その売上を牽引しているのはもちろんゲーム事業だが、「ゲームの次」の領域として積極的に投資しているのが、動画や音楽といったメディア関連の新規事業だ。
メディア関連の新規事業に注力
テレビ朝日と組んだ動画配信サービス「Abema TV」は今月中にも先行配信を開始。4月には約20チャンネルを用意し、本格的にサービスを展開していく。1月にスタートしている動画配信サービスの「Ameba FRESH」も200チャンネル1000番組を配信。まだ数字を発表できる段階ではないようだが、「初速は好調」(サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏)だという。
また2015年9月にリリースしたサブスクリプション型音楽配信サービス「AWA」も成長中だ。こちらもまだ具体的な数字は開示されていないが、月間利用時間ベースではApple、Amazon、Google、LINE各社が提供する競合サービスをおさえて月間利用時間で1位になっているという(2015年12月にApp Annieで調査。調査対象はAndroid端末のみということなので、Apple Musicについてはなんとも言えないところがあるが…)。ただしAWAのマネタイズにはまだまだ時間が掛かるというのが同社の認識。サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏は「着々と伸びている。黒字転換するするというのはもともと分かっていたことだが、日本でサブスクリプションサービスをやるのは何年かかかる。サービスを磨き上げていく」と語る。
755は「メディア」から「コミュニケーション」に
そんな中で今回フルリニューアルするのが、子会社7gogoで展開するコミュニケーションアプリの「755」だ。755は「トークルーム」と呼ぶタイムラインをユーザーそれぞれが作成。そこに自身が投稿したり、他のユーザーがコメントを付けたり、Twitterのリツイートにあたる引用利用の「リトーク」といった機能をそなえる。
今回のリニューアルではアプリのデザインを一新したほかウェブにも対応。また、SNS「mixi」ライクな足あと機能を導入することで、ユーザー間の回遊を活性化する。昨年末にはニュースの閲覧(とそれもとにした投稿)機能もつけた。今後はTwitterほか外部SNSとの連携機能も強化する。
「これまでは有名人と一般ユーザーによる『1対n』のコミュニケーションアプリだった。だがユーザー同士がコミュニケーションする『n対n』のためのサービスにシフトしている」——藤田氏はこう語る。僕は以前に755の話を藤田氏と、7gogoファウンダーの堀江貴文氏にサービスの話を聞いたことがあるのだが、そこで目指すのは「コミュニティではなくメディア」だと聞いていた。AKB48のメンバーをはじめとした著名人が755にルームを開設して自らの情報を発信。また並行して2014年末から2015年初にかけては10億円とも言われるテレビCMを出稿してダウンロード数も伸ばしたが、満足いく成功とは言えなかった。そこで改めてユーザー間のコミュニケーションサービスとしてリニューアルさせたのが、新生755だという。
著名人ではなく、ユーザー同士が話すのであればTwitterでもFacebookでもいいのではないか?
各種SNSと755との差について、藤田氏はタイムラインの「オープンさ」の違いを挙げる。「ツイッターでもユーザーごとのつぶやきは閲覧できるが、通常のタイムラインにはほかのフォロワーのつぶやきが流れる。そんな『他人のフィールド』で聞かれてもいないようなことをつぶやくことのには『差し出がましい』と思ってしまうようなこともある」(藤田氏)。755はユーザーごとにルーム(タイムライン)を持つことになるので、他のサービスに比較してクローズであり、「ほかのSNSよりも『自分のフィールド』で自由に話すことができる」のだという。たしかにTwitterで独り言を延々つぶやくようなことは苦手だという人は少なくないだろう。
またそんな755での独り言を誰が読んでくれたか分かるように足あと機能を導入した。「(足あとは)賛否両論あると思うが、スムーズにチェックできるようUI/UXにも配慮している」(藤田氏)