世界第2位のインターネット市場であるインドで、中央銀行が定期的支払いを処理するための新たな指令を施行したことにともない、Apple(アップル)、Sony(ソニー)、Google(グーグル)、Zoom(ズーム)、PayPal(ペイパル)などのハイテク企業や多くの銀行が、インドの顧客やパートナーに対して、取引の拒否が急増することを予想して注意を促している。
インド時間10月1日に発効したインド準備銀行(RBI、インドの中央銀行)の指令は、銀行、金融機関、ペイメントゲートウェイが5000インドルピー(約7490円)以上の自動更新される取引に対して、通知、電子マンデート、AFA(Additional Factors of Authentication、要素追加認証)を介して、ユーザーから追加の承認を得ることを求めている。この指令は、クレジットカードだけでなく、デビットカードのすべての取引にも影響する。
2019年に初めて発表されたこの指令は、2021年4月に発効する予定だったが、銀行などの影響を受ける業者が、遵守するための準備が十分ではないと主張したため、9月30日まで延長された。
中央銀行は、業界の対応に不満があったようで、3月には「延長された期限を超えてフレームワークの完全な遵守を確保するのが遅れれば、厳しい監督措置を取ることになる」と述べていた。
インド準備銀行は、2019年に行われた当初の案内時点で、このフレームワークは「リスク軽減と顧客の簡便化のための措置」として機能するようにデザインされていると述べ、こうした取引を処理する業者は「実際の請求の少なくとも24時間前に、顧客の指定に応じてSMSまたは電子メールで取引前通知を顧客に送信しなければならない」としていた。
複数の企業が、顧客や、場合によっては他のビジネスパートナーに対して、新しい指令についての注意を促している。
水曜日(インド時間9月29日)には、Appleは開発者に対して、この新しい指令によって「要件を満たさない一部の取引は、銀行またはカード発行会社によって拒否されるでしょう」と注意を促した。
インド最大の民間銀行であるHDFCは、ウェブサイトに以下のメッセージを掲載した。「ご注意:2021年10月1日より、HDFC銀行のクレジットカードやデビットカードを使って、加盟店のウェブサイトやアプリで行われた自動引落(定期的な支払いを処理するための電子指示)は、RBI(インド準備銀行)が定めたプロセスに準拠していない限り、承認されません」。HDFC、Axis、Kotakを含む複数の銀行が、今週、新ルールを遵守することを発表している。
2021年5月には、GoogleはPlay Storeでの定期的な支払いを行う新規顧客の登録を停止している。同社は開発者に対して「このエコシステムの課題が解決されるまで」、無料トライアルや導入価格をアプリから削除するよう求めた。YouTubeは、プレミアムサービスに対して、プリペイド方式の、使った分だけ支払い(pay as you go)方法のみをサポートするようになった。
また同じ月にAmazonは、追って通知があるまで、Amazonプライムの無料体験への新規会員登録を「一時的に」中止すると発表した。その後、新たな通知は行われていない。
After making payments simpler, we need to make recurring & subscription payments easy
It’s a pain to use any subscription product in India, not all cards work and random rules at banks pic.twitter.com/tBrsoBOopx
— pj (@BeingPractical) September 30, 2021
支払いを簡単にしたら、次は定期的な支払いや購読料の支払いを簡単にする必要があります。
インドでサブスクリプション製品を使うのは大変です。すべてのカードが使えるわけではありませんし、銀行はまちまちのルールを設定しています。
この指令は、リテールバンクの連合体が構築した決済インフラであるUPIを通じた定期的な支払いには影響しない。そのため、Netflix(ネットフリックス)をはじめとするいくつかの企業は、インド国内のUPIを使った自動支払いをサポートしている。
しかし、影響は広範囲に及ぶと思われる。あるフィンテック企業の創業者がTechCrunchに語ったところによると、彼らがFacebookやGoogleで広告を出すために利用している決済サービス会社が、中央銀行のルールを理由に、今週後半から自動決済は処理されないと通知してきたそうだ。この創業者は、デリケートだと思う内容を話すために匿名を希望した。
この新ルールは、インド中央銀行が近年提案または施行してきた一連のガイドラインの中で最新のものだ。Pratik Bhakta(プラティック・バクタ)氏がThe CapTable(キャップ・テーブル)に投稿した概要によると、今回の動きは、規制当局がユーザーのために革新を行うフィンテックスタートアップの普及を奨励している一方で、消費者を傷つけようとしている傾向がないかをRBIが注意深く見守っていることを示しているものだという。
RBIの副総裁であるT Rabi Sankar(T・ラヴィ・サンカー)氏は、今週初めに開催された会議で「法律が追いつくまでは、破壊的ではない方法で金融システムがデジタル・イノベーションを吸収できるよう、規制を適応させなければなりません」と述べ「すべての利害関係者が短期的な利益よりも長期的な改善を重視し、インフォームド・コンセントやデータ利用の透明性といった、成熟した慣行を浸透させてこそ、繁栄し成熟した決済システムに到達することができるでしょう」と語っている。
ソニーは、インド時間9月30日にPlayStation Plus(プレイステーション・プラス)の加入者に宛てた電子メールで「2021年9月30日以降、PlayStation Store(プレイステーション・ストア)でPlayStation Plusのためのサブスクリプション料を支払おうとする際に、クレジットカードおよび / またはデビットカードの支払いが失敗することがあります」と伝えている。
「これは、新規にサブスクリプションを始める場合と、定期的な支払いの両者に適用されます。このため、今後自動的に課金されるように設定されたPlayStation Plusの利用料の支払いが失敗する可能性があります。もしそうなった場合、お客様のPlayStation Plusのサブスクリプションはその時点で終了となります」。
画像クレジット:Getty Images
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(文:Manish Singh、翻訳:sako)