個人が非上場のスタートアップ・ベンチャーに投資できる「イークラウド」サービスとは?

イークラウド

イークラウドは6月17日、インターネットを通じて非上場のベンチャー企業に投資を行える「イークラウド」サービスの投資家登録の受付を開始した。

従来、創業期のベンチャー企業に投資できたのは、エンジェル投資家など一部経営者・資産家に限られていた。これに対してイークラウドでは、個人投資家が創業期ベンチャー企業に投資できるようにしており「株式投資型クラウドファンディング」と名付けている。

1号案件は7月に募集開始予定で、投資家登録を済ませると、案件の事前告知など最新情報を受け取れる。大きく成長する可能性のあるベンチャー企業を案内する予定という。

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また同社では、ベンチャーキャピタルでの投資経験者、急成長したベンチャー企業のメンバー、金融機関出身のメンバーで構成。また、スタートアップスタジオを運営するXTech(クロステック)を母体に設立されており、新規事業創出・起業家支援のノウハウを保有しているという。XTechは関連会社を通じ、これまで2年間で約40社のベンチャー企業に対して出資を行ってきたそうだ。

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ベンチャー企業発掘のノウハウを持ったプラットフォームとして、イークラウドは個人投資家にプロの目で厳選した有望なベンチャー企業への投資機会を提供するとしている。

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TOB成立から1年、エキサイトは4期続いた赤字体質をどう脱却し半期過去最高益を達成したのか

左からエキサイト取締役CFOの石井雅也氏、代表取締役CEO西條晋一氏

「実はものすごく具体的な戦略や明確な見通しがあったわけではなく、見切り発車の状態で思いきって意思決定をした感覚に近い。仮説として10%くらいの営業利益にはできるのではないか、少なくとも黒字にはできるはず。そんな思いだった」

そう話すのはXTechの代表取締役であり、2018年12月からはエキサイトの代表取締役CEOも務める西條晋一氏だ。

XTechが子会社のXTech HPを通じてエキサイトにTOB(株式公開買い付け)を実施することを発表したのが昨年9月のこと。翌月の10月24日にはTOBが成立し、その時から1年が経過した。

エキサイトでは昨年12月に経営陣を刷新し、西條氏を代表とした新体制のもとで企業再生の実現に向けて抜本的な改革を実施。2020年3月期の上期決算において4期続いていた赤字体質から抜け出し、半期では過去最高の営業利益、経常利益ともに4.5億円を達成している。

10月7日付のプレスリリースでは主な施策として「新規事業領域への着手」「従業員の労働生産性の向上」「コスト構造の見直し」「抜擢人事の実施」などが挙げられていたけれど、具体的には現場でどのようなことが行われていたのだろうか。

今回TechCrunch Japanでは西條氏と、西條氏が改革のキーマンに挙げるエキサイト取締役CFOの石井雅也氏にTOB当時の考えから現在に至るまでの取り組みについて話を聞いた。

経験上「10%の営業利益」が出ていないとおかしい

そもそもXTechがエキサイトをTOBすることを決めた背景にはどんな思惑があったのか。

西條氏に聞いてみたところ、上場しているインターネット企業に対して「やり方を少し変えることによってもっと業績がよくなるのではないか」と思うことが以前からよくあったという。

「古くはガラケー時代の着メロや占い、最近ではソーシャルゲームなど特に1つの事業で上場した企業の中には、ビジネスモデルを変えられず伸び悩んでいるところもある。そういった会社に投資をしながら業績を改善して、株価をあげていくという取り組みをやりたいと考えていた」(西條氏)

エキサイトは複数の事業を展開するタイプではあったものの、それに該当する企業ということだったのだろう。筆頭株主だった伊藤忠商事の担当者と話をする中で少しずつTOBの話が進み、みずほ銀行などから必要な資金を調達できる目処がたったことで一気に現実化していった。

西條氏によると、このTOBはごく限られた関係者の中で進められたそう。XTech側の担当者は西條氏1人、エキサイト側も基本的に社長と経営企画担当者の2人だけ。ドキュメントなどはあれど、社内の様子は2人から口頭ベースで聞くのが中心で、現場で働くメンバーにヒアリングをすることもできなかった。

