米下院はアマゾンのハードウェア事業を反競争的と攻撃

大手テクノロジー企業の反競争的行為に対する米国時間7月29日の議会の審問は、もっぱら各社のコアビジネスが対象だったが、その長時間にわたる質問の中ではAmazon(アマゾン)のハードウェアも厳しく審議された。

これは小さな一歩だが重要な意見交換だ。なぜなら、同社のサービスの幅広さに触れているほか、ある部分での優勢がアマゾンビジネスのほかの部分における反競争的な行為を意味していることもありえるからだ。

関連記事:テック企業大手は新型コロナ蔓延で利益を得ているので規制が必要」と米議員が主張

メリーランド州選出の下院議員であるJamie Raskin(ジェイミー・ラスキン)氏にとっては、アマゾンのベストセラー製品であるEchoFire TVデバイスの両方が、両デバイスをめぐる同社の事業戦略と他社との交渉に関する最近の報道の影響でターゲットになった。

Echoは同社がスマートホーム市場へ進出するための製品であり、その市場は消費者向けテクノロジーの次の主戦場であると多くの人が見なしている。Echoは、アマゾンのテクノロジーの中でも人気の高い製品であり、ラスキン氏によるとスマートホーム市場の約60%を捉えている。

議員はアマゾンのCEOあるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏を、Echoに関する2つの点で攻撃した。第一は同社の価格政策で、Echoの価格は製造原価を相当下回っているので、他社が競合製品を出すのが不可能なこと。

「Echoの高い普及率のため、アマゾンはそのほかの反競争的な行為に関与している」とラスキン氏は主張した。その一部は、コロラド州選出下院議員のKen Buck(ケン・バック)氏がWall Street Journalの記事を引用しながら前の質問で概説している。それによると、アマゾンは同社のEcho製品と音声アシスタントAlexaにフォーカスした投資部門を用いて、小さなスタートアップ企業の技術をコピーした。

しかも他社の知財のコピーだけでなく、Amazonは、顧客が同社の音声サービスを利用したときにEchoのプラットホームを使って自社製品を他社製品よりも良いと宣伝した。

ラスキン氏は、「Alexaはアマゾンの製品を気に入るように訓練されているのですか?」とベゾス氏に尋ねた。ベゾス氏は、Alexaがアマゾンのサービスを第一とするように、あるいは同社のブランドの製品を宣伝するように特に訓練したかは定かではありませんが、そうだとしても意外でありません」と答えた。つまり同氏「Alexaがときどきアマゾンの製品を宣伝したとしても意外ではない」と述べた。

ラスキン氏はまた、最近のWarnerMedia(ワーナーメディア)との交渉でもベゾス氏を責めた。ワーナーメディアは、大手映画会社とストリーミングサービス、巨大ネットワーク企業から成る大企業グループ。ラスキン氏が特に問題にしたのは、ワーナーメディアのストリーミングサービスであるHBO MaxをアマゾンのFire TVデバイスへの配給する際の交渉で、ワーナーメディアが所有する映画コンテンツの供給をめぐる議論が含まれていたことだ。

ラスキン氏は「金銭的条件だけでなく、ワーナーメディアのコンテンツも求めている。ストリーミングデバイスの市場における指導的立場を、コンテンツの優先的な配給入手権などのビデオストリーミングの市場における競争者としての立場を有利にするために利用することは公正だろうか?」と述べた。

ベゾス氏は、その交渉は「通常の商談だった」と答えたが、ラスキン氏は、Fire TVへのアクセスをめぐる交渉が、1つの市場での優位を別の業界の競争者に対する同社の不正なアドバンテージとして利用しようとするやり方の例だったとして、同社をあくまでも追及しようとした。

ラスキン氏は「要するに、アマゾンによる管理を人々のリビングルームに適用しようとしている。そのデバイス市場での優位性を利用して、アマゾンが望むクリエイティブなコンテンツを優先的に得ようとしている。1つの領域でのアドバンテージを、無関係な別の領域における優勢へと変換しているのではないか?」と指摘した。

ラスキン氏の意見や質問は、この公聴会の主題とされる「米国の4大テクノロジー企業が振り回す反競争的で独占の可能性もあるパワー」を追撃したと思われる、濃密な質疑合戦の一部だ。Facebook(フェイスブック)とApple(アップル)、Alphabet(アルファベット)も議会の質問責めで古い話を蒸し返されたが、反競争的な行為に対する最も支持された批判はベゾス氏とアマゾンに残されていたようだ。

