Web接客で“おもてなしをデジタル化”するSprocketが2.8億円の資金調達

右から2番目がSprocket代表取締役の深田浩嗣氏

おもてなしをデジタル化

「デジタルマーケティングの領域はどんどん広がっている。もともと、マーケティングはどれだけ沢山の人に企業が伝えたいことを届けるかといった活動だったと思うが、今はウェブやアプリで物が買え、そのあとフォローができたりする。単純にメッセージを届けるだけではなく、お店の役割やその後の関係構築の役割がある」

そう話すのは、Web接客プラットフォーム「Sprocket(スプロケット)」の開発・提供・運用を行うSprocket代表取締役の深田浩嗣氏。

「だが、実際にマーケティングのコミュニケーションとして届けられている情報や内容の質的な部分はそこまで大きく変わってきていないな、と思っている。割引のクーポンやポイントといった情報、もしくはオススメ商品を届けるか、この2パターンくらいしかコミュニケーションの幅がない」(深田氏)

お店に行くと、店員は顧客に割引情報の話しばかりをするわけではない。だが、デジタルだと「やりがち」だと深田氏は指摘。ECなどにおいて、顧客の求めている情報の提供や不安の解消が適切に行えていない。そこの部分におけるコミュニケーション幅を広げ「おもてなしをデジタル化」するべくSprocketは開発された。

Web接客プラットフォームSprocket

Sprocketはページ閲覧、スクロール、クリックなど、ユーザーのサイト上での行動の情報を活用し、カスタマージャーニーに合わせて最適なタイミングでポップアップを表示する。最近では、「ユーザーに話しかけていいタイミングをAIに最適化させる」といった試みも開始。「チューニングの1つの手法」として取り入れられている。

サイト上には様々な導入事例が用意されている。2018年9月にSprocketを導入したキユーピーが開発したサプリ・化粧品の直販会社、トウ・キユーピーの事例では、カート内でポップアップを表示することで「顧客に定期購入へのアップセルを提案する施策」を実施し、顧客単価を120%向上させることができたという。

すかいらーくレストランツは2018年1月にSprocketを導入し、新規会員獲得率が120%になったと説明している。

深田氏は「今後、コミュニケーションの幅を更に広げていきたい」と話した。

リアル店舗で行われている、「商品の選び方のサジェスト」や「不安の解消」はツールを作り行ってきたが、「デジタルでできるコミュニケーションの幅は本当はもっと広い」(深田氏)

そのため、お店の接客的なものじゃない形でも、ちょっとしたゲーミフィケーション要素など、リアル接客とは違ったデジタル特有のものも検討していると同氏は加えた。

競合はプレイドの「KARTE」NTTドコモの「ec コンシェル」など。競合とSprocketはどう違うのか。深田氏は、「我々の特徴は改善の成果を提供するまで手厚くサポートすること」だと述べた。

「契約時にROIを設定し、そのROIの到達に向けて、SprocketチームがPDCAを回す」「豊富な経験から貴社にあったシナリオの組み合わせを迅速に提案」といった具合に、カスタマーサクセスにコミットしている。

2.8億円の資金調達、Sprocketの今後

Sprocketは6月4日、リード投資家のXTech Ventures、Salesforce Ventures、キャナルベンチャーズから総額2億8000万円の資金調達を実施したと発表した。

同社は2015年に1億2000万円の資金調達を行い、2017年1月にもシリーズAとして1億6000万円の資金調達をD4V、アコード・ベンチャーズなどから行っている。累計調達額は5億6000万円。

同社は今回の資金調達により「プラットフォームの開発スピード」ならびに「市場拡大に向けた販売促進策」を加速させる。

Salesforce Ventures日本代表の浅田慎二氏は「今後、Salesforceと連携、協業することで、日本市場だけでなくグローバル展開も可能であり、期待している」とコメントしている。

オンライン結婚式準備サービス運営のリクシィがXTech Venturesなどから約1.6億円調達

オンライン結婚式準備サービス「Choole」(チュール)を運営しているリクシィは4月8日、プレシリーズAラウンドとして約1.6億円の資金調達を発表した。XTech Ventures、SMBCベンチャーキャピタル4号投資事業有限責任組合、個人投資家8名を引受先とする第三者割当増資による調達となる。同社の資本金は、資本準備金含み合計2億7162万円になったとのこと。

Chooleは、ウエディングドレスやヘアメイクなどの必要なアイテムを自分の好みで選んだうえで結婚式場を決められるサービス。今回の資金調達で、中長期的なサービス運営体制を強化する。また今回の資金調達にあわせて、スクリーンショットを送るだけで結婚式場やドレスを提案してくれる「Chooleスクショリコメンド」のサービスを開始する。同サービスをべースに、ユーザーの嗜好に合わせた結婚式場やドレス、ショップ、クリエイターなどをAIにより提案できる新機能の開発を目指す。

同社によると、提供中のウエディングプラットフォーム事業である「gensen wedding」(ゲンセンウエディング)は、サービス開始以来350組以上の結婚式のプランニングを手掛けているとのこと。

Webマーケ支援のADlive、XTech Venturesなどから1億6000万円調達

中小企業を対象にWebマーケティング支援などを行うADlive(アドリヴ)は1月18日、XTech Venturesとみずほキャピタルから1億6000万円を調達したと発表した。

ADliveは中小企業に特化したWebマーケティングを手がけるスタートアップだ。Webサイト制作、保守・運用、多言語化サポートなどをパッケージにしたコンサルティングソリューションの「URUURERU」を提供するほか、広告やWebサイトのクリエイティブ制作、営業ツールの開発などを行う。

同社は2017年5月にURUURERUを提供開始。中小企業を中心に、これまでに約500社をクライアントとして獲得している。1社あたりの平均顧客単価は30万円程度だという。

ADliveは今回調達した資金を利用して、今後も中小企業向けのプロモーションを続けるとともに、アジア諸国への展開にも取り組んでいくという。

元サイバー西條晋一氏が代表を務めるXTech、エキサイトにTOBを実施

元サイバーエージェント役員の西條晋一氏が代表を務めるXTechは9月7日、子会社のXTech HPを通じてエキサイトの普通株式を公開買付け(TOB)により取得すると発表した。取得価格は1株あたり875円。最終的には、エキサイトの全株式を取得し完全子会社化することが目的のようだ。期間は2018年9月10日から10月24日まで。決済の開始日は10月31日。

XTechは既存産業×テクノロジーで新規事業を創出するコンセプトの会社で、今年の1月に設立されたばかり。XTechの子会社でベンチャーキャピタル事業を手掛けるXTech Venturesは9月3日、元ユナイテッド取締役の手嶋浩己氏を共同創業者兼ジェネラルパートナーとして迎えたことを発表していた。

元サイバーエージェント西條晋一氏によるXTech Venturesが1号ファンドを組成、「ミドル層の起業をサポート」

元サイバーエージェント役員で多くの新規事業立上げを経験した西條晋一氏が代表取締役を務める独立系ベンチャーキャピタル「XTech(クロステック)Ventures」は8月6日、50億円規模の1号ファンド(XTech1号投資事業有限責任組合)を組成したと発表した。

主なLPはみずほフィナンシャルグループ、東京建物、グリー、あらた。投資ステージはシード・アーリーで、平均投資予定額は約1億円としている。同ファンドは8月3日にファーストクローズを実施、8月中にも投資を開始する予定だ。ファイナルクローズは年内を予定している。

XTech Venturesは「既存産業やIT業界のミドル層の起業をサポートし、多面的な経営支援・IPO支援を行うことで投資先企業の飛躍的成長を目指す」ことをミッションとしている。

起業というと大学生など20代の若い世代を想像しがちだが、なぜ、あえて30代後半から40代のミドル層に特化したサポートにコミットするのか。同社設立時点の2018年1月、西條氏も44歳だが、同氏はは取材に対し「30代~40代の起業家がネット業界で、あまり出てきていないから」だと答えた。

「インターネット業界が出来た2000年前後であればともかく、今は業界ができてから20年近く経っているので、それなりに経験者が育ってきていると思う。業界に5年~10年いた人の中には“自分でできる”層はかなりいると思うが、起業家が出てこない。そういう層をサポートしたいと思い、XTech Venturesを作った」(西條氏)

西條氏によれば投資家になったり、大きな会社にまた転職する人は多いが「絶対数がもっと欲しいのは“自分でやる”という人」だという。

XTech Ventures代表取締役の西條晋一氏

なぜミドル層は起業に消極的なのか。同社は「会社で出世しているからやめる機会がない」「昔のイメージだと起業はハイリスクだと思われがち」「家庭などある中で挑戦しにくい」などと分析している。そのようなイメージを払拭するために動いたのがXTech Venturesだ。

起業というと大学生など20代の若い世代を想像しがちだが、2015年に米国の時価総額1000億円以上のスタートアップを分析したTechCrunch記事によると、創業時の創業者の平均年齢は34歳。B2Cは30歳と若いが、SaaSだと35歳、コンシューマ製品/IoTは36歳、法人向けソフトは38歳となっている。

傾向として「スマホでB2Cの新しいサービスを立ち上げるのは30代。SaaSや法人向けのものはその業界にいた人たちがテックをマスターして始める」のでは、と西條氏は分析。

加えて、米国のthe National Bureau of Economic Researchが2018年4月に発表した調査によると、創業時にミドル層であった起業家のほうが若年層よりも成功を収めている傾向にあるという。西條氏はミドル層には「新規事業等経験していて経験豊富であるため、起業しても成功率が高い」「経験と人脈で大企業とのコラボがしやすい」などの強みがあると話した。

西條氏はVCのXTech Venturesと同時に兄弟会社「XTech」も設立。これは“既存産業×テクノロジー”で新規事業を創出するというコンセプトを持つ会社だ。「Startup Studio」という事業を行なっており、様々なフィールドの知識・ノウハウを持つ新規事業成功の経験者たちが、スタートアップを創出したり、成長を支援する。ミドル層にとって“アイディアの創出”も一つのハードルになっているが、そこはStartup Studioでサポートが行えると同氏は話した。

同氏は“既存産業×テクノロジー”の分野でもミドル層はその能力を大いに発揮できると語っていた。今後、日本でも勇気を持った30代~40代の起業家たちが多く出てくることを期待したい。