーションの近傍での「近距離操作」だ。

両宇宙飛行士と同じシステムを読者も使ってみることができる。宇宙船を持っていなくてもOKだ。ブラウザからSpaceXが作成したISSドッキン・シミュレータを開くだけでいい。やはりそう簡単な操作ではないが、予想したほどには難しくない。これはインターフェースのデザインが非常に優れているからだと思う。

【Japan編集部追記】シミュレータはほとんどのブラウザに対応している。高精細度のISSの画像の中央部にひし形のオーバーレイでドッキングステーションが示される。画面左下に進行方向、右下に姿勢のコントロールがあり、タッチないしマウスクリックで入力する。反応は小さくかなり遅れて出現する。

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(翻訳:滑川海彦Facebook

SpaceXが初の有人宇宙飛行に成功、歴史にその名を刻む

米国時間5月31日、SpaceXはNASAのDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベーンケン)の二人の宇宙飛行士を、Falcon 9(ファルコン9)ロケットを使用してCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船に乗せて宇宙へ運び、人類史上の新たな歴史を作った。Demo-2と呼ばれる今回の打ち上げは、Crew DragonとFalcon 9の人間評価プロセスにおける最後のデモンストレーションミッションだ。このミッションを完遂すれば、通常の人の輸送に使用できることが証明される。なお当初は先週水曜日の5月27日に打ち上げが計画されていたが悪天候のために中止され、今回に仕切り直しとなった。

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(翻訳:Hiro Yoshida@pylori1971

SpaceXの試作機が地上でのエンジンテスト中に爆発

SpaceX(スペースエックス)は米国時間5月29日、Starship(スターシップ)SN4型ロケット試作機に搭載したRaptor(ラプター)エンジンのさらなる地上燃焼テストをテキサス州ボカチカで行ったが、ロケットは爆発した。これはこのタイプの試作ロケットに搭載したRaptorエンジンの4度目の燃焼試験となるが、他の燃焼試験と違い何が悪かったのか原因不明のままだ。

燃焼テストは、SpaceXがボカチカで建造している新型宇宙船Starshipの開発の一環となる。これはFalcon 9(ファルコンナイン)ロケットやFalcon Heavy(ファルコンヘビー)ロケットの後継機として使用されることになっているが、飛行テストを何度も成功させてはいるものの、まだ開発初期段階にある。

SpaceXは、Starship試作機の短距離弾道飛行のための認可を米連邦航空局(FAA)から取得したばかりだ。目標は、このSN4型試作機のエンジンの地上燃焼テストを成功させた後に短距離飛行を行うことだったが、5月29日の試験でロケットは完全に破壊されてしまったため、どう見ても予定どおりとはいかなくなった。下のNASASpaceflight.comのストリーミング動画をご覧いただきたい。

爆発が起きたのは、テキサス州現地時間の午後1時49分。エンジンが首尾良く点火してから、およそ2分後のことだ。我々は、今回の事故の原因と怪我人の有無についてSpaceXに詳細を求めている。こうした試験を行う際には、当然のことながらSpaceXは、実験区域にスタッフやその他の人間がいないことを確認するなど、十分な安全対策を講じている。

SpaceXの試作ロケットが大惨事に見舞われたのは、これが最初ではない。これまでも試験機の性能を試す圧力テストで、2度ほど痛い目に遭っている。SpaceXが開発を進める中で、何度も機体のストレステストを行っているのはそのためだ。最終的に実際の運用に使用される宇宙船は、ずば抜けて高い安全性と信頼性で期待に応えられなければならないからだ。

SpaceXはすでに、ボカチカ近くで作られているSN5も含め、新たな試作機の建造に入っている。そのため試験場がきれいに片付けば、すぐにでも最新の機体を運び込んでテストを再開できるだろう。これはSpaceXのCommercial Crew(商用乗員輸送開発)プログラムとはまったく別の事業なので、天候にもよるが5月30日か31日にに打ち上げが予定されている歴史的な初の有人飛行テストには何ら影響しない。

画像クレジット:NASASpaceflight.com

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXが宇宙船スターシップのテスト飛行許可を米航空宇宙局から取得

