Apple(アップル)は米国時間1月19日、米国の新進気鋭ポッドキャストクリエイターにスポットライトを当てることを目的とした「Apple Podcasts Spotlight(アップル・ポッドキャスト・スポットライト)」と呼ばれる新しい編集プログラムを発表した。Appleの編集チームは、毎月新しいポッドキャストの製作者を選んで特集を組み、彼らをApple Podcastsアプリの画面で目立つ位置に表示して、ソーシャルメディアやその他の場所でプロモーションを行う。
これによって、App Storeがおすすめアプリやゲームのセレクションを画面上部に大きなバナーで紹介するのと同じように、ポッドキャストクリエイターはより多くのリスナーにリーチすることができるようになる。
最初のスポットライトクリエイターは、ポッドキャスト「Celebrity Book Club」のホストを務める映画監督のChelsea Devantez(チェルシー・ディヴァンテス)氏。毎週金曜日には、チェルシー氏と、脚本家のEmily V. Gordon(エミリー・V・ゴードン)、女優のGabourey Sidibe(ガブーレイ・シディベ)、 Ashley Nicole Black(アシュリー・ニコル・ブラック)、Lydia Popovich(リディア・ポポビッチ)などの特別ゲストが集まり、「badass celebrity women(イカしたセレブ女性たち)」の思い出について話し合うと発表されている。
この番組のアイデアは、1年前にJessica Simpson(ジェシカ・シンプソン)の回顧録を読んでいたデヴァンテス氏が、Instagram(インスタグラム)でその要約を紹介したことから始まった。フォロワーからの反響を受けて、彼女はこのコンセプトをポッドキャストに発展させた。
今後のエピソードでは、アカデミー賞にノミネートされた脚本家でプロデューサーのEmily V. Gordon(エミリー・V・ゴードン)が、Drew Barrymore(ドリュー・バリモア)の自叙伝「Little Girl Lost」について語り、女優のStephanie Beatriz(ステファニー・ベアトリス)がCeline Dion(セリーヌ・ディオン)の自叙伝「My Story, My Dream」について語り、モデルで女優、歌手でもあるLeighton Meester(レイトン・ミースター)がシンガーソングライターのCarly Simon(カーリー・サイモン)のアルバム「Boys in the Trees(男の子のように)」について語る。そしてバレンタインデーの特別エピソードでは、チェルシーとTikTokスターのRob Anderson(ロブ・アンダーソン)が、Burt Reynolds(バート・レイノルズ)とLoni Anderson(ロニ・アンダーソン)の相反する離婚の回顧録を読む予定だ。
「Apple Podcasts Spotlightは、非凡な声を持つクリエイターに光を当てることで、リスナーが世界最高の番組を見つけるためのお手伝いをします」と、Apple Podcastsのグローバルビジネス責任者であるBen Cave(ベン・ケイブ)氏は、今回の発表について声明で述べている。「チェルシー・ディヴァンテス氏は、Celebrity Book Clubという番組で、私たちが知っていると思っていたセレブリティについて、リスナーが新たな視点を得られるように、楽しくて活気のある空間を創り出してきました。私たちは、チェルシーとCelebrity Book Clubを、Spotlightの第1回目のセレクションに認定することができてうれしく思います。また、チェルシーのようなクリエイターを毎月リスナーに紹介していくことを楽しみにしています」と付け加えた。
Appleによると、今後のSpotlightのクリエイターはポッドキャストの様々なジャンル、フォーマット、地域の中から選ばれ、毎月発表されるという。また、これまであまり採り上げられたことのないインディペンデントなポッドキャストにも、しばしば焦点を当てていくそうだ。コンテンツは選考に先立って質を確認するためにプレビューされるが、ポッドキャストのサイズやリーチについては特に問わない。
基本的に、Spotlightのクリエイターは最初の週に向けて発表されるが、具体的な日にちは祝日や大きな文化イベントなどに合わせて流動的だ。たとえば次のSpotlightのセレクションは2021年2月中旬に発表される。
Spotlightのクリエイターは、Apple Podcastsの「ブラウズ」タブの上部に掲載され、Apple Podcastsのソーシャルメディアアカウントを通じて宣伝される。アプリ内での特集は、クリエイターが「スポットライト」を浴びている間はずっと継続される。
Appleによれば、特集されるクリエイターとApple独自のチャンネルでコラボレーションすることもあるという。今後は米国の主要都市での屋外広告など、Appleが運営するチャンネルでもプロモーションが行われるようになる。
今回の新しい編集プログラムのニュースが発表されたのは、テクノロジー業界メディアのThe Information(インフォメーション)が、Appleはポッドキャストのサブスクリプションサービスの導入を計画していると報じた直後のことだった。Appleが取り組んでいるポッドキャストプラットフォームの拡大は、Spotify(スポティファイ)やSiriusXM(シリウスXM)、Amazon(アマゾン)などの競合企業にとって脅威になるだろうと、その記事には書かれていた。
Apple Podcastsはまだ市場をリードしているが、SpotifyはAnchor(アンカー)、The Ringer(リンガー)、Gimlet Media(ギムレットメディア)、そして最近ではポッドキャスト広告会社のMegaphone(メガフォン)といったポッドキャスト企業に8億ドル(約831億円)以上を費やし、Appleに追いついてきている。
一方、SiriusXMはポッドキャスト管理・分析プラットフォームのSimplecast(シンプルキャスト)、アドテックプラットフォームのAdsWizz(アズウィズ)、ポッドキャストアプリのStitcher(ステッチャー)を買収した。取り残されないように、アマゾンは数週間前、ポッドキャストネットワークのWondery(ワンダリー)を買収すると発表した。
Appleによると、このプログラムの大きな目標は、クリエイターのオーディエンス増加を支援するだけでなく、ポッドキャスト全般に新しいオーディエンスを迎えることだという。
ポッドキャストの人気は高まっているが、Edison Research(エジソン・リサーチ)によると、米国では1カ月あたりの集計でポッドキャストを聴いている人の数はわずか37%にすぎないという。つまり、現時点では、米国の人口の大多数に人気のあるアクティビティにはほど遠いということだ。Appleがサブスクリプションサービスを導入して効率的にポッドキャストを収益化するためには、まず定期的にポッドキャストを聴く人の数が増えるように働きかける必要がある。
このプログラムが後日、米国以外の地域にも拡大するかどうかについて、Appleは明らかにしなかった。
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(翻訳:TechCrunch Japan)