「飲食店のネット予約を当たり前に」VESPERが1.5億円を調達、オートメーションで業界革新へ

飲食店向けのオンライン予約管理システム「TableSolution(テーブルソリューション)」を提供するVESPERは12月6日、SMBCベンチャーキャピタル株式会社を引受先とする第三者割当増資により、1.5億円を調達したことを明らかにした。

なおVESPERは2015年にもジャフコから2億円を調達しているほか、元ソニー代表取締役社長の出井伸之氏やメルカリ創業者の山田進太郎氏も株主となっている。

ホテルチェーンや星付きレストランなど2000店舗に導入

TableSolutionは飲食店のオンライン予約や顧客管理をサポートするSaaS型のシステムだ。メインとなる予約管理機能に加えて電話自動応答やカード決済、POSシステム連携といった各種機能を備え、14ヶ国語に対応。基本料金は席数に応じて月額1万2000円、1万5000円、2万円のいずれかとなる。

2013年7月のリリース以降顧客を増やし、現在は約2000店舗が導入。大手グローバルホテルチェーンや星付きのレストランなども活用する。ネット予約システムを使ったことがある飲食店が、さらなる機能を求めてTableSolutionに行き着くケースも多く、導入店舗の65%が他システムからの乗り換えだ。

また現時点で海外10カ国に展開。拠点を持つ韓国ではコンラッドやグランド・ハイアットなど有名ラグジュアリーホテルの店舗にも導入実績がある。VESPER代表取締役の谷口優氏によると「海外のトラックレコードが評価されたこと」が今回の資金調達にもつながったという。

前年対比で予約件数が約3倍、無断キャンセル防止策の利用進む

以前取材した際に、谷口氏は指標として「予約件数」を重要視しているという話をしていた。実際にどれだけ活用してもらえているかを測るためだが、この数値が2017年10月時点では前年対比で約3倍に増加しているという。

成長の要因のひとつは、飲食業界の課題でもある無断キャンセルを減らすべく2017年6月にリリースした、カード決済機能「キャンセルプロテクション」だ。この機能では飲食店がネット予約成立時に事前カード決済、ないしクレジットカード利用枠に応じた一部仮押さえ(与信)できる。

あらかじめ金額が決まっているイベントなどでは事前決済をし、キャンセルの場合にはポリシーに基づいてキャンセル料を相殺するプラン(事前決済型)。予約時にカード情報を入力してもらうことで、直前キャンセルには与信枠を上限にキャンセル料を請求するプラン(与信型)の2つを用意。TableSolution導入店舗が対象で、追加の導入費や月額固定費用がかからないこともあり引き合いが強く、すでに約300店舗で利用されている。

勝手ながらレストランの事前決済には抵抗がある人も多いイメージだったが、谷口氏によるとおもしろい結果がいくつかでているそう。ある導入店舗では現地決済プランと、それよりも1000円安い事前決済プランを2つ用意した。するとほとんどの利用者が事前決済を選んだため、途中から事前決済のみに変えたという。

「宿泊や航空券、映画などネット上で予約をして事前決済することが、少しずつ当たり前になってきている。最初は事前決済を嫌がる人も多いかと思ったが、利用者の心理的な負担も変わってきているように感じる」(谷口氏)

新宿の人気レストランでは他システムからTableSolutionに切り替え、ネット予約の全プランを与信型プランにしたところ約64%だったキャンセル率が0.2%まで低下。その一方で来店数は増えた。

「以前は『とりあえず予約しておこう』という人が多くキャンセル率が高かったことに加え、本当に行きたい人が予約できなくなっていたのではないかと考えている。結果として本当に行きたい人が予約できるようになったため、来店数の増加につながった」(谷口氏)

キャンセルプロテクションを活用する寿司屋では、当日キャンセルを申し出た顧客にポリシーに沿ってキャンセルフィーが発生する旨をつげたところ、なんと7~8割がやっぱり行くと答えたそう。自分自身もやってしまったことがあるため胸が痛いけれど、飲食店の予約や当日キャンセルがどれほど気軽に行われているかがわかる。

谷口氏によるとこの傾向は海外の方がさらに顕著らしく、キャンセルプロテクションは海外の飲食店からの関心も高いという。

ネット予約を当たり前に、オートメーションも当たり前に

VESPERでは今回の資金調達を機に、今後はさらに海外展開を加速させる計画だ。まずは東南アジアのラグジュアリーホテルを中心に、2020年をめどに海外2000店舗、国内1万2000店舗へTableSolutionの導入を目指す。