SpaceX(スペースエックス)は、同社の宇宙船Starship(スターシップ)のプロトタイプによる低軌道ミッションの飛行許可を連邦航空宇宙局(FAA)から取得し、米国テキサス州ボカチカの同社施設からのテスト飛行への道を前進した。SpaceXはStarshipプロトタイプを使った低軌道短時間の限定テスト飛行の準備を懸命に進めており、米国時間5月28日も現在開発中の同宇宙船4次プロトタイプの地上燃焼テストを実施した。

FAAはSpaceXに対して、同社が言うところの「再利用可能打上げ機」ミッションの実施許可を正式に与えた。これは実質的にこのStarshipプロトタイプが、同社のボカチカ打上げ施設で離着陸可能となったことを意味している。Elon Musk(イーロン・マスク)氏率いる宇宙企業はすでに同様なテストを実施しているが、これまでは「Starhopper」(スターホッパー)の早期プロトタイプを使っていた。これは計画されているStarshipの生産モデルよりも小さくシンプルだ。目的はSpaceXがStarshipの推進に用いるRaptor(ラプター)エンジンの能力を証明することにあり、エンジンの1基を使って短期飛行テストを行うだけのため使用された。

昨年の飛行テスト以来、SpaceXはStarshipのフルスケールプロトタイプを複数開発してきたが、実際に飛ばすところまでは至っていない。事実、いくつかのStarshipプロトタイプは耐圧試験に失敗している。しかし現在テスト飛行を準備しているSN4は耐圧試験だけでなく、Raptorエンジン1基による地上燃焼試験にも合格した。

現在の計画では、このプロトタイプをStarhopperの時と同様の「短期」飛行させる予定であり、最大高度は約500フィート(150m)だ。それに成功すれば、次のバージョンには複数のRaptorエンジンを搭載して高高度のテスト打上げを行う。SpaceXは、新しいバージョンのStarshipを次々と前のテストが完了するのを待たずに製作していて、全体の開発期間を短縮しようとしている。

SpaceXはある時間とも戦っている。同社はNASAが再び月へ人間を送り込むための着陸船を開発・製造するアルテミスプログラムの契約を勝ち取った3社に入っている。NASAはこの復活の旅を2024年までに実行しようとしており、契約ではそれぞれの会社がその時期までに着陸船を用意することを要求してはいないが、最終目標であることは間違いない。たとえそれが契約している3社の中で自慢する権利を得るためだけだとしても。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Crew Dragonの最新型宇宙服は通信装置と温度調節の機能を内蔵、タッチパネル対応グローブも装備

米国時間5月27日、スペースシャトルの引退以来、初めて人間を軌道に打ち上げる米国製宇宙船に乗るのはもちろん人間だ(悪天候のため5月31日に延期)。この人たちが着る最新型宇宙服も、また歴史的なデビューを果たすことになる。本日の打ち上げ(ライブ配信)に先立ち、NASAとSpaceX(スペースエックス)はその新型宇宙服の新鮮な姿を公開した。もうすぐ、たくさん見ることになるだろうが。

この宇宙服は、NASAと、今回宇宙船に乗り込む宇宙飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏との協力のもとでSpaceXが開発した。彼らは、現代の素材と技術を使い、Crew Dragon(クルー・ドラゴン)と一体化できる着心地のいい形状を目指した。

ただし、こちらもNASAでデザイン変更が進められているのだが、何十年間も使われてきたおなじみのEVAスーツ(船外活動用宇宙服)に置き換わるものでないことは知っておくべきだろう。今回、ベンケン氏とハーレー氏が着るのは、戦闘機のパイロットが着るものと同様の与圧服だ。短時間の真空状態や高熱といった打ち上げの際に想定される危険から身を守るために飛行士の体に合わせて作られるもので、外宇宙には出られない。

 

NASA:店では売ってません。LaunchAmerica宇宙服は特注品です

このSpaceX製の宇宙服は、耐火性と耐衝撃性を備え、通信装置と温度調節の機能を内蔵する。ヘルメットには、当然ながら無線とマイクが組み込まれていて、空気と電源は、宇宙船内の各飛行士の座席に接続する1本のヘソの緒のようなケーブルで供給される。

「このスーツの開発で重視したことに、簡単に使えるという点がありました。飛行士が着座したとき、文字どおりただプラグインするだけで、後は宇宙服が勝手にやってくれるという感じです」とSpaceXのChris Tripp(クリス・トリップ)氏は、スーツを紹介したNASAの動画で話している。「これはまさに宇宙船の一部なのです。そのため私たちはこれを、スーツとシートの一体型システムと考えています」。

