労働者の苛酷な状況などをあばくBBCの調査報道番組にAppleが応答

Appleは最近、BBCのPanoramaという番組で、調査報道の対象になった。その番組は、記者たちが見つけたことの一部として、Appleがパートナーに関して明言している規範にAppleの供給業者(サプライヤー)たちが違反しているさまざまな事例を、提示した。BBCが報道した違反には上海郊外のPegatronの工場における問題や、インドネシアの錫鉱山の操業などサプライチェーンの最末端の問題も含まれていた。

BBCの報道は、Pegatronの社員寮の過密状態や、強制残業、未成年労働者、休日のない週、などの問題を詳細に報じている。インドネシアの鉱山では、鉱業として組織化されていない操業形態による錫鉱石の収集を描いている。彼ら未組織労働者たちが拾い集めた鉱石は一人々々ばらばらに精錬業者に売られ、サプライチェーンの上の方の部品メーカーに提供される原料が作られる。

これらの報道に対してAppleは公式の声明を発表し、その中で、供給業者の施設における条件改善に同社がこれまで努めてきたことを詳述し、今後もその取り組みを継続する、と述べた。Appleは、同社の対供給業者ポリシーを完全に遵守している、とは主張していない。むしろ同社はそのWebサイトを定期的に更新して、コンプライアンスの現状を報告している。そのサイトでは同社が供給業者のところで見つけた問題を同社自身の報告で詳述し、それらを解決するために同社がとっている対策を略述している。

The Telegraphが入手した長い社内メールは、本誌TechCrunchが別の情報筋から本物と確認したが、それにはBBCの結論に対するさらに詳しい応答がある。書いたのはAppleのオペレーション担当SVPのJeff Williamsで、自分もAppleのCEOのTim Cookも、あのイギリスの放送番組が行った告発に深い怒りを感じた、と言っている。

Williamsの書簡は、同社の製品に不法なソースからの錫が使われていることを、Appleが否定したことはない、と指摘している。そしてむしろ、同社がそれを認めたことは、以前の記録に残っている、と。これに関するAppleの考え方は、供給業者がインドネシアから買うことを許容し続けることによって、今後の労働条件の改善をプッシュできるが、その、鉱山の体をなしていないような鉱山を完全に閉山したら、そこが抱えている問題に対して何もできない。最終ユーザがAppleとは知らない部品メーカーは、また別の不法ソースから原料を入手し続けるだろう。

Pegatronの工場の労働条件についてWilliamsの書簡は、指摘されている問題はApple自身が行っているものではなく、むしろ、供給業者の設備施設の状況に対して行っている改善や監査の取り組みの一環だ、と言っている。彼は、週の最大労働時間を60時間とする、給与のピンはねをする労働者斡旋企業を解体する、などのポジティブな成果を強調している。

BBCが隠しカメラまで使った今回の報道は、たしかにアジアの供給業者の工場における労働条件を明るみにさらすことに成功している。問題は依然として深刻だが、しかしこれらの地獄のような映像の一部は、最近行われた改善を反映している。ただし欧米の一般人の目から見ると、それは改善とは見えないのだ。

たとえば作業現場で居眠りをしているシーンは、The Daily Mailが最近報じたように、仮眠をとってもよい、という最近導入された労働者福祉の一環なのだ。これまでは、長時間労働の挙句自分のデスクに向かったまま寝てしまうという同じ光景が、厳しく罰せられるだけだった。

結局のところ、そういう、ちまちまとした“改善”がいくつかあっても、これらの施設の労働者たちは、欧米の工場労働者に比べればはるかに酷い状態のままだ。しかしAppleがCookの下(もと)で最近行っている透明化努力は、継続的な改善に向けての本気の取り組みを示しているようでもある。CookがCEOになる前までのAppleでは、供給業者に問題があることの認識や、その名前すら、公式に発表されることはなかった。とはいえ、まだやるべきことは山のように残っているのだが。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))