Apple(アップル)の新しいオーバーイヤーヘッドフォン、AirPods Maxを使ってみた。ただし手にしてからまだ24時間経っていない。こんな短期間では本式のレビューは書けないそうにない。しかし「第一印象」には大いに反響があるようだ。私も読者と共有したい体験をした。以下の報告は主にプロダクトの品質についてだが、最初に聴いてみたときの感想も含まれている。
断っておくが、これは現在私が受けている印象であり、テストは今後も続けるつもりなので評価もそれに応じて深化すると期待している。レビューではないにしろ、ある種のレビューのドラフトと考えていただきたい。いわばプロトレビューだ。
まず、これはゴージャスな製品だ。アルミニウムのイヤーカップは美しい。左右のイヤーカップを接続するヘッドバンドはおそろしく頑丈。ヘッドバンドのメッシュネット部分は高級家具のように緻密だ。伸縮するステムのデザインも仕上げも優れている。ステムは高級車のエンジンのピストンのように精密にヘッドバンド部にはめ込まれており、スムーズに引き出せる。
メッシュ、イヤーパッド、巧妙な(いまではそれほど珍しくなくなったが)マグネットセンタリングがきちんと固定する。イヤーカップカバーはシームレスにフィットする。それぞれのイヤーカップはアルミニウム板から一体成型されている。コストパフォーマンス?米国では550ドル(日本では税抜6万1800円)は高くない。素材と仕上げからいって、AirPods Maxははるかに高価な製品だと感じさせるものだ。
ただし、この「レビューのドラフト」でも触れておかねばならないトレードオフがある。AirPods Maxは重い。ヘッドフォンの重さが気になるなら購入はお勧めできない。この製品は強く自己主張する。まっすぐに座るか、背もたれに寄りかかる姿勢が確実に要求される。家の中を歩き回り、床から子供の服やおもちゃを拾ったりするなら、ヘッドフォンの重量で頭が前方に引っ張られることを感じるだろう。重量は386gありBeats2セットよりさらに100g以上重い。ハイエンドヘッドフォンのユーザーならこの重さは予期しているかもしれない。しかしそのようなハイエンドのユーザーは少ないだろう。この点については慣れもあるので、後日もっと詳しく説明したい。
またいくつかデザイン上の問題も見られた。ピストン方式で伸縮するイヤカップは驚くべき仕組みだが、カップ自体のスプリング内蔵バックルの可動範囲が限られているため、BoseのQuietComfort 35 IIやSonyのWH-1000XM4といったヘッドフォンのように内側に折り畳むことができない。これは不便だ。
これまでのところコントロール類は悪くない。ダイヤル式つまみはApple Watchとほぼ同様の感触だが、多少抵抗が強い。つまみを長押しするか「Hey Siri」と呼びかけることでSiriの機能が起動する。これも問題ない。イヤーカップは精密な位置検出機能を内蔵するので、1つのイヤーカップを軽く持ち上げるだけで再生を一時停止できる。
ヘッドフォンを頭から外して下に置くとオフになる。電源ボタンはない。これは非常に自然で、いかにもアップルらしい仕組みだ。頭にかければ使える。外せば停止する。非常に簡単だ。
充電器は同梱されていないが、どんな電源アダプタからでも充電できる。アップルによれば5分間の充電で1.5時間作動するというが、急速充電はサポートされていない。USB充電の場合、出力電力と無関係に2時間だ。
BoseやSonyの製品と異なり、3.5mmケーブルが付属していないので飛行機のシートバックシステムその他を音源としたい場合は35ドル(約3600円)の追加支出が必要となる。
旅行といえば、上で触れたように折り畳んで格納できないこと、メッシュの素材、重量その他の方向性は明確で、ごく初期の印象でも旅行に持って出るような製品ではないと感じた。それに製品のケースがまた見た目どおり具合の悪いしろものだ。残念ながらケースはMagSafeデュアル充電パッドと同じくらい危っかしく 安っぽく、汚れやすい。到底トラベルケースに必要な能力を備えていない。だいたい見た目も人間のお尻に似ている。
サウンドは素晴らしい。Beatsヘッドフォンのような騒がしいコンサート会場向きの低音を効かせた音ではない。低音は十分に出ているが、はるかにニュアンスの豊富な音だ。全周波数帯で鮮明な音作りがされている。映画を観たり、音楽を聴いたり、電話で会話したりしてみたが、どのユースケースでも素晴らしい音だった。たとえば空間オーディオは大型のスピーカードライバーと耳を覆うイヤーカップによって大幅に改善されている。Atmosのコンテンツで試してみたが、オーディオの方向定位やパンは非常に巧妙だった。iOS デバイスを通じて動画を観た場合、巨大な音空間内にいてその中心がデバイスのスクリーンであるように感じる。ヘッドフォンを通して音を聞いているとは思えず、まさにその部屋にいるように感じる。これは信じられないほどすごい。
と、まあ現在のところはそんなことろだ。これからも引き続きチェックしていくつもりだ。いまいえるのは「これまでのところ超高品質で非常に重くサウンドはしっかりしている」ということになる。
興味のある読者のためにいっておくと、私はレイテンシーをテストする予定だが、セットアップにコーディングが必要なので、まだ結果を報告できる段階にない。
【更新】有線接続によるレイテンシーをテストしたが、問題ないようだ。
To answer one of the biggest AirPod Max questions I’ve been asked by audio folks – especially for podcast and mixing work: yes the cable eliminates (audibly, haven’t tested with tools) audio latency so it can be used for live monitoring with the $35 cable. pic.twitter.com/SSQg3rgzG6
— Matthew Panzarino (@panzer) December 10, 2020
オーディオ関係で最も多かった質問の1つに答えておこう。これは特にポッドキャスターから尋ねられた点だ。有線接続すればレイテンシーはなくなる(ツールでテストはしていない)。つまりポッドキャスティングとオーディオミキシング作業のために利用できる。ただし35ドルのケーブルが必要だ。
関連記事
・アップルがオーバーイヤー型ノイキャン搭載ワイヤレスヘッドフォンAirPods Maxを発表
・確かに便利だ、しかし高価で少々期待外れなアップルの新充電器「MagSafeデュアル充電パッド」
カテゴリー:ハードウェア
タグ:Apple、AirPods Max、ヘッドフォン、レビュー
[原文へ]
(翻訳:滑川海彦@Facebook)