当時のエキサイトは長年に渡って減収が続いている状況で、売上はピーク時の130億円に比べると半分以下となる60億円ほど。そのうち約30億円がブロードバンド、約15億円がメディア、約15億円がコンテンツ課金というように3つの事業を柱にしていた。

「当時思ったのが、自分の経験上この事業であれば10%は営業利益が出ていないとおかしいということ。見たところ先行投資をしているわけでもなさそうだったので、それならば経営のやり方を変えることで改善できるのではないかと感じていた」(西條氏)

PL上では赤字でパッとしないものの、個別の事業やプロダクトを見ればやり方次第で伸ばしていけそうな“パーツ”があり、社内には60人のエンジニア・デザイナーを含めて約250名のメンバーもいる。決して不可能なことではないと考えた。

もちろん心配事がなかったわけではない。当時のエキサイトは平均年齢が36〜37歳ほどとITベンチャーとしては決して若くはなかった。だからこそ「(マインドセットの部分で)変わらなければならない状況になった時に変われるか」には不安を感じていたし、長らく減収が続いている状態に対する恐れもあったそうだ。

前提として基本的に人員削減や給与削減も実施しない方針だったため、事業の整理や経営リソースの配分の変更、コストや対外的な契約条件の見直しなどを中心に業績を回復させていかなければならない。

冒頭の西條氏の言葉にもあるように、とっておきの秘策を持って挑んだわけではなかったが「自分自身は新規事業が得意。少なくとも既存事業を黒字が出るくらいまで挽回できれば、あとは新規事業で盛り返せる」と考えていたという。

エキサイトの主要サービス

最初に実施した1on1で改善の兆しを掴む

そんな状況下でのスタートだったため、代表に就任して改革を進めていくに当たり外からは見えなかった「ギャップ」を感じる場面も多かったようだ。

以下は西條氏と石井氏の話の中から出てきた、中に入る前後でのギャップや実際に現場を見て感じた課題に関する主要なトピック。当然ポジティブなものとネガティブなもの、どちらもあったという。

  • 素直で真面目な人が多く、敵対的な態度を取るような人が少なかった
  • エンジニアを中心にしっかりとしたスキルを持っている人が多かった
  • 外部との契約条件が想像以上に悪かった
  • 経営上の数値についてきめ細かく管理されていた
  • その一方でコストや組織、階層などが分厚く、特にスピード感の部分に課題があった
  • 投資回収の基準が厳しく、伸ばせる事業に十分な投資ができてなかった

西條氏らが体制変更後にまず取り組んだのが社員との1on1ミーティングだ。西條氏と石井氏、そして同じく取締役の秋吉正樹氏の3人で徹底的に社内のメンバーと話をした。

「最初の2〜3週間は面談をほぼ1日中やり続けて、どの部署が指揮が高いのか、それぞれがどのような思いを抱えているのかを聞いた。良い意味でギャップだったのが想像以上にメンバーの性格が良くて、コミュニケーションに困る人がいなかったこと。『買収』だからと敵対的な姿勢をとる人もいなかったので、これならカルチャー的にマッチできると正直ホッとした。改革を進めていく上で非常に大きかった」(西條氏)

上場していたのでコンプライアンス面やモラル面もしっかりしていたことに加え、ポータル事業を支えるエンジニアを始めしっかりとしたスキルを持つメンバーも多く、業績を改善するための基盤自体はあった。だからこそ西條氏らはその次のステップとして、「コスト改善」とともに各メンバーのポテンシャルを発揮できるような「組織体制と文化のアップデート」に取り掛かる。

そこでキーマンとなったのが現CFOの石井氏。前職のサイバーエージェントでは財務経理部門の責任者として決算・開示・税務などを始め様々な業務に携わってきた経験を持つ人物で、2019年に入ってエキサイトに参画し一連の取り組みの舵取りを担った。

