イーロン・マスク氏がテスラはビットコインが環境に優しくなれば受け入れを再開する「可能性が高い」と発言

Tesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは米国時間7月21日、Crypto Council for Innovation(クリプト・カウンシル・フォー・イノベーション)が主催したオンラインのパネルディスカッションにおいて、暗号資産の採掘に使用される電力の50%が再生可能エネルギーになった時点で、Bitcoin(ビットコイン)による支払いの受付を再開する「可能性が高い」と述べた。これは、先月のTwitter(ツイッター)における同氏の発言と合致するものだ。

テスラは、2021年2月にビットコインによる支払いの受け入れを始めた。同時期に同社は、歴史的な15億ドル(約1650億円)分のビットコインを購入している。だが、そのわずか3カ月後には、環境問題を理由にこの決定を撤回した。

暗号資産はエネルギー使用の点で悪評を受けている。それは確かに非常に多くのエネルギーを消費するからだ。少なくとも、暗号資産の多くはそうである。世界の2大暗号資産のビットコインとEthereum(イーサリアム)は、Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれる仕組みを使ってネットワークを動かし、それぞれの暗号資産の新しいブロックを「鋳造」している。この「Work(作業)」は、複雑な暗号の問題を解くことであり、マイナー(採掘者)はこれに取り組むためにハイエンドのグラフィックカードを組み合わせて作業を行う。大規模なマイニングセンター(採掘工場)では、何千ものGPUが24時間稼働している。

イーサリアムは、プルーフ・オブ・ワークからプルーフ・オブ・ステーク(proof-of-stake)と呼ばれるエネルギー使用量を大幅に削減する方法に移行することをすでに表明しているが、ビットコインはこの移行の可能性が低いようだ。だから「環境にやさしく」なるということは、ビットコインの根本的な部分を大きく変えるのではなく、マイニングセンターを動かすエネルギー源を変えることになる。

ビットコインのグローバルなマイニングネットワークは、明らかに再生可能エネルギーに依存しているものの、グリッドがどれほど分散化されているかを考えると、再生可能エネルギーの使用率について正確な洞察を得ることは非常に困難だ。明らかなのは、マスク氏がビットコインの現在または将来の「環境への優しさ」を判断する出発点には、グローバルネットワークからの前例のない透明性が必要だということ。そしてマスク氏はおそらく、個人の見解によるデータに基づいて、いつでもこの判断を下せるように、多くの余裕を持とうとしているだろうということだ。

マスク氏の今回のコメントは意外ではない。同氏は6月に「採掘者による適正な(~50%)なクリーンエネルギーの使用が確認され、将来的に前向きの傾向が見られるようになれば、テスラはビットコインによる決済の受け入れを再開します」とツイートしている。

コインテレグラフ

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イーロン・マスクがまた非難されていますが、今回は何のためでしょうか? Sygnia(シグニア)のCEOであるMagda Wierzycka(マグダ・ウィアジッカ)氏は「ビットコインで見られるのは、1人の非常に強力で影響力のある個人による価格操作です」と彼を非難しました。

イーロン・マスク

これは正確ではありません。テスラは市場を動かすことなく簡単にBTCを清算できることを確認するために、保有資産の10%以下を売却しただけです。採掘者による適正な(~50%)なクリーンエネルギーの使用が確認され、将来的に前向きの傾向が見られるようになれば、テスラはビットコインによる決済の受け入れを再開します。

しかし、マスク氏はコメントに十分な余裕を持たせている。「ビットコインの採掘者を再生可能エネルギーに移行させようとする意識的な努力があるなら、テスラはそれをサポートできます」と、同氏は会談の後半で付け加えた。ビットコインの採掘の大部分は中国で行われていた。中国では安価な石炭と水力発電により、わずかながら経済的な採掘ができたからだ。しかし、マスク氏はこれらの石炭発電所の一部が閉鎖されていることを指摘した(中国の採掘者の大部分は、中国政府による採掘の取り締まりを受けて国外へ移住し始めている)。

ビットコインの環境への影響に関するマスク氏の懸念は、ビットコインのコミュニティで議論を巻き起こしていることにも留意しておくべきだろう。ビットコインは、その実際のエネルギー消費量に比べて、過剰な監視を受けている、という意見もある。今回のオンライン討論に参加したTwitter(ツイッター)のJack Dorsey(ジャック・ドーシー)CEOは、ビットコインの再生可能エネルギーへの移行を促すことはできると実際に主張を続けている。決済企業のSquare(スクエア)の「Bitcoin Clean Energy Initiative(ビットコイン・クリーン・エナジー・イニシアティブ)」プログラムが発表した報告書では、ビットコインの採掘によって、再生可能エネルギーが現在よりもさらに安価で経済的に実現可能になると主張している。

今回のマスク氏のコメントは、これまでと同様にあいまいな表現ではあるものの、同氏が依然として暗号資産市場に大きな影響力を持っていることを示している。ビットコインの価格は、4月に6万3000ドル(約694万円)以上の史上最高値を記録した後、7月19日には3万ドル(約330万円)を下回った。しかし、この億万長者の創業者がオンライン討論会で、自分や会社の保有量をより詳細に明らかにしたところ、ビットコインの価格は反発した。

マスク氏個人やテスラのビットコイン保有に加えて、同氏の航空宇宙企業であるSpaceX(スペースX)もビットコインを保有している。マスク氏は、個人的にイーサリアムと(もちろん)Dogecoin(ドージコイン)も保有していると付け加えた。彼のコメントを受けて、3つの暗号資産の価格は上昇した。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:TeslaElon Muskビットコイン暗号資産

画像クレジット:ARK Investment Management

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(文:Aria Alamalhodaei, Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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