【レビュー】2022 Polestar 2、Android OSと交換可能なバッテリー&パーツがEVに磨きをかける

2020年、Polestar(ポールスター)が発売した最初の電気自動車は、デュアルモーターの全輪駆動構成、インセンティブ前の価格が約5万ドル(約570万円)という単一の仕様だった。しかし同社は2022年、新たなバリエーションを増やすという。

新たにPolestarが発売するのは、シングルモーターの2輪駆動バージョンのセダンだ。デュアルモーターのPolestar 2の特徴を多く備えながらも、より手頃な価格でより環境に優しい、電気自動車への切り替えを検討している人にとっては魅力的なオプションとなっている。今回、試乗であれこれとチェックさせてもらってきた。

シングルモーターVSデュアルモーター

画像クレジット:Kirsten Korosec

シングルモーターの「2022 Polestar 2」の航続距離は270マイル(約435km)とされており、パワーはやや劣りオプションもやや少ないが、ドライブを快適にしてくれるあらゆるテクノロジーが搭載されている。

デュアルモーターのように2つのモーターで4輪を駆動するのではなく、231馬力のパワーと243ポンドフィートのトルクをすべて前輪に配分するのがシングルモーターバージョンだ。2022 Polestar 2シングルモーターには、前輪と後輪の間の床下に78kWhのバッテリーパックが搭載されており、同社によると使用可能容量は75kWh。Polestar 2デュアルモーターにも同じバッテリーパックが搭載されている。Polestarは充電の高速化やバッテリーの設定を微調整して効率を上げるための無線アップデートをすべての車両において取り組んでいる。

The 2022 Polestar 2シングルモーターセダンには、オプションで機械式ヒートポンプ(Plus Packで4000ドル、約45万円増)が追加でき、より厳しい気候でも充電量を維持できるようになっている。同社によると特定の気候条件の下では、ヒートポンプが外気から熱を集め、航続距離を最大10%延長することができるという。Polestarの試算によると、2022 Polestar 2シングルモーターは、ヒートポンプを活用すればさらに27マイル(約43km)の航続距離を得ることができるということになる。

今回のモデルではフル装備のLaunch Editionが廃止され、Polestar 2シングルモーターがその代替となっている。Launch Editionではガラス製だったルーフを金属製に変更し、環境に配慮した内装を採用して装備を簡素化しているが「パック」と呼ばれる複数のオプションも用意している。

ヒートポンプ、ガラス製パノラミックルーフ、Harman Kardon(ハーマン・カードン)製プレミアムオーディオ、ワイヤレス携帯電話充電器などがセットになった「Plus Pack」を選ぶことも可能だ。筆者が試乗したPolestar 2のプロトタイプにはこのパックが搭載されていた。また、アダプティブ・クルーズ・コントロールやLEDエクステリア・ライティングなどを含むPilot Pack(3200ドル、約36万円増)を選ぶこともできる。残念ながら、筆者が運転した車両にはアップグレードされたADASシステムが搭載されていなかったため、同社がいうレベル2の運転支援機能を試すことはできなかった。

ネイティブAndroid OSとOTAアップデート

画像クレジット:Kirsten Korosec

Polestar 2は、Google(グーグル)のAndroid Automotive OSを初めて採用した車でもある。Volvo(ボルボ)も、Volvo XC40 Rechargeのような一部車両にAndroid Automotive OSを展開しているが、Polestarはブランド全体でこのプラットフォームを採用している。

Android Automotive OSはLinux上で動作するオープンソースのOSで、Polestarをはじめとする自動車のインフォテインメントシステムの基盤OSとして使用されている。その結果「Googleアシスタント」や「Googleマップ」「Google Playストア」などのGoogleのサービスが車にあらかじめ組み込まれているわけだ。Android OSは、スマートフォンの機能や操作感を車のセンターディスプレイに映し出すことができる、OSの上にある副次的なインターフェースであるAndroid Autoとは異なるものである。

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2022 Polestar 2では「Hey Google」というフレーズを使うことで、エアコンや道案内の操作など、車内のほぼすべての機能をボイスコントロールで利用することが可能だ。Googleのインフラはかなり一般に浸透しているため、誰でも非常に直感的に操作することができるだろう。

足もとが熱いことをシステムに伝えると、GoogleのOSがフットウェルの温度を下げてくれる。サンタバーバラで一番おいしいタコス屋を見つけたければ、筆者がやったようにGoogleに検索してもらい、そこまでナビゲートしてもらえば良い。運転中にタッチスクリーンに触れたことはほとんどなく、必要なことはGoogleにお願いするだけでほぼすべてのことができてしまった。

自然言語認識はGoogleが長年にわたって取り組んできたもので、その性能はますます向上している。このシステムを使っているとき、筆者は何度かリクエストを失敗したり、写真を撮るために地元のビーチに立ち寄ろうとしてぎこちないリクエストをしてしまったりしたことがあったのだが、システムは動揺することなく筆者の言葉を解きほぐし、要求した通りのことをやり遂げてくれた。

