FBIはサンバーナーディーノにおける銃乱射事件でファルーク容疑者が所有していたiPhone 5cのロックを解除することに成功した。このため司法省はAppleに対してロック解除を要求する訴えを取り下げる。当局はロックを解除した具体的な方法についての情報の取り扱いには慎重で、新たな情報は公表されていない。
取り下げの文書は非常に簡単だった。「政府はファルークのiPhoneのデータにアクセスすることに成功したので2016年2月16日付けで裁判所によってApple Inc.に命じられたiPhoneのロック解除に関して捜査当局を援助せよとの命令はもはやその必要を失った」と連邦検事、Eileen M. Deckerと司法省次官補、Tracy L. Wilkisonは書いている。
5週間にわたってAppleと司法省は激しいやり取りを繰り広げてきた。勢いの赴くところ、両者はサンバーナーディーノを管轄するカリフォルニア州リバーサイドの連邦裁判所で対決することなるはずだった。しかし先週、FBIは、ぎりぎりの瞬間になって、Appleの助力は結局必要なかったと発表した。司法省は審理の延期を要請した。Appleは抗弁せず、審理は延期された。
司法省は4月5日までにFBIがFarookのiPhoneのデータにアクセスできたかどうか捕捉意見を提出することになっていた。期限を1週間残して政府は前述の見解を示した。
当初、2月に政府がAppleに援助を要求する根拠となったのはAll Writs Act〔全令状法〕だった。しかしAll Writs Actはそれ以外に利用可能な手段がある場合には有効ではない。そこで政府はiPhoneのロックロック解除が可能なのはAppleのみであることを立証しなければならないこととなった。
実はこれが今回政府が訴訟を取り下げた理由だ。FBIはAppleの手助けなしに容疑者のiPhoneのデータにアクセスすることに成功した。つまりAll Writs Actの適用対象外となり、当初の訴えは根拠を失った。
アメリカ政府を苦境から救ったサードパーティーの身元は依然として謎に包まれている。政府もまた今回データを入手した「代替手段」については沈黙している。Appleは将来のOSのアップデートでセキュリティーを強化するためにロックがどのように突破されたのか詳細を知りたいだろう。しかし現状ではAppleがそうした情報を入手できるかどうかは不明だ。
CNNによると、司法省は「代替手段はこの特定のiPhone〔のデータ取得〕のみに有効」と語ったという。しかし同じバージョンのiOSを搭載した別のiPhones 5cをFBIがクラックできないと信じるのは難しいだろう。またFBIがiPhoneの何らかの脆弱性を利用したのであれば、Secure EnclaveとTouch IDセンサーで守られているとしても、同じ脆弱性を持つあらゆるiPhoneが同じ方法でロックを解除されてしまうだろう。【略】
All Writs Actは重大な条文であり、軽々しく持ちだされるべきではない。政府はその前にあらゆる手段を尽くすべきだ。もし政府がテロリストの攻撃を利用してAppleにプライバシー侵害の前例を作らせようとしているのなら、そのような方針は恥ずべきであり是認することはできない。
画像: Arsgera/Shutterstock
〔日本版〕AppleがTechCrunchに送ってきた声明および司法省の訴訟取下げにかかる文書は原文を参照。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)