またより広い店舗が使えるように簡易版のリリースを検討するほか、2018年は分析システムの基盤を強化していくことを大きなテーマとして掲げる。

「上位概念にあるのは、オートメーション。適切なデータを適切なタイミングで顧客に届けることで、広告予算の配分や顧客管理を最適化するサポートをしていきたい。AIの導入なども含めて基盤を強化する」(谷口氏)

VESPER代表取締役の谷口優氏

TableSolutionを立ち上げた当初から根本にあるのは、ネット予約を当たり前にしたいということだ。飲食業界でも人材が不足し人力だけで対応するのは難しくなってきているし、今後さらに国内の人口減少が進めば飲食店は外国人の顧客を獲得していく必要もある。そうなれば複数言語に対応し、24時間いつでも予約を受け付けられるネット予約システムはニーズがありそうだ。

「飲食店の人とも『1回も予約の電話がならないけど、今までと同じ数のお客さんが来るなら楽だよね』という話を毎回している。理想は100%ネット予約になること。今後さらにネット予約を当たり前に、そしてオートメーションを当たり前にしていきたい」(谷口氏)

レストラン即時予約サービス「TableCheck」が飲食店のインバウンド支援、第1弾は中国語に対応

「2400万人」、これは2016年に日本へ訪れた外国人観光客の人数だ。日本政府観光局の発表によると正確には2403万9千人。同局が統計を取り始めた 1964 年以降、最多の数字で前年に比べて21.8%増加している。

このような状況もあり、訪日外国人観光客を対象にしたサービスは非常にホットな領域の1つ。たとえばTechCrunchでも2017年に入って、インバウンド旅行者向け専用アプリ「WAmazing」や訪日外国人旅行者の行動データを解析する「inbound insight」などを紹介している。

宿泊施設やレジャー施設と並んで、訪日外国人観光客が増加することで大きなビジネスチャンスを得られるのが飲食店だ。言語の問題などいくつか障壁はあるものの、これをクリアできれば売上の拡大も見込める。レストランの即時予約ができる「TableCheck」もまさにそのような課題を解決しようとしているサービスの1つだ。

同サービスを提供するVESPERは4月4日、飲食店の訪日外国人観光客の獲得支援を強化することを発表。その第1弾として同サービスの中国語対応を開始するとともに、中国人観光客向けメディア「Go Japan」、飲食店向けの予約、決済サービス「日本美食」との連携を始める。

これにより中国人観光客は、TableCheck上に掲載されているレストラン情報の閲覧や予約を中国語で行えるようになったことに加え、日本美食と連携したことにより中国語で来店前の事前決済が可能に。飲食店側もGo Japanを通して集客力強化が見込めるほか、事前決済をすることで直前や無断キャンセルで発生する損失も軽減できる。

訪日外国人観光客の中でも、中国や台湾、香港といった中国語圏の観光客が半数以上を占めている。消費者側と飲食店側双方の需要が高く、まずはそこに対応していく形だ。

予約台帳システムTableSolutionと連動したレストラン予約サイト

TableCheckは2017年1月16日にリリースされたレストラン予約サイト。以前からVESPERが提供していた飲食店向けの予約台帳システム「TableSolution」の導入店舗のみを掲載している。この「TableSolutionと連動していること」が大きなポイントだとVESPER代表取締役の谷口優氏は話す。

「現状では予約サイトとお店の台帳システムが連動していない場合が多く、店舗が事前に席を割り当てる必要があり、記入漏れやオーバーブッキングが発生する原因となっていた。それでは台帳システムは単なる記録保存用のツールでしかない」(谷口氏)

その点TableCheckではTableSolutionと連動しているため、リアルタイムで席の空席状況を正確に把握しオンラインでの即時予約に対応できる。オンラインで予約できる席が限られることによる、機会損失の心配もなくなり、消費者にとっても飲食店にとっても利便性が高いという。

TableSolutionは2014年2月にリリースされ、現在1500店舗ほどに導入されている。2011年のVESPER設立当時、代理店業をやっていた際に「ネット予約が便利なことはわかっているし、導入したいけど管理のが大変」という飲食店の声を聞き、アナログだった予約台帳をデジタル化するツールとして開発された。