筆者が乗ったPolestar 2シングルモーターには、充電ステーションがAndroid OS上のGoogleマッププラットフォームに統合されていたのだが、ここには注意点がある。

Googleにルート上の充電スタンドを検索してもらうと、ブランドごとにフィルタリングをすることができる。しかし充電器が利用可能、または稼働中かどうかは教えてくれない。PolestarはChargePoint(チャージポイント)と提携して充電サービスを提供しているため、センタースクリーンにインストールされたChargePoint Appを使って選択した充電器の詳細を知ることができるが、画面をタップ操作する必要があるため最寄りの充電器に向かう前に一度車を止めることになるだろう。筆者の場合は、ハリウッドのパシフィックデザイン・センターからサンタバーバラまでの往復200マイル(約322km)の旅において、充電のために停車する必要はなかった。

同社によると、DC急速充電器であれば約30分で80%の充電が可能とのこと。Polestarのテクニカルオペレーション・スペシャリストであるGlenn Parker(グレン・パーカー)氏によると、これまでは80%充電するのに40分かかっていたためいくらか短縮されている。また、すべてのオーナーにアップデートを展開していく中で、今後も無線によるアップデートを継続することで、ポートフォリオ全体の効率と航続距離を向上させていくとパーカー氏は話している。

利用可能な充電器を探すのは面倒だが、Google MapsがPolestar 2の技術基盤に統合されたことで、新しい場所に移動したり、途中で寄りたい場所を追加したりするたびに推定航続距離が表示されるのは実に良い。筆者の日帰りドライブではロサンゼルスに戻るタイミングが悪く、ウェストサイドの渋滞に45分間も引っかかってしまったため、航続距離が20%ほど落ちてしまったのだが、最終的にはシステムが当初想定していた航続距離よりも数マイル多い状態で各目的地に到着したのはうれしい驚きだった。

路上にて

2022 Polestar 2デュアルモーターの試乗(ビデオクレジット:Kirsten Korosec)

Polestar 2シングルモーターは、静かかつ快適で、速い。同社によると0-60mphを7秒で達成できるとのことで、これは大したことではないように思えるが、特に低回転域のトルクがすぐに発揮されるため、加速車線から高速道路に合流するには十分な速度である。

筆者が試乗したプロトタイプでは、ステアリングフィールやワンペダルブレーキなど、いくつかの運転機能を調整することができ、車線逸脱警報などの運転支援システムのオン / オフを切り替えることもできた。残念ながら、前述のとおり筆者の試乗車には同社がPilot Packで提供している先進運転支援システムが搭載されていなかったため、それを試すことはできなかった。

電気自動車の楽しさの1つに、ブレーキモード(Bモード)、つまりワンペダルドライブがある。これはアクセルを離したときに、走っている車輪から得られる回生量を調整するものである。

Polestar 2では、ゆっくりと停止することができ、インフォテインメント画面で「Creep」モードの設定を切り替えると、アクセルペダルを踏まなくても車両がゆっくりと動きだす。筆者はほとんどの電気自動車を最もアグレッシブなブレーキ設定で運転しているが、これはロサンゼルスの交通事情においては最も効率的で楽しいモードだからである。Polestar 2の最高設定に多くの人は驚くかもしれないが、数分で慣れ、誰でも直感的に使えるようになる。ただし、筆者は回生ブレーキモードと組み合わせたときに不自然さを感じたので「Creep」機能はオフにした。

また運転中9割は「Firm」と呼ばれる最もアグレッシブなステアリング設定を使用した。基本的には選択した設定に応じてステアリングの比率が変わるシステムで「Firm」は最もダイレクト感のあるレスポンスを提供し、よりソフトな設定だとゆったりとしたレスポンスとなる。

修理、再調整、リサイクルの権利

同社は環境に配慮した製品づくりと素材選びにこだわりを持っており、自動車に搭載するバッテリーのライフサイクル全体に対して積極的に取り組んでいる。パーカー氏によると、同社はバッテリーに使用するコバルトの採掘をブロックチェーンで追跡しており、自動車の製造に使用する他の要素の追跡にもこのシステムの使用を検討しているという。

これに加え、同社はバッテリーとオーナーのライフサイクルについても比較的包括的に考えている。

Polestar 2シングルモーターのスタックパックは、部品が故障しても個別に交換することができ、パーカー氏によると1つの部品が故障した場合、同社がその材料を再び回収して閉ループシステムを形成するという。「再製造や、戻ってきた部品の再利用の方法を検討しています」と同氏。また同社では、修理方法の説明や、オーナーが直接購入できる部品カタログへのアクセスも提供している。

Polestar 2シングルモーターの価格は4万5900ドル(約520万円)からで、2022年1月から販売が開始される予定である(デスティネーションフィーおよび税金は含まれていない)。7500ドル(約85万円)の連邦税優遇措置と一部の州での優遇措置により、3万5000ドル(約400万円)程度まで下げることが可能だ(これにも税金とデスティネーションフィーは含まれていない)。

画像クレジット:Abigail Bassett

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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