石井氏は入社直後から1on1ミーティングと並行して「組織ごと、部門ごとにPLと人数を可視化した資料作り」をスタート。組織面における課題の洗い出しを猛スピードで進めた。

「エキサイトが良かったのは、最初から詳細な資料が作れるくらいにしっかりと管理会計がされていたこと。一方でコストや組織、階層などいろいろな部分で“管理が分厚すぎる”側面があった。その構造が様々な場面でスピードを遅らせる原因にもなってしまっていたので、早い段階で組織構造と文化を根本的に変えていく必要があると感じていた」(石井氏)

カギは組織構造と文化のアップデート

エキサイトでは2018年12月に西條氏を始めとした新経営陣が就任。2019年に入って石井氏らも加わり、改革を進めてきた

石井氏によると、組織体制・管理体制においては大きく5つの観点でテコ入れをしてきたという。

  • 組織の見直し
  • 組織階層の見直し
  • 稟議の見直し
  • 配賦方法の見直し
  • 予算作成プロセスの見直し

中でも重点的に行なったのがメンバーのパフォーマンスに直結するものだ。最初に目をつけたのが部門ごとの人数比率。当時のエキサイトでは実に社員全体の60%がコストセンター(管理部門)に配属されていた。そこにメスを入れ、できるだけ多くの社員をプロフィットセンターへと寄せることで人的リソースの最適化を図ったわけだ。

同時に階層のバランスや稟議のフローも見直した。それまではマネージャー1人に対してメンバーが3人付くような構造だったところを、だいたいマネージャー1 : メンバー6のバランスになるように変更。現場のメンバーへの権限移譲も進めた。

石井氏によると以前は「部下がいないマネージャー」や「配下に誰もいない部長」なども存在していたそう。その体制が必要以上に業務フローを重たくし、200人ほどの会社にも関わらず西條氏のデスクにはハンコが8個押された申請書が並んでいる(=8人の承認を得ないと進められない)ような状況だったという。

「ある程度状況が把握できた段階で感じたのは『流れている時間軸が違う』、『1人1人がやる業務範囲がものすごく細分化されている』ということ。たとえば自分の経験上、会議でフィードバックを受ければその日のうちか、遅くとも週明けには改善案が出てくる感覚だったが、それが定例会議ベースだったりする。つまり1ヶ月ごとの会議では改善案が出てくるのに1ヶ月かかっていた」

「業務範囲に関しても細かい仕事ごとに別々の担当がついていて『1人でまとめてできるのでは』というものも多かった。個々のジョブサイズが小さく、実力のある社員にとっては余裕がありすぎる状態だった」(西條氏)

西條氏や石井氏のアプローチは、従来のいい部分を受け継ぎつつ「ネット系ベンチャー流のスピード感やマインドセット、カルチャーを注入していくこと」だと捉えることもできるだろう。2人は過去の経験から「このくらいの規模の業務であれば、だいたい何人いれば十分」という適正サイズの見極めもできたので、その意思決定は躊躇なくスピーディーにやれたという。

その上でメンバーの評価制度にもアップデートを加えた。以前は60段階ほどに細かく分かれていたものを5段階へとシンプルにして、若いメンバーでも成果を出せば給与が上がりやすいモデルへと変更。若手人材の抜擢も進め、今では約30人の管理職の内、4人が新卒でエキサイトに入社したメンバーだ(以前は約60人いた管理職のうち、新卒で同社に入ったメンバーは1人だけだったそう)。

伸び代のある事業にヒトとカネをつぎ込み売上向上

TOB以降のエキサイトの変化を語る上で「組織や文化」に関する改革は避けては通れないけれど、当然これだけで業績が改善されたわけではない。短期的にはコストの見直しの積み重ねも大きく寄与したという。

西條氏が代表就任後すぐにギャップを感じたと話していたのが「外注費や共同事業の収益シェア率といった社外との契約条件が、自分の常識からすると通常のベンチャーと比べて悪い」ということ。世の中の中間値を知らないで交渉していると感じたため、これについては相当な改善を見込めるという手応えがあった。

