アフリカを次のグローバル食料基地にするSunCultureのソーラー揚水ポンプ

国連のレポートによると、人口増加の需要に対応するには世界の食料供給を2050年までに倍にしなければならない。供給量を増やすために新しい耕作地を確保するというプレッシャーが高まる中、次の世界の食料基地候補として世界の目はアフリカ大陸に向けられている。

アフリカ開発銀行によると、世界の未開耕作地の65%がアフリカにある一方で、アフリカ諸国は農業分野の生産性向上で大きな障壁に直面している。

アフリカでは80%の世帯が農業で暮らしているが、灌漑を使っているのは4%にすぎない。そして多くの世帯が安定した安価な電力にアクセスできていない。この2つの問題を解決しようと、SunCulture(サンカルチャー)を共同で創業したSamir Ibrahim(サミール・イブラヒム)氏とCharlie Nichols(チャーリー・ニコラス)氏は8年を費やしてきた。

新しい融資モデル、それから専用の太陽光発電で動く発電機と揚水ポンプでニコラス氏とイブラヒム氏は収入を増やすために同社の設備を使っている顧客のネットワークをすでに構築した。そうした顧客は価値の高い作物を栽培し、より広い面性を耕し、そして多くの家畜を育てることで収入を以前の5〜10倍に増やすことを目指している。

同社は事業をアフリカ中に拡大するために1400万ドル(約15億円)の資金調達をクローズしたばかりだ。

「我々は2050年までに食料生産を倍増させなければなりません。食物を育てるのに十分なリソースがあるところはというとアフリカです。農業に従事する人が大勢いて、広大な土地が広がり、リソースも豊富です」とイブラヒム氏は述べた。

アフリカの小規模農家は生産性を上げるにあたって2つの大きな問題に直面している、とイブラヒム氏は指摘した。1つはマーケットへのアクセスだ。これは食料の無駄の大きな原因となっている。そしてもう1つの問題は、気候変動によって悪化している安定した栽培条件の欠如による食料安全保障だ。

2020年初め、とある小規模農家は「雨季は予測できません。雨が降るはずなのに降らないかと思うと、突然降ったりします」とThe Economist紙で語っている

ニューヨーク大学を2011年に卒業したイブラヒム氏は長らくアフリカに引きつけられていた。同氏の父親はタンザニアで生まれ、母親はケニアで育ち、2人とも後に米国にたどり着いた。イブラヒム氏は成長する過程で東アフリカについての話を聞かされた。

ニューヨーク大学で経営学の学位取得を目指しているとき、イブラヒム氏はニューヨークで開催されていた新進の起業家のためのイベントでニコラス氏に出会った。当時ニコラス氏は米国の大規模ソーラープロジェクトで働いていた。

2人は友達になり、ニコラス氏が読んだ農業分野での再生可能エネルギー応用についての論文に端を発てビジネスの機会について議論した。

ニューヨーク大学後援の事業計画コンペティションで2位を獲得したのち、2人は事業計画が1位に値するものであることを証明しようと決心した。ケニア行きの航空券を予約し、ソーラー発電で動く揚水ポンプと発動機を販売する事業のパイロット試験立ち上げに挑んだ。

太陽光で動く揚水システムは概念上、何年も展開されている。しかし太陽光発電とエネルギー貯蓄の施設のコストが下がるにつれ、そうしたものを使うシステムは多くの人が利用しやすいものになった。

そうしたタイミングも作用して、SunCultureは他の企業がつまづいていたところで成功することができた。「多くのマーケットで再生可能エネルギーの発電コストが既存の電力コストと並んだちょうどそのときに我々はここにやって来ました。まさに多くの開発投資家が農業とエネルギーの結合に資金を投入しているときでした」とイブラヒム氏は話した。

当初、同社はエネルギー発生と揚水のシステムを、ナイロビのような都市に仕事を持ち、そして田舎に所有する土地で作物を育てる中所得の農家に販売した。こうした「テレフォン農家」はSunCultureの初期のシステムを導入するのに喜んで5000ドル(約52万円)を払った。

いまやシステムのコストは500〜1000ドル(約5万2000〜10万4000円)で、同社の「pay-as-you-grow(成長するにつれ支払う)」モデルのおかげで世界中の農家5億7000万世帯にとってアクセスしやすいものになっている。

アフリカで提供されるあらゆるタイプのソーラーシステムの中でSunCultureが人気のビジネスモデルになったのは、ちょっとしたひねりのおかげだ。イブラヒム氏によると、投資家はオフグリッドのソーラーエネルギーの開発と、M-kopa、Greenlight Planet、d.light design、ZOLA Electric、SolarHomeといった小売テック企業に10億ドル(約1040億円)近くを注いだ。さまざまな意味で、SunCultureはそのモデルを農業への応用へと拡大しているだけだ。

「我々はサービスと融資を組み合わさなければなりませんでした。これがうまくいったのは、我々の顧客が収入を4、5倍に増やしているからです」とイブラヒム氏は述べた。「収入のほとんどは消費にいっていました。生産に向けられるのは初めてです」。

SunCultureのハードウェアは300ワットのソーラーパネルと、440Whのバッテリーシステムで構成される。バッテリーは最大4つのライト、電話2台、プラグイン式の水中に沈める揚水ポンプをサポートできる。

同社のベストセラーのプロダクトラインは、2.5エーカー(約1ヘクタール)の農地の灌漑に対応する、とイブラヒム氏は話した。「他の応用に向けて、いまはまだ入り口地点にすぎないととらえています。アフリカで最大のソーラー企業になります」 。

Energy Access Ventures (EAV)、Électricité de France (EDF)、Acumen Capital Partners (ACP)、Dream Project Incubators (DPI)といった投資家から調達した1400万ドルで、SunCultureはケニア、エチオピア、ウガンダ、ザンビア、セネガル、トーゴ、コートジボワールに進出する予定だと明らかにした。

今回のディールではEkta Partnersがファイナンシャルアドバイザーを務め、その一方で米国際開発庁のケニア投資メカニズムプログラムのもとでCrossBoundaryが市場機会や競争についての分析を含む助言サポートを提供した。

カテゴリー:フードテック
タグ:SunCulture農業アフリカケニア資金調達

画像クレジット:SunCulture

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(翻訳:Mizoguchi