より持続可能な、カカオをまったく含まないチョコレートを作る独QOAが約6.8億円のシード調達

ミュンヘンを拠点とするQOAは、100%カカオフリーのチョコレート製品をいち早く市場に投入するための準備を進めている。


QOAはこのたび、Cherry Venturesがリードし、Fifty Years、World Fund、Nucleus Capital、Trellis Road、Pioneer Fund、Tet Venturesが参加した投資ラウンドで、600万ドル(約6億8000万円)のシード資金を調達した。

同社は2021年、Sara Marquart(サラ・マルカート)博士とMaximilian Marquart(マクシミリアン・マルカート)博士の姉弟チームによって設立された。サラ・マルカート博士は風味形成を専門とする食品化学者であり、マックス・マルカート博士は材料科学者で、これまで3度の起業を経験している。

QOAの製品テストキット(画像クレジット:QOA)

世界のチョコレート菓子業界は、2020年には2080億ドル(約23兆6700億円)を超える規模になっており、米国の製菓業界では最大の部類に入る。世界のカカオ供給の3分の2は西アフリカ産だが、危機に瀕しており、これが2人のマルカート博士が同業界に注力することにした理由の1つだ。現在、病原菌や気候変動により、カカオ供給の最大50%が危険にさらされており、カカオは森林破壊強制的な児童労働の一因となっている。

マックス博士は、TechCrunchにこう語った。「我々の食生活によって、食料供給が脅かされています。私たちはチョコレートが大好きですが、持続可能性のリスクがあることに気づき、将来も食べられるように何とかしたいと思ったのです」。

California CulturedVoyager Foodsなどの企業も、さまざまなアプローチでカカオを使わないチョコレートを作っている。一方、QOAは、他の食品製造プロセスで発生する天然の副産物を基材とする発酵プロセスを開発した。酵母やその他の微生物、独自のフレーバー形成を使って、人工添加物を一切使用せずに、チョコレートの食感と風味を再現するヴィーガン製品を開発したとのこと。

この発酵プロセスにより、2035年までに生産規模を拡大し、従来のチョコレートと同じかそれ以下の価格で製品を提供できるようになるという。実際、マックス博士は、将来のチョコレート市場は、通常のカカオを使った高級で高価な製品と、QOAの製品の2本柱になるだろうと予測している。

QOAは、2021年のY Combinator(Yコンビネータ)に参加し、製品テストキットを稼動させて、9つのオプションを試せるようにした。マックス博士は2022年にQOAの最初の製品を市場に投入することを期待しており、今回の資金調達は、スイスでスタッフ採用中の施設に加え、ミュンヘンに最初のパイロット生産施設を建設するために使用される。

現在、最初の企業間取引の顧客と交渉中で、近々小規模な契約を締結する予定だとマックス博士は述べている。

「その後、より大規模な生産ラインを構築するために、シリーズAの獲得を目指します」と同氏は付け加えた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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