関連記事:Bezos ‘can’t guarantee’ no anti-competitive activity as Congress catches him flat-footed(未訳)

画像クレジット: GRAEME JENNINGS/POOL/AFP/Getty Images

米独禁法公聴会

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

FacebookザッカーバーグCEOはInstagram買収前に従業員にライバル排除の戦いを訓示

米国時間7月30日、主要テック企業を迎えて開かれた米国連邦議会の独占禁止法ヒアリングで真っ先に持ち出された重要な案件として、2012年のFacebook(フェイスブック)によるInstagram(インスタグラム)買収(未訳記事)にまつわる問題が持ち出され、当時のFacebook内部の方針がいくつか明らかにされた。

すでに1年間継続している独占禁止法違反の疑いによる捜査(未訳記事)の一環として同委員会に提出された新資料(House Judiciary Committeeサイト)を示唆しつつ、米連邦議会の下院司法委員会議長Jerry Nadler(ジェリー・ナドラー)氏は、当時Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏とFacebookの企業幹部との間で交わされた電子メールには「非常に憂慮すべき話」が書かれてると語った。

続けてナドラー氏は、FacebookによるInstagram買収は独占禁止法に違反すると言及した。「取引が行われた当時、この合併が違法であったならばInstagramを別会社として分割させない理由はどこにあるのか?」とナドラー氏は問いかけた。

Instagram買収の発表の3日前である2012年4月6日に行われた質疑応答の動画(House Judiciary Committeeサイト)でザッカーバーグ氏は、Facebook自身の製品はユーザーが「我慢できる程度」の「あまりパッとしない」モバイルアプリだと自認しながら、このソーシャル写真共有アプリの脅威について話している。

彼らはうまくやっている。我々はこの穴から脱出しなければならない。いいニュースとしては、それが進んでいるということだ。悪いニュースは、彼らは急速に成長し、大変な力を付け、排除が難しくなっていることだ。これから先、厳しい戦いが待っている。

委員会が入手した電子メールからナドラー氏は「スタートアップで言えるのは、たいていが買収可能であることだ」というザッカーバーグ氏の言葉を引用した。Instagramを手始めにFacebookは実際にそれを続けてきた。委員会が公開できるようにする前から、The Vergeは、そうした通信をいくつも伝えている。

関連記事:Facebook Buys Instagram For $1 Billion, Turns Budding Rival Into Its Standalone Photo App(未訳)

「私はいつでも、Instagramはライバルであり、我々のサービスの一要素でもあると公言してきました」とザッカーバーグ氏は米国時間7月30日に述べ、ナドラー議員の批判をあしらった。「あの当時、それが一般向けのソーシャルネットワークになるなど誰も思っていませんでした」とザッカーバーグ氏は主張した。

だが現実は、Instagramはすでに大人気となり、Apple(アップル)のApp Storeだけでも1日あたり10万ダウンロードを数えるに至っている。「iOSだけでも2700万人の登録ユーザーを擁するInstagramは、単なる写真共有アプリとしてではなく、それ自身がソーシャルネットワークとしての地位を固めつつある」とTechCrunchのライターSarah Perez(サラ・ペレス)も当時の記事(未訳記事)に書いていた。

取引の状況を考慮すれば、8年経過した今でも、合併を解消させることは可能だと下院司法委員会議長は警告する。「FacebookはInstagramを、Facebookから事業を奪い取る強力な脅威と見ていた。そのため、競合することを止め、買収したのです」とナドラー氏は話す。そして「これは、独占禁止法がその主目的として禁じている反競争的行為そのものです」と続けた。

米独禁法公聴会

画像クレジット:Chip Somodevilla / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

アップルのクックCEOが他社のスクリーンタイムアプリを排除した理由を米独禁公聴会で弁明

昨年Apple(アップル)は、iOS 12の公開(未訳記事)に合わせて、初の自社製スクリーンタイム監視機能をリリースした。その直後、サードパーティー製のスクリーンタイム監視アプリとペアレンタルコントロールアプリをApp Storeから大量に排除した。米国時間7月29日に開催された米連邦議会による独占禁止法公聴会で同社のCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、競争の制限が疑われるとしてその判断について問われた。

