アップルは好き嫌いが分かれていた12インチMacBookの販売を中止

Apple(アップル)は米国時間7月9日、12インチMacBookの販売を正式に中止した。すでに2017年6月以降、アップデートされることなく放置されていた。このモデルは、Apple製品のラインナップの中で、論争の的になることがもっとも多いMacだったかもしれない。12インチMacBookは、Appleが進むべき方向性を示しているように見えた時期もあった。2015年に発売されたとき、多くのAppleファンとアナリストは、それに続いて発売される製品を先取りしていると思ったものだ。しかし結局のところ、AppleがMacという製品について抱えている最大の課題を、かなりの部分で体現するモデルということになった。

AppleにとってMacBookはショーケースであり、重要な製品であると位置づけていた何よりの証拠は、その名前に表れている。言うまでもなく、その名前の後ろには、「Air」だの「Pro」だの、12インチMacBookの誕生以前からあった修飾子が何も付かない、随一の「MacBook」なのだ。そしてこのモデルは、Appleのノートブックにとって初めてとなる要素を、いくつも引っさげて登場してきた。たとえば、データと電源の両方に使うUSB-Cポート、バタフライ機構を採用したキーボード、感圧式の「Force Touch」トラックパッド、そしてサイズ的に妥協することなく小型のノートブックで得られる電力を最大化するために採用した「台形」のバッテリなどだ。

単純に持ち運びやすさと、サイズに対する画面の大きさの比率で言えば、MacBookはまったくの偉業だった。しかし、一般的に標準的と考えられている仕様からの乖離、そしてユーザーにとってノートブックとして何が必要で何が必要ではないかという見解について言えば、このモデルはAppleにとって、それまででもっとも大胆な主張だったのだ。何しろUSB-Cポートが1つしかない。電源とデータ共用で1つしかないのを見て、人はまず息をのんだ。バタフライ式のキーボードは、感触もかなり異なるものだった。特にこのキーボードについては、基本的なコンポーネント設計において、おそらくApple最大の技術的なしくじりを、後に証明することになってしまった。そして、その影響は現在まで尾を引いている。なにしろ、今回発売したばかりの新製品にもバタフライ式のキーボードが採用され、そのせいで発売後直ちにキーボード交換プログラムの対象機種に加えなければならなかったのだ。

MacBookは、プロセッサパワーの面でも、同Proや同Airに比べ、常にかなりの遅れをとっていた。その構造上、熱の発生を最小限に抑えるため、省電力タイプのインテル製チップを採用していたからだ。以前にMacBookオーナーだった私に言わせれば、それほど重い処理をしていないときでも、ちょっとギクシャクすることにはしょっちゅうだし、自宅でデスクトップ機と並べて同時に使ったりすると、その明らかな遅さに耐えられないほどだった。

しかしMacBookには、それでしか得られない素晴らしい点があった。なにしろ非常にポータブルで、バッグに入れたことを忘れてしまうほど。執筆用のノートブックとしては、おそらく最高のものだった。文章の入力なら、内蔵プロセッサーのパワー不足を感じることもない。一方、USB-Cポートが1つしかないことで非難されることも多く、拡張性については修行僧のような態度で臨む必要があったのも事実だ。実はポートとしてはもう1つ、ヘッドフォンジャックも備えていた。今ではスマホでも珍しくなりつつあるものだ。

言ってしまえば、MacBookは初代のMacBook Airにかなり似ている。ちょっと他とは違っていて、人の好き嫌いが分かれる点も共通している。多くの人のニーズや期待には応えられないのも同じだ。そしてAirと同じように、将来MacBookも灰の中から不死鳥のように蘇るかもしれない。もしかすると、さかんに噂されているように、AppleがARMプロセッサーのアーキテクチャを採用すれば、それも可能な気がする。それとも、この秋に登場することになっている、より洗練されたiPadOSを搭載して進化し続けるiPadに、道を譲ることになるのだろうか。

いずれにしてもMacBookは、使って楽しいエキセントリックなマシンだった。もしアップデートされれば、また使いたいとも思っていた。そんなMacBookが、永遠になくなってしまわないことを願うばかりだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)