アメリカではラーメンブームが来ており、ここサンフランシスコでも多くの店がラーメンを提供している。だが、実際に美味しいお店は多いのだろうか?
アメリカでラーメンのミールキットを提供するスタートアップ、Ramen Heroの創業者でCEOの長谷川浩之氏は、「美味しい店を探すのは苦労する」と話す。
同氏の実感だと、「美味しいラーメンは5パーセント、美味しくないラーメンは95パーセント」。
TechCrunch Japanでは長谷川氏に、サンフランシスコにあるRamen Heroのオフィスで、アメリカのラーメン事情や、アメリカで多種多様な人々にミールキットを提供する同社のラーメンに対する「こだわり」について話を伺った。
ラーメンと言えば、麺とスープ。アメリカでラーメンを提供する店はどこで麺を仕入れているのだろうか?そして、その麺は美味しいのだろうか?
アメリカには2つの大きな製麺所がある。Sun NoodleとYamachan Ramenだ。長谷川氏によるとアメリカのラーメン店の多くのはどちらかの麺を利用する。ちなみにRamen HeroはYamachan Ramenに麺を発注している。
Sun Noodleは1981年、ハワイ州ホノルルで設立された。山ちゃんラーメンは1989年、代表の山下英幸氏がサンノゼで創立し、以来、「真の日本の麺」を生産してきた。
長谷川氏は上記の2社の麺のクオリティーは高いと評する。
「アメリカの小麦は、正直、美味しい。日本国内では『日本の国産小麦』と謳っているところもあり、それももちろん美味しいのだが、外国産だから不味いのか、というと、そうではない。逆のパターンもある。国土が広いから大量に作っているし、ノウハウもあるし、香りが良いものもあるし、価格もリーズナブル。良いものを作りやすい環境が揃っている」(長谷川氏)
問題はスープや具材。「お湯に醤油をいれただけなんじゃないか」と感じるようなラーメンや、「創作系ラーメンは存在するが、これはちょっとヒドい」と思うようなものが多く存在するそうだ。
その原因は、アメリカではまだまだ専門店が少なく、日本食レストランやアジア系レストランが1メニューとしてラーメンを提供しているというケースが多いから。そして、アメリカで本格的なラーメンが展開され始めたのは、「ここ10〜20年ほど」。舌の肥えた職人やラーメン通がまだ十分に育っておらず、「作り手が増え、コンペティティブになることでの相乗効果」がまだ十分に伸びていないと長谷川氏は言う。
だが、状況も少しづつ変わってきている。「日本から本格的なラーメン屋が進出した」などのニュースにより、行列のできるラーメン屋は少しずつ増えてきた。
長谷川氏が2016年に算出した数字だと、市場規模は5000億ドルほど。当時、同氏いわくアメリカでは2万6000店ほどの飲食店がラーメンを提供していた。ラーメン店の数の伸び率も、2016までの10年間、「毎年10〜20パーセントくらい」(長谷川氏)で伸びていた。
もともとアメリカでは昔から、大学生などが節約のためにカップラーメンや乾麺を食べている。僕が通っていたサンディエゴにある中学校でも、カフェテリアのメニューにはマルちゃんのカップラーメンがあった。なので、「ラーメン」という言葉自体はアメリカではかなりメインストリームだ。
そのような学生が30から40代になり、お金にも時間にも余裕ができ、ラーメン店の開店に関するニュースを見たり、近所にラーメン店が開いたことをきっかけに、再びラーメンに興味を持つというケースもあると長谷川氏は言う。だが、多くの場合は行列に並ぶ必要があったり、不味かったり、と、気軽にラーメンを楽しめる状況ではない。加えて、地方では都心部と比較して美味しいラーメン店を見つけるのが困難だ。
だからこそ、Ramen Heroは現在、D2Cのミールキットという形でラーメンを提供している。好みが千差万別なアメリカ向けに、Ramen Heroは若干、甘めの味に設定。アメリカではラーメンは「スープヌードル」として食されるため、麺は日本と比較すると少なめだという。
そんなRamen Heroの次の展開はB2B。アメリカでラーメンを提供している店舗に対し、Ramen Heroのラーメンを販売する予定だ。これにより、「ECに抵抗のある高齢者」などもRamen Heroのラーメンをトライすることができる。
「B2Bは面白い」と話す長谷川氏。全米でラーメンを提供する店は2万6000店もあるものの、その95パーセントは不味い。長谷川氏はこの状況を大きなチャンスと捉えている。
Ramen Heroはアメリカのラーメン好きの「救世主」になれるのか?同社の今後の展開に期待したい。