取引条件の改善だけでなく、そもそも売上に寄与しない外注費も膨らんでいたことから、それらを石井氏主導で徹底的に洗い出しては削減・見直しを積み上げていったそうだ。

そのようにして浮いた資金を、今度は伸び代のある事業へのプロモーション費用として集中的に投下。社内には“筋が良くても適切な投資ができていないが故に伸び悩んでいた事業”が存在していたため、そこにヒトとカネをつぎ込んだ。

「伸びないから広告費を使っていないのかと思いきや、伸びる要素があるのに投資ができておらず機会損失が発生していた。背景には赤字が続いていたことだけでなく、そもそもの回収基準が厳しかったこともある。対外的な競合が広告費の回収期間を9ヶ月ほど見込んでいたのに対し、自分たちの基準は3ヶ月。特に月額課金型のプロダクトならある程度は攻めの先行投資ができるはずなので、その考え方を変えていった」(西條氏)

コスト削減によって赤字体質を脱却しただけでなく、売上高自体も前年より伸ばすことができたのは、まさにこのような取り組みによるものだろう。

スタンダードな取り組みを徹底的してやり続けた結果

ここまで紹介してきたことはあくまでほんの一部でしかないけれど、実際にこの10ヶ月ほどでエキサイト社内で進められてきた取り組みだ。

この期間を振り返ってもらう中で西條氏と石井氏に共通していたのが「開示されている資料など、外からわかるものだけでは実際の内実はほとんど読み取れなかった」ということ。数字だけを見れば年々業績が悪化している中で「改革にはかなりの時間を要し、相当苦労することも覚悟していた」(石井氏)と話す。

ただ今回は2人にとってポジティブなギャップの方が大きかったと言えるだろう。実態をいち早く知る上では欠かせない事業や組織に関する細かい数字がまとめられていて、対外的にはほとんど評価を受けてはいなかったものの、伸ばせる余地のある事業もあった。そして何より現場で改革を担う社員がいた。

社員とうまく意思疎通ができなければ、まずは関係性を構築するところからのスタートになるが、エキサイトの場合はその必要もなかった。だからこそ「想定していたよりもかなり早いスピードで進めることができ、3月の時点ではすでに黒字化できる手応えがあった」(石井氏)という。

その言葉通り4月には単月黒字化を達成。西條氏の仮説を超えて営業利益率15%も実現した。西條氏自身はXTechの代表なども兼務しているため、エキサイトに出社するのは基本的に毎週火曜日と金曜日の2日間。取り組みの多くは石井氏や現場のメンバーが遂行してきた。

「自分の経営手腕が優れているとか、ものすごい戦略があったとか思われているかもしれないが、実際は現場のメンバーが主体となって『スタンダードなこと』を徹底してやり続けてきたというのが現実。決して何か特別な手法を使ったわけではない」

「自分たちが主にやったことは、これまで残してもらっていた財産を活かしながら、少し古いルールで戦っていたところに最新のルールを教えたぐらい。病状で言えばメタボで栄養失調気味だったので、筋肉質にして血の巡りをよくするような方法を伝えたら、みんながどんどんアップデートしてくれた」(西條氏)

実際に中に入るまでは社内にどんなメンバーがいるのか十分に把握できていなかったため、当然上手くいかない可能性もあっただろう。その点は西條氏も認めるところで「もし次回同じようなことがあった場合、デューデリジェンス時にはとにかく社員との面談をやりたい」とも話す。

エキサイトを再び成長曲線に乗せるチャレンジとしてはいいスタートを切ったものの、真価が問われるのはこれからだ。再上場を見据えて売上のトップラインを伸ばしていくためには「既存事業に続く4本目の柱を打ち立て、新しいエクイティストーリーを作っていくことが必要」(西條氏)になる。

すでにそのための仕込みは始めていて、D2CやHRTech領域の新規事業を今後展開する計画。社内では新規事業創出会議や30歳以下の人材を育成する仕組みなど、次の事業の柱を作り出すための土壌を整えている。