「予約台帳をきれいに整理しようとかではなく、飲食店がお客さんにスムーズに対応できるためのサービス、お店の課題を解決できるサービスを志して始めた」と谷口氏が話すように、トレタやエビソルといった競合も存在するが、目指している方向は必ずしも一緒ではない。お手頃で必要最低限の機能を備えたシンプルなサービスではなく、機能が充実している一方で操作になれるまでに時間がかかり、それなりの価格もする。(月額1万2千円、1万5千円、2万円の3プラン)

「本気で課題解決に活用してもらうためにはある程度の数の機能が必要になるし、しっかりしたサポートも不可欠。営業やサポート担当の中にはレストラン出身者やソムリエなど飲食店を経験している人間も多く、親身になってサポートできる体制が整っている」(谷口氏)

社内で重要視している指標もユニークで、導入店舗数ではなく「予約データ件数」。いかに使ってもらえるかにフォーカスをしているそうだ。その点では同数値が伸びていることに加え、新規申し込みの75%が同業他社からの切り替えという結果もでており、手応えを感じているという。基盤が整ってきたなかで2017年に入りTableCheckをリリース、そして今回のインバウンド獲得支援の強化と飲食店が抱える課題の解決に向けて新たな一歩を踏み出した。

「日本の人口が減少している今、飲食店は外国人の顧客をどんどん獲得していく必要がある。そのためには言語もそうだし、オンラインでの即時予約に対応していかないといけない。日本のレストラン市場の拡大や活性化を後押しするサービスにしていきたい」(谷口氏)

電源なしでいつまでも音を拾い続けるVesperの超長寿命超低電力マイクロフォンが$15Mの資金を獲得

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SiriやAlexaのようなデジタルアシスタントが、最近はますます賢いから、それらを常時使いたいというニーズも増えている。

でもマイクロフォンの今の技術は電気を食い過ぎるので、常時onにしておくのはちょっと難しい。そこで、ホームアシスタントと呼ばれる最近の新しい製品ジャンル、AmazonのAlexaやGoogle Homeを利用する製品は、テレビなどと同じく、家庭の電源につなぐ方式を選んでいる。

Vesperの、圧電効果を利用するMEMSマイクロフォンVM1010は、自分が受け取る音波そのものから電気エネルギーを生成することによって、モバイルデバイスをその周囲の環境により敏感に同調*させようとしている。〔*: 同調, tune into, ラジオ受信器等の放送電波等への‘同調’と同じ意味。ただし待ち受けには電池を要す(後述)。〕

今日(米国時間12/9)は、このボストンの会社が、Accompliceが指揮するシリーズAで1500万ドルを調達したことを発表した。AmazonのAlexa Fund, Hyperplane, Miraenano Tech, およびそのほかの匿名投資家たちがこの投資に参加した。

音声認識の広範囲化というメインのメリットのほかに、その圧電系には防水防塵という特性がある。屋外で使われるヘビーデューティーなシステムにも向いている。投資に参加したAmazon Alexaのチームは、とくにこの点に関心を示していた。

Amazon Alexa担当VPのSteve Rabuchinは、声明の中でこう述べている: “新しくて楽しいAlexa体験を顧客に提供する珍しい技術を支援することには、つねに関心を持っている。Vesperの技術には、Alexaの魅力的な新しいユースケースをもたらす可能性がある、と思われる。たとえばポータブルな電子製品では、マイクロフォンに汚れや水気に対する耐性が、重要な特性として求められる。そんな技術を持つ同社を私たちの投資で支えることは、とても喜ばしい”。

ミシガン大学がその誕生に部分的に関与しているVesperの技術は、自力で常時onのマイクロフォンだが、しかしそのためには、信じられないほど低電力のドローで人間の声の周波数特性をシークしている。すなわち同社のVM1010マイクロフォンが声を検知するときは、起動したシステムが音声中のキーワードの有無を判定する。そしてたとえば“OK Google”というキーワードを聞き取ったらデバイスはフル稼働になり、デジタルアシスタントが質問に応じられるようになる。以上すべてが、数ミリ秒内で生起する。同社によると、この技術によってマイクロフォンの待ち受け電池消費量が従来の1/100程度に減少する。

デジタルアシスタントやモバイルデバイス、防犯盗聴装置などは分かりやすい用例だが、Vesper自身は、IoTやインターネット接続車など用の、さまざまな専用MEMSマイクロフォンへの応用を、展望している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))