「ユーザーと近い世代の方がいいものを作れる」東大発・Flattがライブコマースアプリ「PinQul」公開

「参入企業は増えてきているものの、ライブコマースに特化してやっているところはまだ多くない。僕たちはライブコマースのプラットフォームを作っていきたい」——そう話すのは、現役東大生が中心となって起業したFlatt代表取締役CEOの井手康貴氏と、COOの豊田恵二郎氏だ。同社は10月5日、ファッションアイテムを対象としたライブコマースアプリ「PinQul」をリリースした。

“ライブ配信”を通じた新たな購買体験として注目を集める、ライブコマース。2017年に入ってから日本でも次々と立ち上がり、Techcrunchでもほぼ毎月ライブコマースに関連するニュースを紹介してきた。

直近ではGUが参入したり、俳優の山田孝之氏がライブコマース事業を手がける会社を立ち上げたりと大きな動きもあったものの、まだサービスが本格化するには至っていない。メルカリやBASEの参入も注目を集めたが、あくまでメインサービスの販売チャネルの1つという印象が強く、現時点では圧倒的なサービスがあるわけではない。

今回Flattはアプリのリリースに合わせて、第三者割当増資による資金調達を行ったことを明かしている。引受先はフリークアウト・ホールディングス代表取締役社長の佐藤裕介氏、ペロリ元代表取締役の中川綾太郎氏を含む複数名の個人投資家。金額は数百万規模だという。

Flattにとって外部からの資金調達は今回が初めてで、これを機にライブコマースプラットフォームを拡大する方針だ。

本当に気に入ったものだけを紹介する、ライブコマースアプリ

PinQulは女子高生や女子大生など若い女性をターゲットに、インフルエンサーがお気に入りのファッションアイテムを紹介するライブコマースアプリだ。

誰でも自由に配信できるC2C型ではなく、PinQulの運営によって選ばれたインフルエンサーが配信を行う。方向性としてはCandeeのLive Shop!に少し近いが「番組の作り方が異なる」という。

「(Live Shop!は)コンテンツが重視されていて、1時間前後のテレビ番組を見ているような感覚。しっかりとした企画があって、その一部で商品が紹介される。PinQulではよりコマース軸に振り切って、その時に売りたい服を20~30分で紹介するというものが多い。基本的には商品の紹介とそれに対するコミュニケーションで成り立っている」(豊田氏)

PinQulで取り扱う商材は「配信者の所有するアイテム(フリマ形式)」「既存のブランド品」「インフルエンサー自信がデザインしたアイテム」の大きく3つ。敷居を低くする意味でも最初はフリマ形式をメインにするが、徐々に残りの2つを増やすようにシフトしていくそうだ。

ブランド品については「merry jenny」「EMODA」などを展開するMARK STYLER傘下のブランドの取り扱いがすでに決定済み。今後も取り扱い商品を拡大しながら、従来のECよりも店舗に近い形での購入体験や、ファッションショーの生配信とコマースの掛け合わせなど新たな取り組みを検討する。

また既存の製品だけでなく、Flattが提携するODMメーカーと組んでインフルエンサー自身がデザインした商品を販売できるような仕組みも整える。この背景には既存のインフルエンサーマーケティングに対する課題感があるという。

「(インフルエンサーマーケティングの中には)ある意味『信用を切り売り』しているような事例も多い。ブランドから言われた商品を自分のSNSで紹介しても、今のユーザーはそういう動きには敏感で反応が薄かったり、コメント欄が荒れたりするなど評判が良くない。PinQulではあくまで自分の気に入ったものを紹介してマネタイズできる仕組みを目指していて、その究極が自分で作ったアイテムを売ることだと考えている」(井手氏)

「ユーザーと同世代」という強みを活かす

Flattの設立は2017年5月。エンジニアとしてFiNCやメルカリに在籍していた代表の井手氏を始め、東大生を中心にPinQulのユーザーと同年代の若いメンバーが集まる。

PinQulの構想は井手氏がメンバーの1人と中国を訪れた際に、ライブコマースが実際に流行していることを体感したことから。セキュリティ分野のサービスと迷ったそうだが、市場の盛り上がりやメルカリに関わったことでコンシューマー向けのサービスに興味を持ったこと、そしてユーザーと同年代であることもありこの領域を選んだ。

確かに若い世代のインフルエンサーに対する熱心度や、既存のインフルエンサーマーケティングに対する反応は同年代だからこそより実感できる部分はありそうだ。実際サービス設計の面ではもちろん、配信者となるインフルエンサーを開拓する際も、自分たちのまわりにターゲット層の女性が多いことはすごく大きいという。

たとえばインフルエンサーについては、同世代の女性がフォローしている「マイクロインフルエンサー」を見つけ、自分たちからアプローチをしているそう。事務所に所属していなかったり、一般的な知名度はなくても影響力を持つ女性を集めコミュニティを作っているという。

PinQulの正式なリリースは本日だが、1ヶ月程前からベータ版を運用。10個の商品が0.3秒で売り切れる(正確にはカートに追加され、その後全商品が決済された)こともあり、規模はまだ小さいがニーズは感じているそうだ。

これから他のサービスが参入することも十分考えられる領域なだけに、PinQulがどこまでプラットフォームを拡大できるのか、今後に注目だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

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