日本のスタートアップ界隈ではエンジニアやデザイナーの人材採用時によく使われているソーシャルリクルーティングサービス「Wantedly」のβ版が公開されたのは2年程前のことだ。現在は約1,400社と5万のユーザーが利用しており、最近ではスタートアップだけでなく、複数の上場企業も同サービスを活用しているそうで、順調に成長している。
そして本日、このWantedlyを運営するウォンテッドが2つ目のプロダクトである名刺管理アプリ「CARD」のローンチを発表した。まずはiOSでのみ提供される。CARDを簡潔に説明すると「メールアドレスを登録するとメールを解析し、自動で連絡帳を作成してくれるアプリ」だ。
このアプリはメールアドレスを認証すると、受信したメールと送信したメールの本文を解析し、署名欄などから相手の名前、会社名、役職、電話番号といった情報を取得することで自動的に連絡帳をCARD内に作成してくれる。自動作成された連絡先はデフォルトの連絡帳のようにアプリ内で名前や会社名を入力し検索することも可能だ。
一度自分のメールアドレスをアプリで認証すれば、それ以降の更新は自動でやってくれるので、ユーザーが必要な作業はほとんど発生しない。また、メールは受信したものを全て解析して連絡帳に登録するわけではなく、1往復以上のやり取りをした相手だけ連絡先として登録する仕様になっている。
名刺管理サービスというと、本誌でも紹介した三三が提供する「Eight」(最近はTVでCMも放送している)やScanSnapとEvernoteを組み合わせるなどして、もらった名刺全て登録しておく利用法が一般的だが、CARDは「メールのやり取り」が基本なので、他のサービスと比べるとより密な関係にある人に絞った名刺管理サービスとなる。
ウォンテッドはWantedlyを見てわかる通り「何をするか」よりも「誰とするか」を重視しているから、このようなサービス設計をしたことにも納得できる。これを強調するかのようにCARDにはライブ機能と呼ばれるものもあり、これは他のユーザーの連絡先情報をリアルタイムにアップデートしてくれる。
ライブ機能をONにしておけば、自分が異動などをした際にプロフィールを更新するだけで、自分が登録されている他のユーザーの連絡帳で情報がアップデートされる。この機能を使うことで、一度関係を作れば、その後最新の情報が常に登録されている状態になるわけだ。
しかし、このような個人情報を取扱うサービスには、企業によってはセキュリティなどの不安があることも確かだろう。
この点に関しては「セキュリティはもちろん気にかけているし、メールの意味解析などはせず、アカウント情報は暗号化し、連絡先作成・更新に必要な情報は一定期間後に破棄している」とウォンテッド代表取締役社長の仲暁子氏はいう。
その上で、仲氏は「こういうもの(CARD)が便利だということを認識してもらいながら、使ってもらえる企業からどんどん展開していきたい」という。最近では大企業でもGoogle Appsを使ったり、iPhoneを支給してiCloudに接続しているケースもあるから、こういった取り組みを行っている会社には使ってもらえるのではないかと考えているそうだ。
Wantedlyでは転職者というごく一部の層にしかリーチできず、企業理念である「シゴトでココロオドル人を増やす」には対象者が少なすぎた。だから、CARDではビジネスパーソン全員をターゲットにして、”ココロオドル”人をもっと増やしていきたいと仲氏はいう。
今後の展開としては現在iOSにのみ対応のところ、他のデバイス・OSも順次提供。また、IMAPのみに対応しているがPOP3にも対応する予定とのこと。