2021年3月に開始したスタートアップとその支援組織、そしてTechCrunch Japan編集部をつなぐSlackコミュニティ「TC HUB」。人気記事の登場企業をゲストに、Startpassの小原氏がモデレーターとしてインタビューをしていく第1回イベントは2021年5月に開催されたが、その第2回が同年7月30日に開催された。今回もバーチャルコミュニケーションプラットフォームのoVice上での開催となり、セッション後にはゲストを交え、参加者同士の交流が行われた。
今回ゲストは、こちらの人気記事に登場するobnizのCEOである佐藤雄紀氏と共同創業者の木戸康平氏。2人とも小学生の頃からプログラミングやハードウェア開発に取り組み、早稲田大学創造理工学部総合機械工学科で出会い、在学中にiPhoneアプリ「papelook」を開発。アプリは1000万ダウンロードを達成している。卒業後は各々別の仕事をしていたが、2014年に同社を共同創業している。obnizは「すべての人にIoT開発の機会を」を使命に掲げ、専用クラウド上でプログラミング、そしてデバイスや対象物の管理・操作まで対応できるIoT開発サービスを提供している。ソフトウェアとハードウェアそれぞれの開発に携わり続けてスタートアップするに至った2人に小原氏がインタビューを通して起業家へのヒントとなるポイントを探った。
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お互いの得意と苦手を補完する2人の共同創業者
11歳でプログラミング解説をするウェブサイトをリリースし、高校卒業後には漫才師を目指して吉本興業12期生として活動したという異色の経歴の佐藤雄紀氏。彼の強みは、常識にとらわれずに、人と違う視点を持って考えるようにしているところにあるという。しかしながら、佐藤氏はチームで物事を進めることは苦手としている。一方、木戸康平氏は佐藤氏の意図を汲み、他のメンバーに理解してもらえるよう咀嚼し潤滑油の役割を得意とする。共同創業者の2人は良い補完関係にあるといえるだろう。
2人とも幼少期からソフトウェアやハードウェアに取り組んできている。木戸氏は「自身が気になっている分野をまさにobnizでドッグフーディングできると考え、共同創業者としてジョインした」と語る。立ち上げ当初は資金も人もなかなか集まらず苦労したそうだが、2人の専門性や相性、佐藤氏のオウンドメディアが築いてきた信用などが創業期を支えた。
逆転の発想で作ったIoTプロダクト
2014年11月に設立され、2018年4月に公式デバイスの販売を開始したobnizは、現在に至るまでどのような変遷をたどったのだろうか。
obnizは「obnizOS」が搭載されたさまざまなタイプのデバイスを提供、同社サービスを使えば専用クラウド経由で簡単にIoTが始められるようになっている。操作する半導体チップ自体は従来さまざまなモノに埋め込まれていたが、PCやスマートフォンを皮切りに、家電やクルマなどに搭載されたチップが次々とインターネットに接続され、IoTは広く知られるようになっていった。「Wi-Fi接続用チップが安価で購入できるようになり、ウェブ専門エンジニアがアプリに着手してみるきっかけも増えた。このIoTのラストワンマイルを汎用的にしていくのがobniz。ソフトウェアだけでなく電子回路も触って欲しいという気持ちから、『object』+『-nize』ということで『obniz』と名付けました」と佐藤氏は語る。
何故、obnizはハードウェアも提供するのか。PCやスマホの方が先に普及しているのだから、一般的に考えると家電を便利にするならば、その家電にスマホの機能を搭載すればいいという発想になる。しかし、ON / OFF程度しか求めない家電にスマホレベルの機能は過剰だ。「そこで専用ハードウェアを開発することにしたのです。またソフトウェアを書き込んでもらうこと自体も参入ハードルを上げてしまうので、クラウドサービス込みのモノの販売という現在の形にたどり着きました」と佐藤氏はいう。
グローバルでの展開を視野に入れつつ、まず2017年12月に「obniz Board」でKickstarterでのクラウドファンディングに挑戦。世界で160万円を集めプロジェクトは成功するも、人脈頼りの集金には限界があり、大きな売上げが立つようになったのは、2018年5月以降に電子回路販売サイトなどの販路を確保してから。その後の事業拡大にともない、支払いサイトの影響によるキャッシュフロー悪化を回避するため、同年11月にはUTECから約1億円を調達した。
前に進むたびに課題に直面し、チームワークでそれを乗り越えてきたobniz。佐藤氏は「自分もまだ成功フェーズにいないので大きなことを言える立場ではないが、挑戦したいことがある人は、優柔不断でもいいからぜひやってみて欲しい」と語る。木戸氏も「自分はプロダクトマーケットフィットを重要視して事業に取り組んでいるが、常に広い視野を心がけている。スタートアップをするときは、特定の技術や分野に特化することが多いと思うが、既存概念にとらわれずぜひ柔軟な発想をしてみて欲しい」とスタートアップにエールを送った。
TC HUBのサポーターにJETROがジョイン
また、今回のイベントでは、サプライズとしてJETROスタートアップ支援課も参加も発表された。日本企業の海外展開を支援する同社だが、グローバル・アクセラレーション・ハブの提供や海外展示会出展支援など、さまざまなプログラムを展開する。今後、TC HUB内には専用窓口チャンネルが設置され、コミュニティ内のスタートアップが気軽に申し込みや相談ができるようになる。
TC HUBでは今後も多様なイベントやサポートを予定している。関心のある方はこちらから。
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