アメリカ内国歳入庁、「Bitcoinは通貨ではなく資産」と決定―その影響は?

先週、IRS(アメリカ内国歳入庁)は課税処理の枠組みとしてBitcoinは通貨ではなく資産であると決定した。これによってBitcoinのユーザーははBitcoinの値動きを取引の都度記録する必要が出てきた。

GigaOmによればBitcoinの相場は17%下落した。その原因の一部は中国市場に関連した噂のせいだが、一部はIRSのこの決定のせいだろう。相場は週末の間も下落を続けた

下のグラフは主要4取引所におけるBitcoinの値動きだ。

さてIRSの決定はどういうことを意味するのか? Bitcoinが通貨でなく資産であるとすれば、取引のたびにキャピタルゲインを考えなければならないということになる。Bloombergの説明が簡にして要を得ている。

2ドルのコーヒー1杯を時価1ドルで購入した2ドル相当のBitcoinで支払った場合、コーヒー購入者には1ドルのキャピタルゲインが生じ、コーヒーショップには2ドルの粗所得が生ずる。

Bitcoinの相場は常に変動しているから、取引に用いた場合、そのつどキャピタルゲインまたはキャピタルロスが生じることになる。この損益は年度末の所得申告のためにすべて記録されなければならない。そこで生じた現実の利益、あるいは含み益は課税の対象になり得る。あるいは実際に税の徴収が行われるかもしれない。

つまり現在のBitcoinの市場価値の幾分かは、少なくとも理論的には、アメリカ政府のものだ(Bitcoin取引のほとんどはアメリカ・ドルで行われ、アメリカ市民が関与しているので、それらの取引はIRSの課税対象となる)。

Bitcoin取引をいちいち記帳し、政府に報告しなければならないというのはBitcoinのアナーキスト的理想とはまさに正反対だ。

2013年度にBitcoinの急騰で大儲けしたアメリカ市民はその額を正直に申告してキャピタルゲイン税を支払うか、重罪に問われる可能性のある虚偽の所得申告をするかを選ばねばならない。目的が興味本位だろうと真剣な投資だろうと、Bitcoin取引を始めたユーザーのほとんどはこういう選択に直面する羽目になるとは全く考えていなかっただろう。キャピタルゲインがどれほどになるかといわれても、正確な記録を取っていなかったユーザーが大勢いるだろう。

一部からはキャピタルゲインを正確に計算できるような機能を備えたBitcoin取引アプリを作るスタートアップを求める声が上がっている。それはそれでもっともだが、「政府の規制を受けず、匿名で取引できる」というBitcoinのセールスポイントとはやはり逆の方向だ。

先進テクノロジー企業や投資家がBitcoinの将来に大きく賭けているのは、アメリカ政府がBitcoinに敵対的にならない程度に規制の枠組みができるということを前提としている。これらの企業や投資家の多くはアメリカに本拠を置いているのでそうせざるを得ない。しかしそれは同時に政府の規制、監督を受けない、匿名性が高いなどBitcoinがそもそも人気を得た特長の相当部分が失われることを意味している。

最後に付け加えるなら、Bitcoinより優れたテクノロジーを用いているとされる暗号化通貨はいくつも存在する。 Bitcoinの価値はそのネットワークにある。Bitcoinの売り手、買い手、保有者、取引者のネットワークが値崩れを食い止められるかどうか、投資家は難しい判断を求められることになる。

イラスト: BRYCE DURBIN

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


投稿者:

TechCrunch Japan

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