この10年間のエレクトロニクスとソフトウェアの進歩を考えると、宇宙飛行士にもミッションコントロールにも、進化し簡便化されたコミュニケーションが期待されてしかるべきだ。ノイズリダクションや音声検知など、私たちがビデオ通話に求めるような機能は宇宙でも大いに活躍する。

もう1つ、面白い変化があったのはグローブだ。頑丈であると同時に柔軟でなければならない。さらに導電性も必要だ。Crew Dragonの操作はタッチパネル方式だからだ。操作のたびにグローブを外さなければならないのでは煩わしい。

関連記事:タッチで操縦する宇宙船Crew Dragon、僕らはまた一歩SF映画に近づいた

「彼らとともに操作の癖を特定してゆきました。明確な操作ができるために、タッチのミスをなくすために、間違った入力を防ぐために、その人のタッチの仕方を画面に登録しておくのです」と、先日のNASAの記者会見でベンケン氏が話していた。

宇宙船に積み込まれるその他の物と同じく、宇宙服も今回初めての実地テストとなる。とは言えもちろん、あらゆる評価が事前に社内で済まされている。

「見栄えが良く、それでいて高性能なスーツを完成させるのに、3年から4年近くかかりました」とSpaceXの創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は先日のインタビューで話していた。「いつか自分もあれを着たいと、子どもたちに夢を与えたいのです。宇宙飛行士になりたい、進化した宇宙船で宇宙航空エンジニアとして働きたい、と熱い思いを抱かせたいのです。今こそ、宇宙への夢に再び火を点けるときです」

関連記事:SpaceX初の有人宇宙飛行は天候不順で延期、打ち上げは日本時間5月31日早朝に

画像クレジット:NASA

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXによる初の宇宙飛行士打ち上げをライブ中継、打ち上げは5月31日延期へ

SpaceX(スペースX)は米国時間5月27日の遅くに、フロリダのケープ・カナベラルから初の有人宇宙飛行ミッションを実施し、自社の歴史の中で大きな節目を迎えようとしている。このミッションは、NASAの宇宙飛行士のDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベーンケン)を国際宇宙ステーション(ISS)に運ぶ、Crew Dragon宇宙船開発プログラムの集大成となる、「Commercial Crew Demo-2」である。

打ち上げは現在、ケネディ宇宙センターから東部夏時間5月27日午後4時33分(日本時間5月28日午前5時33分)に設定されているが、気象条件にも左右される。ここ数日の天候はあまり良くなかったが、SpaceXとNASAは打ち上げを遅らせるかどうかについて、打ち上げ予定時刻の約45分前に電話で協議する。もし今日の打ち上げが実施されなかった場合、5月30日と5月31日にも予備のウィンドウがある(編集部注:新たな打ち上げ日程は、東部夏時間5月30日午後3時22分(日本時間5月31日午前4時22分)。

これはSpaceXにとって初の有人宇宙飛行となり、2011年のスペースシャトル計画の終了後、アメリカからの初の有人ロケットの打ち上げとして、歴史に名を残すことになる。NASAは2010年にCommercial Crewプログラムを開始し、宇宙飛行士の打ち上げ能力を復活させるために官民のパートナーシップを模索し、最終的にはSpaceXとBoeing(ボーイング)の2社が有人飛行に適した宇宙船の設計・開発を行うことになった。SpaceXはこのプログラムで初めて、クルーを搭乗させた打ち上げを試みる。

Demo-2ミッションは、基本的にはCrew Dragonの最終テスト段階であり、その後は同宇宙船とそれを軌道に運ぶロケットのFalcon9が、定期的な宇宙飛行士輸送のための認証をNASAによって受けることになる。つまり、ISSへの宇宙飛行士の定期的な輸送サービスの提供を開始し、その移動手段としてロシアのSoyuzにくわわることを意味する。

一方、SpaceXはすでにCrew Dragonを民間人や科学者など、他の商業目的の乗客にも提供する計画を開始している。そもそもCommercial Crewプログラムの背景にあるのは、NASAが宇宙飛行士の輸送コストを下げるために、他の有料顧客に座席を提供して打ち上げや飛行にかかる費用を相殺することにある。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter