リモートワーク用ネットワーキングツールtwine、ビデオチャット内で参加者をマッチングさせるプラットフォームGlimpseを買収

バーチャルイベントやリモートチーム向けのネットワーキングツールを提供するtwine(トゥワイン)は、まもなくZoomにそのサービスを提供する予定だ。これは、バーチャルイベント向けに設計された「スピードマッチング」プラットフォームを開発していたY Combinator(Yコンビネーター)が支援するスタートアップGlimpse(グリンプス)の買収のおかげだ。Glimpseのアイデアは、現実世界のイベントで一般的に行われているつながりを促進する方法を提供することであり、AIを使ってビデオチャット内で参加者をマッチングさせることで、それをオンラインに持ち込むことであった。最近、Glimpseは、イベント主催者がZoomミーティング、ウェビナー、イベントにスピードネットワーキングを追加できるようにするための新しい統合をテストしていた。

関連記事:バーチャルイベントにネットワーキング機能を追加するためにtwineが3.6億円調達、ビデオチャットアプリから方針転換

この統合は、Glimpseと他の数社が早期にアクセスすることができたZoomの新しい「ブレイクアウトルーム」APIによって実現された。両社は、リモートで人をつなぐという同じような分野で仕事をしていたが、GlimpseのZoomとの統合は、製品開発の面でtwineをリードしていた。さらに、twineの共同創業者兼CEOのLawrence Coburn(ローレンス・コバーン)氏は、自社がGlimpseに取引を奪われたこともあったと認めている。

今回の買収で、Glimpseの技術は、より幅広いZoomユーザーへの展開計画も含め、twineの顧客ベースに利用できるようになる。

Zoomの新しいブレイクアウトルームAPIを使って作られたアプリは、今後数週間のうちに、Zoomクライアントの中で動作するように設計された、または他の方法でその機能を拡張するために設計された数十のアプリを収容している同社のアプリストアZoom App Marketplaceに追加される予定だ。近日発売予定の「twine for Zoom」もその1つで、マッチングツールやネットワーキング、バーチャルウォータークーラーツールを利用できるようになる。これはバーチャルイベントだけでなく、社内交流会や全体会議、新入社員の受け入れ、コミュニティのミートアップなど、他のタイプのミーティングにも利用することが可能だ。

「私たちは長い間、Glimpseのチームと製品を賞賛してきました。彼らとチームを組むことに興奮しています」と、コバーン氏は述べている。「彼らがZoomのエコシステムの中で作り上げたものは、リモートチームやバーチャルイベントに画期的なインパクトを与えるものであり、まさに驚くべきものです」。

Glimpseは比較的若い会社で、売上も少ないが、顧客は150社に増え、さらに700社の企業が同社のプラットフォームの利用を希望しているとのことだった。顧客は、EdTech企業、VC、企業顧客など多岐にわたる。Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、eBay(イーベイ)などの大企業に利用されている。

「Glimpseは、Zoom App Marketplaceを活用して顧客体験を向上させた、非常に革新的な企業の好例です」と、Zoom Apps & IntegrationsのプロダクトリードであるRoss Mayfield(ロス・メイフィールド)氏は述べ「Twineチームがtwine for Zoomを市場に投入するのを楽しみにしています」と、加えた。

Glimpseは、スタートアップアクセラレーターであるY Combinatorの2020年冬バッチに参加し、YCとMaven Ventures(メイブン・ベンチャーズ)の両方からシードステージの投資を受けていた。共同創業者のHelena Merk(ヘレナ・メルク)氏とBrian Li(ブライアン・リ)氏は、移行期間中もtwineに対応できるようにリテーナーとして残る予定だ。しかし、3人の従業員からなるチームは、現在16人のフルタイム従業員を抱えるtwineに加わることになる。両社ともまだ初期の会社であることから、これは小さなエグジットであるため、買収条件は公開されていない。ただし、私たちは、7桁台(数億円)のオールストックディールであると理解している。

画像クレジット:Twine

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

バーチャルイベントにネットワーキング機能を追加するためにtwineが3.6億円調達、ビデオチャットアプリから方針転換

パンデミックの中で「新しい人たちと出会うためのZoom」的なものとして立ち上げられたビデオチャットのスタートアップtwine(トゥワイン)は、その焦点をオンラインイベントに移し、その結果シード資金として、330万ドル(約3億6400万円)を調達した。現在までに、twineのイベント顧客には、Microsoft(マイクロソフト)、Amazon(アマゾン)、Forrester(フォレスター)などの名前が挙がっており、同社によればこのサービスは2021年には100万ドル(約1億1018万円)分の予約を行う予定だという。

関連記事:深い会話で孤独感を解消するビデオチャットアプリtwine

今回のラウンドは、Moment Venturesが主導し、Coelius Capital、AltaIR Capital、Mentors Fund、Rosecliff Ventures、AltaClub、Bloom Venture Partnersが参加した。Momentの創業パートナーであるClint Chao(クリント・チャオ)氏は、今回のラウンド終了後、twineの取締役会に参加する。

twineの共同創業者のLawrence Coburn(ローレンス・コバーン)氏、Diana Rau(ダイアナ・ラウ)氏、Taylor McLoughlin(テイラー・マクラフリン)氏らが、2019年にCvent(シーベント)が買収したモバイルイベントテクノロジープロバイダーのDoubleDutch(ダブルダッチ)の出身者であることを考えると、オンラインイベントの分野へのシフトは理に適っていると言える。

DoubleDutchのCEOであったコバーン氏は、買収した会社と2020年12月まで競業禁止義務を負っており、それがイベント分野への復帰を最初に試みなかった理由の1つだ。

twineチームの当初のアイデアは、新型コロナウイルスによるロックダウンの下で社会的なつながりを失った人びとが、他の人との出会いやオンラインチャットの方法を見つけられるようにすることだった。この初期バージョンのtwineは、わずかながらも支持を得て、10%のユーザーがお金を払うようになった。しかし、それ以上に多くの人は、ネット上の見知らぬ人とつながることに不安を感じていることが、twineの調べで判明した。

画像クレジット:twine

そこで同社は、よく知るイベント分野に焦点をシフトした。特にパンデミックで人気が高まったオンラインイベントを、その中心に据えることにした。多くのオンラインイベントでは、ライブストリームやテキストチャット、Q&Aなどを設定することは可能だが、一方かつては対面で行われていたようなカジュアルで予期せぬネットワーキングは欠けている。

「これまではエレベーターやバー、ロビーで交わされていた会話のような、ネットワーキングやセレンディピティ(偶然の発見)をバーチャルイベントに持ち込むことは、とても難しいことでした」とコバーン氏は説明し「そこで私たちは、自分たちで新しいコミュニティを作ろうとするのではなく、既存のコミュニティにtwineを導入する形で、グループスペース版twineのテストを始めたのです。それは、より多くの可能性を見せてくれました」と語る。

2021年1月には、イベントに特化した新バージョンのtwineが稼働し、イベントオーナー向けにプロフェッショナルなネットワークツールを提供し始めた。Twineは、一対多や少数対多数のビデオ放送とは異なり、twineは少人数同士をつなぎ、より親密な会話をすることを可能にする。

「私たちは、お客様やユーザーのみなさまに対して多くの調査を行いました。その結果(会話に加わる人数が)5人を超えると、それはウェビナーになるのです」とコバーン氏は、twineのビデオチャットの制限について指摘した。twineでは、少数の人々がビデオチャットに参加していたが、ここではネット上のランダムな他人が参加するものではない。登場するのは同じイベントに参加している仲間なのだ。こうすることで、一般にユーザーの行動はプロフェッショナルなものになり、会話も生産的なものになる。

イベント主催者は、30人までの小規模なイベントであれば、twineのウェブサイトから無料で製品を使用することができるが、それ以上の規模に対応するためにはライセンスが必要だ。twineは参加者ごとに課金を行い、顧客(イベント主催者)はSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)モデルで参加者パックを購入する。

顧客はtwineを自分のウェブサイトに直接埋め込んだり、twineのウェブサイトを別のブラウザタブで開くようなリンクを追加することができる。

twineは大企業のイベントプログラムに最適な場所を見つけたのだと、コバーン氏は語る。現在同社の顧客数は約25社だが、その中には、最初に小規模なイベントで試した後、すでに10〜15件のイベントでtwineを使用している顧客もいる。

「現在私たちは、世界最大クラスの大企業5、6社と一緒に仕事をしています」とコバーン氏はいう。

画像クレジット:twine

マッチングはデジタルに行われるため、twineは「デジタル名刺」交換や、イベントの主催者と参加者のための分析やレポートなど、他のツールも提供することができる。

通常の状態に戻ることが米国では慎重に行われているために、対面式のイベントの復活は1年後になるかもしれないが、twineはそれでもオンラインイベントにはまだ未来があると考えている。パンデミックの影響は長期にわたるため、企業は今後、イベントにハイブリッドなアプローチを採用していく可能性が高い。

「イベント業界がここまで経験したような15カ月を、かつて経験した産業は、これまで存在しなかったと思います」とコバーン氏はいう。「こうした企業は収益を失い、中には数億ドル(数百億円)レベルからゼロに転落した企業もありました。つまり、これまで世界が経験したことのないようなデジタルトランスフォーメーションが起きたのです」と彼は付け加えた。

今では、テックイベントやオンラインイベントを得意とするイベントプランナーが何万社もいる。そして彼らは、バーチャル参加者ならこれまでより4〜5倍の動員が望めるオンラインに可能性を見出したのだ、とコバーン氏は指摘する。

彼は仮想会議技術事業のための最近の資金調達について言及し「LinkedInがHopin(ホーピン)に5000万ドル(約55億850万円)を投じたのはこのためです」と語った(実際の買収額は5000万ドル以下だったと言われている)。「だからこそ、HoppinやBizzabo(ビザボ)、Hubilo(ハビロ)などへの資金調達ラウンドが続いているのです。ここはUber(ウーバー)登場以前のタクシー市場なのです」。

もちろん、対面での体験が可能になれば、バーチャルイベント自身ではソーシャル機能にはこだわらないことになるかもしれない。また、オンラインイベントを開催したいと考えている側は、たとえばZoom+twineよりも広い範囲のソリューションを求めるかもしれない。

しかし、twineにはこれから実現したいさまざまなアイデアがある。たとえばその1つが非同期型のマッチメイキングだ。これは現在オンラインになっている人だけに限定されないため、より良いマッチングにつながる可能性があり、より価値のあるものになるだろう。

今回の調達資金を使って、twineは営業とカスタマーサクセス要員の採用、アクセシビリティの改善、プラットフォームの拡張を行う。現在までに、twineは470万ドル(約5億2000万円)を調達している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:バーチャルイベントtwine資金調達ビデオ会議イベント

画像クレジット:twine

原文へ

(文: Sarah Perez、翻訳:sako)