インドのフードデリバリー市場では、数週間前にUber(ウーバー)が地元大手のSwiggy(スイッギー)とZomato(ゾマト)に敗北したことを認め、撤退した。そして今度は別の新しいプレイヤーが、SwiggyとZomatoの2社が市場の大半を占めている厳しい市場に挑戦する準備をしているという。その新しいプレイヤーとは、Amazon(アマゾン)だ。
Amazonは今後数週間以内にインドのフードデリバリー市場に参入する計画だと、情報筋はTechCrunchに語った。このサービスはAmazonのPrime NowまたはAmazonフレッシュの一部として提供され、3月にも開始される可能性がある。
このビジネスがまだ非公開であることを理由に情報筋が匿名を条件として語ったところによると、Amazonは開始に向けてバンガロールにあるいくつかのレストランをパートナーとしてフードデリバリーサービスのテストをしてきた。
ここ数四半期、Amazonはフードデリバリービジネスに取り組んでいて、以前はインドの大きな祭りで10月または11月に開催されるディワリの時期にサービスを開始しようとしていた。これが遅れた理由は不明。
Amazonの広報はTechCrunchに対し「我々はお客様のために革新を起こし、お客様の新しいエクスペリエンスを生み出している。この信念の一環として、常に新しい分野やチャンスを検討し、お客様とつながりを持ちサービスを提供している。今後何か進展があれば発表する」と述べた。
TechCrunchでは、インドのレストランのパートナーとの間で交わされた何らかの合意を確認することはできなかった。インドのレストランの多くはオンラインのフードデリバリー事業者に対し、不満を募らせている。
Amazonがフードデリバリー市場に参入するとなれば、Prosus Venturesが支援するSwiggyとZomatoにとっては新たなライバルとなる。Zomatoは10年前に創業したスタートアップで、1月にUber Eatsのインドでの事業をおよそ1億8000万ドル(約195億円)で買収した。
SwiggyとZomatoは両社の合計で20億ドル(約2200億円)以上を調達しているが、まだ黒字にはなっていない。新規顧客の獲得と既存顧客の維持に、毎月1500万ドル(約16億円)以上をつぎ込んでいる。
India QuotientのVC、Anand Lunia(アナンド・ルニア)氏は最近のポッドキャストの中で「フードデリバリー企業の選択肢は少なく、自社プラットフォーム上のフード商品のコストの一部を負担し続けていかなければ顧客の大半は商品を購入することはできない」と語った。
インドで採算をとるのは、米国などの先進的な市場に比べると難しい。バンガロールを拠点とする調査会社RedSeerの試算によれば、米国ではデリバリーの単価は約33ドル(約3300円)だが、インドでは同等のデリバリーの単価は4ドル(約440円)だという。
おそらくこのことが、ここ数年、SwiggyもZomatoもフードデリバリー以外の事業に手を広げてきた理由だ。Swiggyは現在、インド最大のクラウドキッチンのネットワークを運営していると述べており、フード以外の多くの商品のデリバリーも始めている。Zomatoは「Project Kisan」と称して生鮮食品を農家や漁師から直接調達し、レストランに対する食材供給のコントロールを試みている。
Amazonがインドでフードデリバリービジネスを成長させるのは簡単ではない。Swiggyの1社だけで、インドの520以上の都市で事業を運営し、16万以上のパートナーを得ている。
現地時間2月19日、Swiggyは最新の資金調達に関する発表の中で、毎月1万のペースでパートナーを増やしていると述べた。RedSeerによれば、昨年末時点で42億ドル(約4600億円)だったインドのフードデリバリー市場は厳しい状況にあるという。
Amazonは独自のロジスティクスチェーンと地元の多くの店舗との提携により、インドで密度の高い配送ネットワークを確立してきた。
Amazonの動きは、インドでの最大のライバル、Flipkart(フリップカート)が食品小売ビジネスに参入するのと時を同じくしている。Flipkartは昨年、同社の株式の大半をウォルマートに160億ドル(約1兆7300万円)で売却した。FlipkartグループのCEO、Kalyan Krishnamurthy(カリヤン・ クリシュナムルティ)氏が昨年10月にTechCrunchに述べたところによると、同社は食品小売に特化した「Flipkart Farmermart Pvt Ltd」という会社を登記した。
クリシュナムルティ氏は、同社が食品小売に参入するのは「インドの農業や食品加工産業を成長させるための、我々の重要な取り組みのひとつ」だと述べ、すでに多くの小規模農家と提携しているという。Flipkartは新事業にすでに2億5800万ドル(約280億円)を投資している。1月には新鮮な野菜と果物の配送をテストしたと、インドの新聞、Economic Timesに報じられた。
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(翻訳:Kaori Koyama)