今日(米国時間1/9)、エンタープライズソフトのAtlassianはプロジェクト管理サービスのTrelloを4億2500万ドルで買収した。この取引の大部分(3億6000万ドル)はキャッシュ、残りはRSU〔制限付き株式〕とオプションとなる。買収の完了は2017年3月17日となる見込み。
これはAtlassianの18回目の買収となる。またAtlassianのプレジデント、Jay Simonが先週私に語ったところによれば、同社として過去最大の買収だということだ。Atlassianの他の買収同様、Trelloは企業としてもサービスとしても従来どおり運営が続けられる。当面、Trelloの現行ユーザーには影響はない。
TrelloのサービスはTechCrunch Disrupt Battlefield in 2011で発表され、その後2014年にFog Creek Softwareからスピンアウトして独立の企業となった。今回の買収でAtlassianは成長最速のプロジェクト管理サービスを傘下に収めることになる。 Trelloはユーザー数1900万で、100人弱の社員は全員がAtlassianに所属することになる。Fog Creekからスピンアウトする際、TrelloはBoxGroup、Index Ventures、Spark Capitalなどから1030万ドルの資金を調達している。
「われわれはたいへん興奮している。Trelloのプロダクトはブレークしている。すごい勢いだ」 とSimonsは私に語った。
TrelloのプロダクトがAtlassianのエンタープライズ生産性ソフトウェアに適合するサービスだ。Atlassianは、最近デベロッパーだけでなく一般のエンタープライズにもターゲットを広げている。例えば、Atlassianの中核的ソフトウェア、JIRAシリーズのプロジェクト管理サービスはTrelloのサービスによく似たホワイトボードのカンバン方式をオンライン化したKanban board機能を提供している。これはもちろんJIRAシリーズのソフトウェアのごく一部の機能にすぎないものの、プロジェクト管理に必要なのはこうしたカンバン方式の視覚化ソフトだけだという企業も多い。JIRAはフル機能の生産性ツールであり、レポート作製機能や、こうしたツールを独自サーバーによりオンプレミスで運営するエンタープライズ版も提供されている。
AtlassianはMarketplaceというブラグインのデベロッパー向けのストアを運営しており、Trelloがpower-upsと呼ぶプラグインも順次このMarketplaceに登場することになるだろう。また両社とも伝統的な企業向けセールス手法よりフリーミアム・モデルや口コミ(WOM)を重視するなどマーケティングのアプローチに共通性があることも注目すべきだろう。
Simonsは私の取材に答えて、「われわれの会社文化はよく似ている。両社とも月間アクティブ・ユーザ1億人を目指すという大目標に向かって進んでいる」と述べた。この目標を達成するためAtlassianは顧客ターゲットを従来のソフトウェアのデベロッパーから他分野に拡張している。今回の買収を伝えるAtlassianのプレスリリースが財務、人事、法務マーケティング、セールスなどの部門でTrelloが高い人気を得ていることを強調しているのはそういう理由によるものだろう。Trelloのユーザーの50%はテクノロジー以外の部門の人員だという。
将来の見通しについてSimonsは「AtlassianはTrelloの発展を助けることを約束している。AtlassianはTrelloがスケールアップするために十分なりソースを振り向ける」と語った。
Atlassianの第2四半期の決算発表は1月19日の予定だ。その機会に買収についてさらに詳しい情報が明かされるものと思われる。またAtlassianがTrelloのサービスを自社プロダクトに統合していく計画についても発表があるはずだ。
〔日本版〕restricted shareないしrestricted stcokは報酬、賞与の一種として発行される株式。譲渡が可能となる期日などの制限が付される。発行日以降に株価が下がっても権利が無価値となることがないなどストックオプションと異なる点がある。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)