アップルが自社開発した一連のスクリーンタイム機能が発表されて間もなく、複数のサードパーティーのアプリ開発業者は、スクリーンタイム監視アプリをApp Storeで販売するための審査が突然厳しくなったことに気がついた。更新が認められなかったり、アプリ自体がApp Storeから削除される例も少なくなかった。この影響を受けたのは、公式な方法が存在しないため、いろいろな工夫をしてスクリーンタイムの監視を行ってきた開発業者だ。そこでは、バックグラウンドでの位置情報、VPN、MDM(モバイルデバイス管理)を利用したソリューションが用いられていた。これらを複数組み合わせたものもあった。

当時アップルは削除したアプリについて「デバイスの位置情報、アプリの利用状況、電子メールアカウント、カメラの使用権限などにアクセスする必要があり、ユーザーのプライバシーとセキュリティーを危険にさらす恐れがあった」と弁明していた。

だが米議会議員たちは、その多くのアプリが何年も前から市場に存在していたにも関わらず、なぜ突然、ユーザーのプライバシーに気を配るかのように見える態度に出たのかを同社に尋ねた。

ジョージア州選出で民主党のLucy McBath(ルーシー・マックバス)下院議員は質問の冒頭で、ある母親がアプリの削除を残念に思う気持ちをアップルに伝えた電子メールの一文を読み上げた。それには、同社の処置で「子どもたちの安全を守り、精神的な健康を保つために極めて重要なサービスの利用が制限される」と書かれていた。そしてマックバス議員はアップルに対して、独自のスクリーンタイム監視ソリューションをリリースした途端にライバルのアプリを削除した理由を尋ねた。

クック氏は「アップルは『子供のプライバシーとセキュリティー』を重視しており、それらのアプリに使われていた技術には問題があった」と昨年とほぼ同じ答弁を繰り返した。

「その当時使われていた技術はMDMと呼ばれるもので、子供が見ている画面を乗っ取り、第三者が覗くことができる。そのため、子供の安全に心を痛めていました」とクック氏は話す。

MDMを、ユーザーに知られずに遠隔操作ができる機能だと説明するのは、MDMの仕組みを正確に表現しているとは言えない。実際、MDM技術はモバイルエコシステムで合法的に使われており、今も変わらず利用されている。ただし、これは業務用として開発されたもので、一般消費者のスマートフォンではなく、例えば会社の従業員のデバイスを一括管理するといった用途に用いられる。MDMツールは、企業が従業員のデバイスの安全を守るための対策のひとつとして、デバイスの位置情報、アプリ使用の制限、電子メール、数々の認可にアクセスできるようになっている。

子供のデバイスの管理やロックを行いたい保護者にもこれが応用できると考えるのは、ある意味理解できる。一般向けの技術ではないのだが、アプリ開発者は市場の空白を見つけ、そこを自由に手に入るツールで埋める方法を編み出す。市場はそのようにして回るものだ。

アップルの主張は間違ってはいない。問題のアプリのMDMの使い方にはプライバシー上のリスクがあった。しかし、それらのアプリを完全に閉め出してしまうのではなく、代替策を提案してやるべきだったのではないか。つまり、ライバルをただ追放して済ませるのではなく、純正のiOSスクリーンタイム管理ソリューションのための開発者向けAPIを消費者向け製品とは別に準備すべきだった。

そんなAPIがあれば、アプリ開発者はアップルの純正スクリーンタイム管理とペアレンタルコントロールの機能を借りてアプリを製作できる。同社は、彼らのビジネスに引導を渡すのではなく、期限を区切って作り直させるべきだったのだ。そうすれば、開発者もその利用者も傷つけることはなかった。そうすることでサードパーティーのアプリで心配されるプライバシー問題にも対処できたに違いない。

「削除は、まったく同じタイミングだったように思えます」とマックバス議員は指摘した。「もしアップルが自社製アプリを売り込むためにライバルを傷つけようとしたのではないと言うならば、App Storeを運営するPhil Schiller(フィル・シラー)氏は、なぜライバルのペアレンタルコントロールアプリの削除を嘆くユーザーにスクリーンタイムアプリを勧めたのですか?」と同議員は質問した。

