オランダ裁判所がUberドライバーは従業員と判断、Uberは控訴の意向

Uber(ウーバー)がドライバーの雇用ステータスをめぐる欧州での裁判でまたも敗訴した。オランダのアムステルダム裁判所は、Uberドライバーは自営の請負業者ではなく従業員であるとの判断を示した。

アムステルダム裁判所はまた、ドライバーにはオランダの既存の労働協約が適用されるとの見解も示した。この労働協約はタクシードライバーに関係するもので、賃金要件を定め、傷病手当などの福利厚生をカバーしていて、この協約を満たすためにUberがコストの増大に直面することを意味している(一部のケースでは過去にさかのぼってドライバーに給与を払う責任が生じるかもしれない)。

裁判所はUberに費用の5万ユーロ(約650万円)の支払いも命じた。

配車サービス大手のUberは、アムステルダムで4000人のドライバーを同社プラットフォームに抱える。

乗客とタクシーサービス提供者を結びつけるテクノロジープラットフォームにすぎず、ドライバーは「書面上」自営業者だというUberの慣習的な主張をアムステルダム裁判所は却下した。

裁判官は、ドライバーによって提供されるサービスの性質と、ドライバーがどのように働き、稼ぐのかについてUberがアプリとアルゴリズムを通じてコントロールしている点を強調した。

欧州の最高裁判所は2017年に、Uberは輸送サービス事業者であり、地域の運送法を遵守しなければならない、と裁定した。なので、あなたが今回デジャブ感に陥るのはもっともだろう。

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オランダでの訴訟は2020年に全国労働組合センターFNVがおこし、6月末に審問が始まった。

9月13日の声明文で、FNVのバイスプレジデント、Zakaria Boufangacha(ザカリア・ボウファンガチャ)氏は次のように述べた。「判決には我々が何年もの間主張してきたことが書かれています。Uberは雇用主であり、ドライバーは従業員です。ですので、Uberはタクシー業界の労働協約に従わなければなりません。また、こうした種の事業運営は不法であり、ゆえに法律が強制されなければならないという国際司法裁判所へのメッセージでもあります」。

Uberには今回の判決に対するコメントを求めている。記事執筆時点で返事はなかったが、ロイターによると、Uberは控訴する意向であり「オランダでドライバーを雇用する計画はない」と述べた。

【更新】Uberは控訴することを認め、広報担当は「控訴によってアプリを使うドライバーへの影響はありません」としている。

Uberの欧州北部事業を担当するゼネラルマネジャーであるMaurits Schönfeld(マウリッツ・ショーンフェルド)氏は次のように述べた。「ドライバーの圧倒的多数が独立事業者であることを望んでいて、今回の判決に失望しています。ドライバーは、働くかどうか、いつ、どこで働くかを選ぶ自由を手放したくはありません。ドライバーの利益のために当社は控訴し、その間、引き続きオランダでのプラットフォーム労働を改善させます」。

Uberは英国で、何年にもわたる雇用分類をめぐる一連の裁判で敗訴してきた。そして2021年2月、最高裁判所で同社の敗訴が確定した。

判決を受け、英国ではドライバーを労働者として待遇するとUberは述べたが、論争は続いている(労働時間の定義などをめぐって)。5月に同社は、英国の労働組合を認めると初めて述べた。

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しかしながら欧州のあちこちでUberは雇用訴訟を続けていて、プラットフォーム労働の規制緩和を求めて欧州連合の議員らにロビー活動を行っている

プラットフォーム労働を改善する方法を見つけたい、とEUは述べている。ただ、汎EU「改革」がどのようなものになるかはまだ判然としていない。

欧州委員会はプラットフォーム労働の代表者に質問してきた。

「ロビー活動に巨額を投じていること、EUレベルでさらに多くのリソースを投入していることは明白で、デジタル労働プラットフォームは明らかに懸念されるものです。Uberももちろん含まれますが、こうした企業はプラットフォーム労働に関する政策への影響を及ぼすためにロビー活動しているグループへの新たな基金の設置で協力しています」とアムステルダム大学でデータ権を研究しているJill Toh(ジル・トー)氏は判決後にTechCrunchに語った。

「Uberはカリフォルニア州でのProp 22キャンペーンで巧みに法律を修正し、欧州では他の企業とともに同じことをしようと企てています。プラットフォーム労働者規則に関係する2つの協議で委員会はテック企業とだけ話していて、労働組合や他のプラットフォーム労働の代表者と会合を持っていません」。

「こうしたことは非常に問題があり、ECの協議がプラットフォーム労働について方向を示す結果になれば特に懸念されるものです。全体としては、勝訴は労働者にとって重要ですが、欧州委員会に及ぼす企業パワーや影響力、こうした判決への公的執行の欠如の問題は残っています」とトー氏は付け加えた。

【更新】欧州委員会の広報担当はTechCrunchに対し、デジタル労働プラットフォームを通じて働いている人のための労働条件をどのように改善するかについての第2ステージの協議はまだ継続中(9月15日まで)だと述べた。

「協議の結果次第で委員会は2021年末までに提案を進める意向です」と広報担当は付け加えた。

「協議第2ステージの目的は、欧州でのデジタル労働プラットフォームの持続可能な成長をサポートしつつ、プラットフォームを通じて働いている人々がどのようにしてまともな労働条件を確保するか、ソーシャルパートナーの意見を集めることです。こうした意味で、ソーシャルパートナーは、雇用ステータス分類の促進や、労働と社会保護の権利へのアクセスといった分野で、EUレベルのイニシアチブとなる可能性のある内容について意見を求められます」。

広報担当者はまた、欧州委員会が加盟国での動きを注視しており、加盟国の分析作業を考慮している、とも付け加えた。画像クレジット:JOSH EDELSON/AFP / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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