米国時間4月25日、Walmart(ウォルマート)はニューヨーク州レビットタウンに「スーパーマーケットの未来形」をオープンした。この店舗はAIカメラ、対話的商品陳列など次世代テクノロジーの実験場となる。コンセプトはインテリジェントリテールラボ、頭文字でIRLだという。
このスーパーはWalmartが展開する生鮮食品、日用品に特化したネイバーフッドマーケットの1つで、取り扱うアイテムは3万点と発表されている。新テクノロジーを現実の店舗環境でテストできる規模だ。
Amazonの次世代コンビニと同様、Walmart IRL店も天井に多数のカメラが設置されている。Amazonの新コンビニの目玉はキャッシャーレスチェックアウトで、ユーザーは欲しいものを棚から取り出して店を出れば購入が完了する。一方、新しいWalmart IRL店は売り場面積4645平方メートル、スタッフも100人以上の大型スーパーだ。
またWalmart店舗の天井のAIカメラは、Amazon Goのように消費者が何を購入したかをモニターするためではない。IRLには従来どおり支払いのためのチェックアウトカウンターがある。IRLのカメラは在庫管理の効率化が目的だ。例えば肉が売り切れそうだったら冷蔵室から補充しなければならない。一部の生鮮食品は一定時間を過ぎれば売り場から回収する必要がある。
いつ、どこで、どんなアイテムを補充ないし回収しなければならないかを正確に知ってこのプロセスの効率化することがAI利用の狙いだ。食品の鮮度管理の徹底やアイテムの欠品の防止は同時に消費者にも大きなメリットとなる。
しかしこれを実現するのは簡単ではなかった。Walmartによれば、IRLでは非常に高度なAIテクノロジーが用いられているという。まずシステムは棚のアイテムを正しく認識しなければならない(牛ひき肉500gと合い挽き1kgを確実に見分ける必要がある)。次に陳列棚の商品量と季節、時間帯によって予想される需要量を比較する。
現在売り場スタッフは担当の棚を常に見回ってアイテムの残量を監視し、補充のタイミングを見極めている。これに対してAIストアでは、朝、売り場のドアが開く前に補充のタイミングと量を知ることができる。
カメラその他のセンサーは毎秒1.6TBのデータを吐き出す。2TBのハードディスクが1秒ちょっとでフルになってしまうほどの量だ。つまりデータの処理はローカルで実行しなければならない。
カメラとサーバーの列というのは一般ユーザーを気後れさせる組み合わせだが、Walmartでは「データは1週間以内に消去される」としている。
上の写真はIRLストアのデータセンターだ。青い照明に照らされたサーバー群は消費者から見える場所にレイアウトされている。店内のインフォメーションセンターなどのコーナーでは消費者にAIを説明している。
あるコーナーではAIがユーザーを撮影して姿勢を推測してみせる。これらはすべて新テクノロジーを少しでも親しみしやすいものにしようという努力だ。
IRLのCEOであるMike Hanrahan氏は「IRLの新テクノロジーとWalmartの50年以上の店舗運営経験を組み合わせれば、カスマーにも店舗側にも非常に有益な非常に改善が得られる」という。
WalmartはAIを効率化のために用いることに力を入れており、CEOは(遠回しに)Amazon Goとの重点の違いを語った。
「ピカピカの要素をならべて人目を引こうとするのはわれわれの目的ではない。そういう人目を引く要素は長期的な視点から役に立たず、顧客にも我々にも有益とは言えない場合が多い」という。
Walmart IRLストアが店舗のキャッシャーレス化ではなく、ひき肉パックの在庫補充や欠品の防止というような地味な分野にAIテクノロジーを利用する理由はここにあるようだ。効率化によって浮いた人員をチェックアウトカウンターの稼働の拡大に回せば消費者にとって大きなメリットとなる。
WalmartではBosa Nova Roboticsの他のロボットを大量に導入したときと同様、「新テクノロジーは人間を代替するものではなく、機械ができる仕事から従業員を解放して顧客との対話に振り向けるものだ」としている。しかし長期的に見れば、効率的な店舗運営に必要な人員は減っていくはずだ。
IRLのコンセプトはグループ内の先進テクノロジー開発インキュベーター、 Store No8によるものだ。このチームは店舗運営に新テクノロジーを適用する試みをいくつか実行してきた。2017年には個人向けショッピングサービス、Code Eightをニューヨークで実験した。今年に入ってからはショッピング体験を強化するVRツアーをスタートさせている。
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