TOBから1年、赤字体質からの脱却に成功したエキサイト。同社のここからのチャレンジに注目だ。

XTech子会社が優秀な“時短ママ”と成長企業つなぐ転職サービス「withwork」を開始

XTalentのメンバー。左から2人目が代表取締役の上原達也氏、3人目が執行役員の松栄友希氏

XTechの子会社であるXTalentは10月7日、事業の第一弾として優秀な”時短ママ”向けの転職サービス「withwork」を正式ローンチした。

スタートアップスタジオのXTechはこれまで子会社を通じて複数の新規事業を創出してきた。たとえば先日1.2億円の資金調達を実施している食材のB2Bマーケットプレイス「クロスマート」もその1つ。新しく子会社を立ち上げるだけでなく、エキサイトの事例のように他社を買収して再編するケースもある。

その中で「子育て世帯の新しいキャリアのあり方」を実現することを目指し、今年7月に設立したのがXTalentだ。有料職業紹介免許を10月1日に取得し、本日より正式にサービスを開始した。

withworkは子育てによって時間的な制約がある優秀な時短ママと、柔軟な働き方を提供できる成長企業を繋げる人材サービス。時短制度の詳細(利用可能期間など)や給与体系、すでに在籍するママの勤務状況のような「求人票には書かれていない企業情報」をXTalentが調査した上でマッチングを行う。

限られたスキマ時間を使って転職活動を進められるように、来社ナシの電話面談やLINEを使った転職アドバイス、経歴書の作成代行などを行い、従来の人材紹介会社が十分にできていなかったサポートを実施する。

「スタートアップのような成長企業こそ、ママが活躍しやすい環境があると思っています。 一方で、転職サイトやエージェントの求人票にそういった情報もありません。 育児と仕事の両立に忙しい時短ママに寄り添って、効率的に転職活動を行えるよう支援し、テクノロジーによる効率化も駆使して社会インパクトの大きいサービスを目指していきます」(XTalent代表取締役の上原達也氏)

これは上原氏自身も言っていたことだけれど、現時点では何かテクノロジーを使った真新しい仕組みがあるわけではなく、とてもシンプルな転職サービスだ。このあたりはそもそも「ママの転職というマーケット自体が成立しきっていない」ため、まずはマーケットを作るためにユーザーや企業への啓蒙に力をいれていく方針とのこと。

ただ中長期的にはLINEを活用したチャットボットと人力を組み合わせたサポート、職務経歴書の自動作成、時短ママならではの要素(たとえば通勤時間や保育園の預かり時間)を加味した求人マッチングのアルゴリズム開発なども考えていくという。

XTalentの中心メンバーである上原氏と執行役員の松栄友希氏は共に2人の子どもを育てる現役のお父さんとお母さん。上原氏はITベンチャーのSpeeeを経てJapanTaxiに入社し、相乗りタクシーや法人向けサービスに携わった後、今年7月にXTechにジョインした。松栄氏は前職のリブセンスでエンジニア向け転職サービス「転職ドラフト」の立ち上げを担当した経験を持つ(XTech代表取締役CEOでXTalentの取締役も務める⻄條晋一氏も2児の父だ)。

子育てとスタートアップで働くことのどちらも経験しているチームだからこそ「ユーザーのペインと課題解決による可能性を確信しており、粘り強くこのテーマに取り組んでいけると考えています」(上原氏)

日本でも子育てをしながら働く女性が増えると共に「待機児童」や「マミートラック(産休などから職場復帰した女性が、昇進や昇格から遠ざかり第一線で活躍しづらくなってしまうこと)」などの社会問題が注目を集めることが増えてきている。

withworkのテーマの1つは「時短ママを成⻑企業のエース人材に変えること」。こうした社会背景の中で「時間よりもパフォーマンスを高く評価する」という風潮を高めること、時短ママにスポットライトを当てる社会の新しい価値基準を発信し続け、社会常識の当たり前の基準を変化させることがサービス立ち上げの背景にある。

まずは転職支援を提供することから着手し、就業規則コンサルティングや自治体と連携した保活支援サービスなど、子育て世帯のキャリア支援に向けた事業展開も検討していくという。

「社会人人生は一貫して、スタートアップで働いてきました。その中で見えてきた、課題感と新しい働き方ができるという可能性への期待感があると肌感覚で実感しています。この業界を愛しているからこそ、自分自身もパパだからこそ、子育てしながら活躍できる世界観を実現していきたいと思います」(上原氏)

「いちママとして、働くママの心情に寄り添ったサービス展開をしていきます。また私自身が時短でこの事業に参画していることから、時短でも高いパフォーマンスを出せることを体現していきたいと考えています」(松栄氏)

飲食店の仕入れコストを減らすクロスマートが1.2億円調達、リリース半年弱で250店舗が導入

飲食店の仕入れコストを減らすプラットフォーム「クロスマート」を運営するクロスマートは9月24日、ベンチャーユナイテッド、セゾン・ベンチャーズ、XTech Ventures、梅田裕真氏などを引受先とする第三者割当増資により総額1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社はTechCrunchでも何度か紹介しているXTechの子会社として設立されたスタートアップ。2019年4月より展開するクロスマートでは、飲食店と卸売業者をつなぐことで飲食店に「仕入れコストを削減する手段」を、卸売業者には「新たな顧客開拓チャネル」を提供してきた。

飲食店の食材原価率は一般的に30%ほどとも言われるように、店舗にとって仕入れコストの削減は利益を増やす上で大きな影響を与える。ただクロスマートがメインターゲットとしている小規模の飲食店や個店の多くは自ら把握している仕入れ先の選択肢が限られているため、簡単にこのコストを減らせるわけではない。

そこで従来は飲食店コンサル経由で複数業者に見積もりをとったり、「飲食店.COM」のようなマッチングサイトを使ったりしていたわけだけど、クロスマートはそれをよりシンプルに、かつ効果的にできるような仕組みを整えた。

同サービスのウリは飲食店が1ヶ月分の納品伝票を登録するだけで、複数の卸売業者から一括で見積もりの提案を受けられることだ。スマホから請求書を撮影しさえすればいいので作業時間はだいたい10〜15分ほど(登録作業自体をクロスマートに依頼することもできる)。日々の業務内で無理なく使えるだけでなく、コンサルに依頼する場合などと違って飲食店側の利用料金が無料のためハードルも低い。

「(飲食店としては)どうしても集客の方を優先しがちだが、実は売上を伸ばすよりも仕入れコストを削減できた方が経営的なインパクトが大きいことも多い。クロスマートは納品データを軸に、今よりもコストが下がるというピンポイントの提案だけが届く。無駄な提案は一切こないことが他にはない特徴だ」(クロスマート代表取締役の寺田佳史氏)

「飲食店の人たちは仕入れ以外の仕事もあるので、仕入れ先の選別だけに膨大な時間をかけるというのは難しい。従来の仕組みでは自分で積極的に情報を集めて、複数の業者に問い合わせた上で話を聞く必要があった。クロスマートでは納品書をあげさえすれば、後は相手から情報が届く。ある意味“受け身”の姿勢で効果的にあいみつを取れる」(クロスマート執行役員の岡林輝明氏)

各提案ごとにどのくらいのコスト削減効果が見込めるかがすぐにわかる

サービススタートから約5ヶ月が経った現在は約250店舗の飲食店と約50社の卸売業者が利用。平均で5%のコスト削減を実現している。

「この半年ほど、まずは飲食店の成功体験を作ることを目標にやってきた中で、大きなものでは年間60万円のコスト削減につながるような例もでてきた。単にコストを下げたというだけでなく、その先で顧客向けのキャンペーンにお金を使えるようになったり、アルバイトスタッフの給料をあげることができたりなど、成功事例と言えるものが増えている」(寺田氏)

クロスマートのビジネスモデルは飲食店側からはお金を受け取らず、卸売業者から月額の利用料を得る構造。ミニマムでも月額5万円からのため、当然ながら卸売業者がそれだけの料金を払ってでも使いたいと思うサービスになっている必要がある。

卸売業者側の画面イメージ

その点についてはこれまでになかった「新規顧客の開拓チャネル」として卸売業者から評価されているそうで、毎月10〜20件のペースで利用企業が増えているという。

「新規開拓のために飛び込み営業をしている業界。優秀な営業マンであっても獲得できるのは月に3〜4件とも言われているので、月額数万円を払っても新たな顧客が獲得できれば十分ペイする。Web上で双方をマッチングする既存サービスは『食材を買いたい』という飲食店の書き込みに対してレスをする形が多く、その飲食店が何を買っているのかがわからない状態で提案をする。クロスマートの場合は、どの飲食店が何をいくらで買っているか把握した状態で商談を開始できるので、卸売業者にとっても効率がいい」(寺田氏)

今のところ卸売業者側のユーザーは大きく2パターン存在するとのこと。1つはすでに営業マンが何人もいる業者が営業活動をより生産的に行うべく導入するケース。そしてもう1つが人員が足りず営業活動を積極的にできていない業者が、事業を伸ばすために導入するケース。

どちらにせよ無闇に営業マンを増やすよりも効果が見込めるということで、引き合いが増えているそうだ。

今回の資金調達は飲食店側を中心に、双方の利用企業が増えて成功事例が生まれているタイミングで「営業を含めて一層アクセルを踏むため」のもの。人材採用を強化しさらなる事業拡大を目指すという。

「目標として掲げているのは外食産業の生産性自体をあげていくこと。飲食店と卸売業者をマッチングすることで仕入れのコストを削減するのはその1歩目で、ゆくゆくは日々の受発注や代金の支払いなど飲食店のバックオフィスの生産性向上を一気通貫でサポートできるサービスを目指したい」(寺田氏)

クロスマートのメンバー。最前列左から執行役員の岡林輝明氏、代表取締役の寺田佳史氏、取締役の西條晋一氏

元サイバー西條氏が率いるXTech、株式投資型クラウドファンディングへ参入

元サイバーエージェント役員の西條晋一氏が代表を務めるスタートアップ支援企業のXTech(クロステック)は11月21日、株式投資型クラウドファンディングへの参入を目的に新会社イークラウドを設立したと発表した。また、同社は大和証券グループ本社の100%子会社であるFintertechからの資金調達も発表。これによりイークラウドの株主構成は、XTechが58%、Fintertechが42%となる。資本金は4億4200万円。

イークラウドが手がける株式投資型クラウドファンディングは、資金的な支援の代わりに開発中のプロダクトなどを受け取る通常のクラウドファンディングとは異なり、投資家から得た資金の見返りに非上場株式を発行し、多くの人たちから少しずつ資金を集める仕組みだ。

株式型クラウドファンディングへ参入する理由として、XTech代表取締役の西條氏は「金融商品は均質化しやすく、どこでも扱っているものは同じということがほとんど。しかし、株式投資型クラウドファンディングでは、有望な会社を目利きして、プラットフォームに並べることで、独自の魅力的な金融商品を投資家にご提案することができます」と説明する。

株式型クラウドファンディングはまだ国内でも始まったばかりの仕組みだが、海外ではすでに同様のサービスを経由して資金を集めたスタートアップがユニコーンとなるなどの実績がある。イギリス発フィンテック企業のMonzoなどがその例だ。

XTechはこれまでベンチャーキャピタルとしての活動で培ったノウハウを活用し、クラウドファンディングのプラットフォームに並べる未上場企業を選定する。また、大和証券グループと手を組むことで、同グループが培った証券・金融サービス運営のノウハウを活用する。すでに大和証券からの人材の供給もあり、スタートアップでは遅れがちなコンプライアンス、ガバナンス体制を整えた上で事業を展開していくという。

元サイバー西條晋一氏が代表を務めるXTech、エキサイトにTOBを実施

元サイバーエージェント役員の西條晋一氏が代表を務めるXTechは9月7日、子会社のXTech HPを通じてエキサイトの普通株式を公開買付け(TOB)により取得すると発表した。取得価格は1株あたり875円。最終的には、エキサイトの全株式を取得し完全子会社化することが目的のようだ。期間は2018年9月10日から10月24日まで。決済の開始日は10月31日。

XTechは既存産業×テクノロジーで新規事業を創出するコンセプトの会社で、今年の1月に設立されたばかり。XTechの子会社でベンチャーキャピタル事業を手掛けるXTech Venturesは9月3日、元ユナイテッド取締役の手嶋浩己氏を共同創業者兼ジェネラルパートナーとして迎えたことを発表していた。

元サイバーエージェント西條晋一氏によるXTech Venturesが1号ファンドを組成、「ミドル層の起業をサポート」

元サイバーエージェント役員で多くの新規事業立上げを経験した西條晋一氏が代表取締役を務める独立系ベンチャーキャピタル「XTech(クロステック)Ventures」は8月6日、50億円規模の1号ファンド(XTech1号投資事業有限責任組合)を組成したと発表した。

主なLPはみずほフィナンシャルグループ、東京建物、グリー、あらた。投資ステージはシード・アーリーで、平均投資予定額は約1億円としている。同ファンドは8月3日にファーストクローズを実施、8月中にも投資を開始する予定だ。ファイナルクローズは年内を予定している。

XTech Venturesは「既存産業やIT業界のミドル層の起業をサポートし、多面的な経営支援・IPO支援を行うことで投資先企業の飛躍的成長を目指す」ことをミッションとしている。

起業というと大学生など20代の若い世代を想像しがちだが、なぜ、あえて30代後半から40代のミドル層に特化したサポートにコミットするのか。同社設立時点の2018年1月、西條氏も44歳だが、同氏はは取材に対し「30代~40代の起業家がネット業界で、あまり出てきていないから」だと答えた。

「インターネット業界が出来た2000年前後であればともかく、今は業界ができてから20年近く経っているので、それなりに経験者が育ってきていると思う。業界に5年~10年いた人の中には“自分でできる”層はかなりいると思うが、起業家が出てこない。そういう層をサポートしたいと思い、XTech Venturesを作った」(西條氏)

西條氏によれば投資家になったり、大きな会社にまた転職する人は多いが「絶対数がもっと欲しいのは“自分でやる”という人」だという。

XTech Ventures代表取締役の西條晋一氏

なぜミドル層は起業に消極的なのか。同社は「会社で出世しているからやめる機会がない」「昔のイメージだと起業はハイリスクだと思われがち」「家庭などある中で挑戦しにくい」などと分析している。そのようなイメージを払拭するために動いたのがXTech Venturesだ。

起業というと大学生など20代の若い世代を想像しがちだが、2015年に米国の時価総額1000億円以上のスタートアップを分析したTechCrunch記事によると、創業時の創業者の平均年齢は34歳。B2Cは30歳と若いが、SaaSだと35歳、コンシューマ製品/IoTは36歳、法人向けソフトは38歳となっている。

傾向として「スマホでB2Cの新しいサービスを立ち上げるのは30代。SaaSや法人向けのものはその業界にいた人たちがテックをマスターして始める」のでは、と西條氏は分析。

加えて、米国のthe National Bureau of Economic Researchが2018年4月に発表した調査によると、創業時にミドル層であった起業家のほうが若年層よりも成功を収めている傾向にあるという。西條氏はミドル層には「新規事業等経験していて経験豊富であるため、起業しても成功率が高い」「経験と人脈で大企業とのコラボがしやすい」などの強みがあると話した。

西條氏はVCのXTech Venturesと同時に兄弟会社「XTech」も設立。これは“既存産業×テクノロジー”で新規事業を創出するというコンセプトを持つ会社だ。「Startup Studio」という事業を行なっており、様々なフィールドの知識・ノウハウを持つ新規事業成功の経験者たちが、スタートアップを創出したり、成長を支援する。ミドル層にとって“アイディアの創出”も一つのハードルになっているが、そこはStartup Studioでサポートが行えると同氏は話した。

同氏は“既存産業×テクノロジー”の分野でもミドル層はその能力を大いに発揮できると語っていた。今後、日本でも勇気を持った30代~40代の起業家たちが多く出てくることを期待したい。