2010年に流出した機密文書は、WikiLeaks(ウィキリークス)が公開した機密扱いの外交公電により、外国のスパイが使用する戦術と手法に「目に見える変化」が生じる可能性が高いと警告していた。
この文書は最近、非営利団体である米国家安全保障文書館が行った情報公開法に基づく請求により機密解除され、TechCrunchにも共有された。それによれば、米軍の主要なサイバー戦争部隊である米国サイバー軍(United States Cyber Command、USCYBERCOM)は、漏えいした在外米国大使館間の外交公電が今も行われている同軍のサイバー活動を暴いたり妨害したりすることを恐れている。こうした米国サイバー軍の内情が漏れるのは極めてまれだ。
国家安全保障文書館のCyber Vault ProjectのリサーチフェローであるMichael Martelle(マイケル・マーテル)氏は、ウィキリークスによる公電の公開が敵に「優位性を高める時間」を与えたと述べた。
米陸軍情報アナリストのChelsea Manning(チェルシー・マニング)氏がダウンロードした75万件の機密公電を漏えい情報公開サイトウィキリークスに転送したのはほぼ10年前になる。マニング氏は、史上最大の米国の機密資料漏えいにより35年の刑を宣告された。その後2017年に、当時の大統領であったBarack Obama(バラク・オバマ)氏によって減刑された。
サイバー軍は2010年12月付のいわゆる状況認識報告に発見事項を記載した。The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)などのメディアが、情報源を守るため墨塗りつきながらも外交公電の完全な内容を公開した数日後だ。多数墨塗りされた報告書は以下のように警告していた。サイバー軍は、ウィキリークスで公開された「情報を使用」した外国のサイバー諜報部隊による対米活動が活発になると予測している。
報告書によると漏えいした公電は、米国政府機関が当時、外国の敵が使う戦術や技術を「知って」おり、それには「マルウェア、ツールセット、IPアドレス、侵入活動で使用されるドメイン」が含まれることを「明確に述べていた」。
さらに同報告書は、同じ敵が「自身の現在のインフラと侵入技術に変更を加えて、米国のサイバー防衛を回避すると予想される」と警告していた。
機密解除文書は墨塗りされているため、サイバー軍が想定している敵を正確に特定することはできないが、マーテル氏は唯一特定の国、中国だけが後日ウィキリークスが公開した別の文書で言及されていると述べた。その文書は墨塗りされていない。
Google(グーグル)は最初の公電が公開されるわずか1カ月前に、同社のネットワークに標的を絞ったサイバー攻撃を仕掛けたことで中国政府を公に非難した。アンチウイルスメーカーのSymantec(シマンテック)や防衛請負業者のNorthrop Grumman(ノースロップグラマン)などの複数の企業も、「オーロラ作戦」として知られるようになったサイバー攻撃に見舞われた。グーグルはその後、怒りをあらわにして中国から撤退した。
サイバー軍による報告書は、国防総省と米国の諜報機関はいずれも、敵が「この新しい情報を活用して」「サイバー戦略をさらに進める」ことを恐れており、異常に対して「警戒を怠らない」と述べている。
サイバー軍のスポークスマンはコメントを控えた。グーグルもコメントしていない。ウィキリークスへのメールも返信がない。ウィキリークスの創設者であるJulian Assange(ジュリアン・アサンジ)氏は現在拘束されており、機密公電の公開に関連して米国への引き渡しの審理が行われている。
画像クレジット:Nicholas Kamm / Getty Images
[原文へ]
(翻訳:Mizoguchi)