クック氏は、現在App Storeには30種類のスクリーンタイム管理アプリがあり「ペアレンタルコントロールの活気ある競争が展開されている」と答えた。しかしマックバス議員は、6カ月後には、プライバシー上の目立った変更もないままApp Storeに復活したアプリもあると指摘している。なお2019年6月、MDMアプリに関するアップルの新しい規約(アップル開発者サイト資料)が発効されている。

「6カ月とは、倒産に瀕した中小企業にとっては永遠とも言える時間です。その間に、ライバルの大企業に顧客を奪われていたとすれば、なおさら事態は深刻です」とマックバス議員は言う。

しかしマックバス議員の質問が、アップルのiBooksの外で独自のアプリを使って電子書籍を販売しようとしたRandom House(ランダムハウス)の方法を拒否した問題に移ってしまったため、クック氏にはスクリーンタイム管理アプリに関する質問へのそれ以上の弁明の時間は与えられなかった。

クック氏はRandom Houseの質問を、技術的な問題の可能性があると指摘しつつ、「アプリがApp Storeの審査を1回で通過できない理由はたくさんある」とかわした。

米下院公聴会
画像クレジット:Graeme Jennings-Pool / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

「テック企業大手は新型コロナ蔓延で利益を得ているので規制が必要」と米議員が主張

米国時間7月29日に開催されたテクノロジーに関する歴史的なヒアリングにおいて、その議長が開会声明で「さらに多くの米国人の生活をオンラインに追い込んだ現在進行中の新型コロナウイルスのパンデミックの最中においては、テクノロジー分野の最も優勢な大企業を規制することが重要不可欠」と主張した。

下院司法委員会独占禁止小委員会の議長David Cicilline(デビッド・シシリン)氏は「新型コロナウイルスのパンデミックの前から、これらの企業はすでに我々の経済における巨人として突出していた。そして、新型コロナウイルスの発生により彼らは、より広範な勢力を持つ強力な存在になろうとしている」。

新型コロナウイルスの危機がテクノロジーを利するという議論は、適確でもあり、時宜を得ていて反論は難しい。ほかの産業では多くの大企業が苦しみ、レイオフに直面し、倒産もしている。その中でテクノロジー分野の大企業の多くがこの経済の嵐を、有利にとは言えないまでも明らかに無傷で切り抜けようとしている(Washington Post記事)。

筆頭委員のJim Sensenbrenner(ジム・センセンブレナー)氏は彼自身の開会の挨拶で「米国人はかつてなかったほどオンラインに多くを依存しているので、パンデミックという側面からもテクノロジーの勢力を検証すべきだ」と述べた。そして「我々には、あなた方の市場支配を今まで以上に詳細に精査する責任がある」と続けた。

「新型コロナウイルスの危機という苦しみの中でテクノロジー企業がさらに勢力を拡大している」という議論は前からある。一部の議員たちはパンデミックの間に計画されている合併に対して注意を喚起した。彼らは、すでに巨大であるテクノロジー企業が、さらに大きくなり支配力を増さないか、その懸念をめぐって適切な監視が必要と主張した。

関連記事:AOC and Elizabeth Warren call for a freeze on big mergers as the coronavirus crisis unfolds(未訳)

4月には、マサチューセッツ州選出で民主党のElizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員とニューヨーク州選出で民主党のAlexandria Ocasio-Cortez(アレクサンドリア・オカシオ-コルテス)下院議員の2人が、Pandemic Anti-Monopoly Act(パンデミック独占禁止法)を発議した。これは危機の間の合併を凍結することが目的で、とりわけ大手テクノロジー企業を対象にしていた。オカシオ-コルテス氏はTwitterで「少なくとも、新型コロナウイルスの間の大型合併を阻止して業界の合従連衡を防ぐことだけは、やらなければならない」(@AOC投稿)。

シシリン氏も前に「巨大合併」の凍結を提議し「議会を通過する経済振興パッケージにはそのような禁制の法制化(CNBC記事)が含まれるべき」と主張した。

同氏は「どんなに困難に見えても、我々の経済が前よりももっと集中し強化された形でこの危機から立ち上がることは可能だ。米国の家族が仕事と買い物とコミュニケーションをオンラインへシフトしていくことから、これらの巨人たちは利益を得ているのだ」と述べた。

米下院公聴会

画像クレジット: Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images/Getty Images

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa