ブロードバンドインターネットをワイヤレスで実現するStarryが140億円相当の資金調達へ

米国消費者のテレビ視聴を支配するケーブルテレビと、そのボスキャラComcastをやっつける、まだ終わりの見えないクエストが、新たにお金を必要とし、大望を抱くスタートアップとしてのさらなる投資を得ようとしている。

その主人公Starryは、ボストンに拠を置くワイヤレスのブロードバンドインターネット企業だ。同社はこのほど、Pitchbookがデラウェア州の株式発行登記所で見つけた文書によると、シリーズDで最大1億2500万ドルの資金調達を申請している。Starryがその全額の調達を完了すると、同社の投資前評価額は8億7000万ドルになる。

同社のスポークスパーソンは、すでにその新たな資本を調達したことを確認したが、その数字は明かさなかった。同社はこれまで、FirstMark CapitalとIACAから1億6000万ドルあまりを調達している。最近では、昨年7月に1億ドルのシリーズCを完了した。

このインターネットスタートアップは、光ファイバーを肩にかついでいるコンペティターたちと違って、もっぱら無線アンテナと高層ビルの屋上などに据え付けた送信機を使ってミリ波の信号を、建物の既存の配線に接続している受信機に送る。Starryの薄くて小さいルーターが、セットアップやカスタマーサポートへの連絡、ペアレンタルコントロール(親が子のインターネット利用を管理)、スピードテストなど、必要なことをすべてやる。同社の主張によるとアップロード/ダウンロードの最大スピードは200mbps、月額50ドルでデータ無制限、長期契約の義務なしだ。

この技術を疑う人たちもいる。光ファイバーの敷設はインターネット企業にとって高額な投資を要するが、高周波の電波の使用にも別の問題がある。信号が悪天候や障害物に邪魔されるが、しかしStarryは理想に満たない条件下でもパフォーマンスは良いと言っている。

CEOのChet Kanojia氏はこう言う。「ボストンで堅牢なネットワークを作った。うちの技術はいい仕事をしている。1年のすべての季節を経験し、さまざまな天候や木々の葉の繁茂状態でテストした。その結果、わが社のネットワークのパフォーマンスにはとても満足している」。

昨年はStarryにとって飛躍の年で、ホームのボストンだけでなく今ではロサンゼルスとニューヨーク、デンバー、そしてDCにも進出した。

Kanojiaは以前Aereoを創業し、9700万ドルのベンチャー資金を得て、ライブの(今放送中の)テレビをWebで見るという消費者の夢を実現しようとした。当時それはあまりにもディスラプトすぎて、大手の放送局ネットワークに訴えられ、最高裁で敗訴して閉鎖した。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Starryはまったく新しい無線インターネット―Aereoのファウンダーが既存ISPに挑戦

2016-01-28-starry

スタートアップはインターネットを使ってありとあらゆる産業を変革中だ。しかし誰もインターネットそのものの構造に手を触れようとしていないのは不可解だ。

なるほどインターネット接続サービスは巨額の費用を必要とするビジネスだ。そして日毎に増大するビデオのトラフィックによる輻輳を理由としてますます料金を吊り上げることが可能となっている。決まり文句のように聞こえたらお許しいただきたいが、これこそまさに変革を必要とする状況ではないだろうか。

そこでStarry Internetが登場する。

計算

テレビの無料中継というサービスに失敗したAereoだが、ファウンダーのChet Kanojiaは現在新しいインターネット接続サービスであるStarryを立ち上げ中だ。

Starryはミリ波の無線テクノロジーを利用することにより、ブロードバンド接続のインターネット・サービスのあらゆる側面をカバーできるとしている。つまり各家庭に最大1GBpsの接続をワイヤレスで提供できるとしている。

われわれはKanojiaに電話でインタビューし、このビッグ・プロジェクトについて取材した。Kanojiaは次のように説明した。

既存のISPの場合、家庭にインターネット回線を施設するごとに2500ドル程度のコストがかかる。コストだけでなく、さまざまな規制がさらにスピードを遅らせている。Starryなら各家庭にわずか25ドルでブロードバンド接続を提供できる。しかも当局の規制による遅れはゼロだ。

Kanojiaは実際のユーザーへの課金の詳細については明らかにしなかったが、接続速度(最高1Gbps)に応じた各種のプランを用意しているようだ。KanojiaによればComcastやTime Warner Cableなど、現在のアメリカのISPの料金体系に比べて、「家庭の負担は一桁以上少ない」という。

Starryはまた「転送量の月当たり上限」などは決して設けないという。Kanojiaによれば、この「データ転送量の上限」は既存ISPにとって今後ますます大きな問題になってくるはずだという。

テクノロジー

Starryの作動の仕組みはこうだ。

このサービスはミリ波帯におけるアクティブ・フェーズドアレイと呼ばれるテクノロジーに基いている。そう聞くと難解だが、なんとかわかりやすく説明しみたい。

Starryは各都市の建物の屋上に無線ノードを設置する(Starry Beamと呼ばれる)。このノードはStarryが接続をカバーする人口密集地に置かれ、現在未使用の30GHz以上の波長の電波を用いる。

Starry Beamは多数の方向にミリ波を発信する(アクティブ・フェーズドアレイ)。この電波はビル壁などに反射し、最後にStarry Pointと呼ばれるユーザーのノードに達する。

Starry Pointはユーザーの家庭の窓外に置かれ、Starry Stationと呼ばれる室内の革新的なWiFiルーターと有線接続される(この点についてはすぐに詳しく説明する)。

Screen Shot 2016-01-27 at 10.49.08 AM

WiFiインターネット接続はかなり以前から実用化されているが、通常は見通し範囲でのみ作動し、最大速度もケーブルモデムなどと同等だ。無線接続は戸毎にに配線するとコストが高くなる田園地帯などでISPに利用されている。.

Starryのテクノロジーは、これと逆に、人口が密集した都市部を対象としており、アクティブ・フェーズドアレイ・テクノロジーを利用するため、接続に中継無線タワーが見通せることを必要としない。

ビジネス

しかしStarryがユニークなのはテクノロジー面だけではないとKanojiaは言う。Starryはルーターやらモデムやら配線やらのややこしいテクノロジーを一切廃している。そのためインストールに専門家は必要ない。簡単な英語さえ読めればいいのだという。

Starryとブロードバンド接続の契約をしたときにユーザーが受け取るパッケージにはStarru Beamと接続できるStarry Point送受信機が入っている。これは窓の外の適当な場所に設置するだけで終わりだ。専門知識は必要ない。

価格349ドルのStarry Stationはこれまでのインターネット・ルーターの常識を覆すものだとKanojiaは説明する。

Screen Shot 2016-01-27 at 10.53.17 AM

パッケージにはインストールと設定を容易にする3.6インチ・スクリーンのAndroidデバイスが含まれる。Starry StationにはInternet Health Scorと呼ばれるソフトウェアが付属し、 スピードテストの大手Ooklaによるインターネット接続のモニタリングが常時行われる。

Starry Stationにはデバイス探索ソフト、ネットワーク・マップ、時間と内容を規制できるペアレンタルコントロールなどのソフトウェアと、利用のためのアプリがバンドルされている。

なおユーザーは349ドルのStarry Stationを必ずしも購入しなくてもよい。.

歴史

ファウンダー、CEOであるKanojiaは、Starryには既存のISPに比べて3つの大きなな優位性があるとしている。 その1と2はコストに関連するもので、回線開設のためのコスト、その後の運用と維持のコストがStarryの場合、格段に安いという。

3番目の優位性はビデオに関するものだが、これはKanojiaのこれまでの苦闘に深く関連している。

Kanojiaの前回のスタートアップ、Aereoは画期的な集合アンテナにより、テレビ信号を家庭のコンピュータなどに配信するサービスを提供して大成功を収めかけたが、全国をネットするキー局に訴えられ、法廷で完膚なきまでに打ちのめされた

Aereoがテレビ局にとってかくまで脅威だったのはわれわれのビデオの視聴方法と深く関連する。つまり現在のビデオ視聴は断固として既得権にしがみつく構えの既存のケーブルネットワークごとに寸断されている。ところが視聴者はコード・カッターという新語ができたことでも分かるように、徐々にかつ不可逆的にケーブルテレビから去りつつある。

「バンドルの魅力は薄れてきた」とKanojiaは言う。バンドルとは多くの既存ISPがケーブルテレビとインターネット接続をパッケージにしてユーザーに提供している現状を指している。

Aereoはケーブルテレビに関する前例からいえば合法的なはずだったが、訴訟は最高裁まで持ち込まれ、そこで「〔Aereoは〕あまりにもケーブルテレビの事業に似ている〔ので違法だ〕」と認定されてしまった( こちらで全記録を読める)。

要するにAereoも新しい無線テクノロジーでインターネットに変革をもたらそうとしていたが、その対象はテレビ番組の配信に限られていた。

Aereoチームのメンバーを多数含むStarryは、今回、インターネットのブロードバンド接続という全く新しい武器を手にしている。

Starry Internetは2月5日にボストンで運用を開始する。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+